続き4
「何でしょう。変な雰囲気ですね」
そうボストンバックの中で<おやっさん>の野崎君が呟いた。
「ザワザワするね。もう夜なんだけど、それでもお見舞いとか多いのかな? 」
俺がそう答えた。
「いやいや、人は看護婦さんくらいでしょ」
「「そうなんだ」」
柚原さんの衝撃的な一言で思わず呻く。
じゃあ、このざわざわとした気配は何なんだろう。
その時、水島先輩が走り出した。
「ちょちょっと! 」
「どうしたの? 」
俺がボストンバックから少し覗いて聞いた。
「あっ! くそっ! 」
水島先輩が悔しそうに呻いて止まった。
「どうしたんですか? 」
ボストンバックから俺が顔を出すと、水島先輩が残念そうだ。
「誰も辺りに居なさそうですね」
そう柚原さんが呟くとボストンバックからのっそりと降りた。
それに続いて俺達も降りた。
「いや、何かでかい蜘蛛の足が見えたんだよ」
そう水島先輩が目を金色にちらりとさせながら答えた。
「え? 軍曹ですか? 」
「いや、アシダカグモじゃないな。それに大きさが違う。足だけで三メートルくらいあった」
そう水島先輩が<おやっさん>の野崎君の言葉に悔しがった。
「いや、それ妖ですよ? 多分」
俺がそう答えた。
「妖だからどうだと言うんだ。俺の雑食魂はそんな事で揺るぎはしない。こないだのオオサンショウウオがとても美味しかったしさ」
そう水島先輩が笑う。
「ううむ。流石だ」
俺がそれを感心して呻いた。
「牛鬼かもしれませんね」
そう<おやっさん>の野崎君が呟いた。
「牛も混ざっているだと? 」
水原先輩の目が金色にぎらりと輝いた。
ああ、もう駄目だな。
俺がそう思った。
この雑食王さんは食べたいものを見ると一直線だ。
もはや、止めるのは無理なんだろうな。
流石、水島先輩だ。




