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続き6

「看護婦さんがいないな? 」


 俺達がポテポテと歩いて行くと確かに誰もいない。


「本当ですね。誰も出てこない。でも、患者さんは部屋にいるような感じですが……何と言うか酷い病院ですね」


 そう<おやっさん>の野崎君が呆れたように呟いた。


「いや……って……何してるんです? 」


 俺が血まみれ熊のぬいぐるみの柚原さんを見て聞いた。


 柚原さんは必死に廊下のカメラの前で血まみれの熊のぬいぐるみを見せつけるようにポテポテと歩いていた。


 たまに手すら振るくらいである。


「いやいや、前はこうやってカメラの前で踊ったりするとすぐ出て来たんですよね」


 そう柚原さんが笑う。


「ほほう、それで看護婦さんが出て来たらどうしたんですか? 」


「勿論、さっと隠れますよ」


 <おやっさん>の野崎君の質問に柚原さんが笑って答えた。


「ほほう。なかなかお茶目ですな」


 俺が唸った。


「ええ、勿論、たまに看護婦さんが通りかがったちら、耳横でご苦労様とか囁いたりしてましたよ」


「それは素晴らしいですね。看護婦さんに対する感謝は忘れてはいけませんよ」


「その通りです。私は見ての通り血がたらたら垂れるので、たまにナース服に血がついたりして、看護婦さんが血がついて困ったのか叫んだりするので、悪い事しちゃったなと後悔することもままあります」


「なるほど、それは仕方ないですね」


「だから、申し訳ないので、アメリカのホテルとかでやってたんですが、すいませんって書いたメモとともに折り紙を折ってナースステーションの机の上に置いておいたりしてましたよ」


「ほほう」


「そのメモも折り紙も血まみれになっちゃうのが悲しい事ですが……」


 柚原さんがそう俯いた。


 何という優しさで出来た人なんだろう。


 それを聞いて俺が感心した。


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