続き3
「何か光みたいなものが見えるな」
そう水島先輩が<角錐>さんが破壊した窓から外を見た。
確かに俺にも見える。
「いや、私には見えないが」
常務がそう答えた。
「多分、妖気が見えるものだけしか見えないのでは無いでしょうか? 私にも見えますから」
そう<おやっさん>の野崎君が答えた。
確かにその感じはある。
「わしらはどうしょうか? 」
「とりあえず、まだ仕事がありますし」
「終わって無いから、逃げようがないですね」
残っている部長とかそう言う人は社畜の鏡みたいな人達だった。
「そこで皆さんに提案があります。この食材を食べてください」
そう水島先輩がリュックの食材を見せた。
牛鬼を捌いたものであった。
「「「えええええ? 」」」
社長の騒動で、それが何であるか薄々と察したらしくて、部長たちが一瞬に怯んだ。
「ははははは、見ててください」
そう水島先輩が笑いながら、背中からまた蜘蛛の足を出した。
皆がさらにそれでドン引きした。
だが、水島先輩はそんな事では折れなかった。
「見ててくださいね」
そう自分の席に座ると、書類のチェックをしながらパソコンの打ち込みも同時に始めた。
何と蜘蛛の足がパソコンをスゴイスピードで打ち込んでいた。
「何と、仕事の効率が倍以上に上がるんですよ」
そう水島先輩がにっこり笑った。
「こ、これは……」
「これがあれば仕事が早く済んで、家に早く帰れるかも……」
「仕事の効率が上がるのか……」
ふらふらと部長達の手が食材に向かった。
まさに彼らは社畜の鏡であった。
「いやいや、それはまずいのでは」
そう追儺の実働部隊の人が答えた。
だが、部長達の震える手は止まらなかった。
そして、それを常務が静かに止めた。
「社畜だけど……人間で居よう……」
重い重い言葉を常務が呟いた。
何という深い話なんだ。




