続き21
「何なんだ、貴方は? 」
俺が唖然として、その三十近いおっさんの霊に聞いた。
「見てください。設備は古いけど、良いホテルでしょ。実は私はここの経営者だったんですよ」
そうそのおっさんの霊はのたまった。
「いや、別に俺に関係ないよね」
「ああ、申し遅れました。私の名前は大御門大地と申します。この街の大御門グループの御曹司でした」
そのおっさん……大御門大地さんはそう胸を張った。
「大御門って土御門家と……」
「ああ、関係無いです。商人の成り上がりだったご先祖が明治の時に勝手にあっちが土御門ならこっちは大御門だって勢いでつけたらしくて」
「ええ、そういう地元の名門を馬鹿にしたような名前を明治につけるとか凄いな……」
「ええ、恥知らずって事で御先祖は随分いじめられたそうですが、そんなので気にするようなご先祖で無かったので……」
大御門大地さんが笑った。
「とりあえず、分かったから明日聞くのではだめかな? 」
「いや、私せっかちでして」
「それ、俺に関係ないよね」
「いやいや、私の大御門の血は今ここで話せと荒ぶっているのですよ」
「それ、俺に関係ないよね」
「だから、そういう事を気にするような一族では無いのですよ。代々、それを続けてきましたから」
「迷惑だな……」
俺が頭を抱えた。
明日までにちゃんと寝たかったのに……。
「で、ですね。このホテルの事なんですよ」
「本当に強引に話を進めるんだな」
「そういう一族ですから」
「いやいや、直せよ」
「まあまあ、すぐ済みますから。このホテルは駅前立地ですし、土御門家の恩恵でこの街は大企業の工場などがたくさんあります。ですから本来はその業者さんとかで一杯でなければならないのに人が集まらないのです」
「ああ、なるほど」
それは腑に落ちた。
他の深夜営業のホテルは満室なのに、ここは開いていたのだ。
「理由は私のホラー好きの性格なんですよ」
「は? 」
「生前からホラー大好きで、つい宿泊客にちょっかいを出してしまうんです」
「え? 」
「例えばですね。ここのデスクの上に市松人形がいつの間にか置いてあったら驚くだろうなとか……」
そう 大御門大地さんがいつの間にかデスクの上に置いてある市松人形を見せた。
「いや、怖えよ」
「でしょう。ついやっちゃうんですよ。私……」
「馬鹿なの? 」
またしても不毛な話に巻き込まれて俺が唖然として突っ込んだ。




