続き20
結局、土御門のお義父さんからの指示で荷物は本来住むはずだったアパートに送ってもらう事になって、しんどいので今夜はホテルに泊まる事にした。
何しろ、警察とかのバタバタで今はすでに午前一時前である。
明日の仕事もあるし、深夜までやってるホテルがあって良かった。
カードタイプで無く古いキータイプのビジネスホテルであったが、とにかく寝たかった。
正式な取り調べは無かったものの、いろいろと聞かれたし。
土御門のお義父さんが居なければ、俺は今頃留置場だったかもしれない。
何というか、本当に馬鹿馬鹿しい事になった。
どさっと言う感じでワイシャツのままベットに倒れ込んだ。
もう、シャワーは朝起きてからしよう。
俺がうとうとしだしたら、ドアが開いたような気がする。
「あの……」
誰かが声を掛けて来た。
だが、この部屋のドアは開くはずが無いのだ。
鍵は閉めているし、開かないように蝶番のようなものでロックしてあるし……。
俺は寝たふりを続けた。
「聞こえているんですよね……」
誰か俺の耳元で囁く。
だが、起きない。
「三鈴様と冥婚なさった方だと思うのですが……」
そう囁く。
だが、寝たふりだ。
と言うか疲れすぎて動けない。
「お願いがあるんですよぅ」
「虐めないでくださいよぅ」
「相談に乗っていただきたいのですが……」
「起きてるのはわかっているんですょ」
延々と言葉が続く。
あまりにしつこいので目は覚めているのだが、相手をするのが辛い。
勘弁してほしい。
と言う事で寝た振りを続ける。
何だろう。
あの変な呪者に会ってから碌な出会いがない。
三鈴さんの朝食や夕食が食べたい。
三鈴さんと会えてないけど、しみじみとそう思う。
部屋でピシッとかパシッとか変な音が続いてる。
ラップ音と言う奴か。
詳しくなりたくない。
左の耳横で五月蠅いので寝ている振りをしたまま右側に横向きに身体を移した。
「ねぇ」
そしたら、いきなり布団の中からその人が覗いていた。
「ぐわぁぁぁあ! 」
俺がぞっとして毛布を跳ねのけた。
「いやいや、驚いてくださるとは嬉しいな。私、生前ホラー大好きだったんですよ。有名な怖いシーンって効くなぁ。布団の中を覗いたら人がいるって実際に怖いですよね」
そう、その三十近いおっさんの霊は驚ききった俺を見て嬉しそうだった。
こうして、また馬鹿馬鹿しい事に巻き込まれることになってしまった。
遅くなりました。