11部 (呪いの病棟) 始まり
「大量だ。大量だ」
そう言って水島先輩が近くの池からスッポンを五匹くらい取って来た。
「おお。スッポンでは無いですか」
「ああ、今夜の晩飯にしようかと思ってな」
「何だか、人間の身体に戻りたくなりますね」
「まあ、戻った時にまた捕まえてくるよ。相手がこちらを見て無くても、こっちが見つけたら一発で気絶するんだ。御蔭で網で簡単に救えた」
そう昼の休憩中なのに網を持って水島先輩が笑ってた。
すでに、雑食王として隠すところは無くなって、会社はさらにカオスになっていたが。
「それは大したものですね」
「こないだ。猟期じゃ無いから、そのままほっといたけど、猪の子もたまたま見かけて美味そうって思ったらコロンと気絶したよ。これは今後はくくり罠をしなくても良いかもしれない」
そう水島先輩は新たに自分が手に入れた能力を存分に使っていた。
元々、雑食王の名の通り、猟期はくくり罠で猟をしているのだ。
だから、当然、狩猟免許も持っていた。
「本当に凄いですね」
そう三鈴さんも褒めた。
「いやいや、今度奥さんの実家にも美味しいものが取れたらお届けするよ」
そう水島先輩が微笑んだ。
「ちっ」
オフィスの奥で石川さんが舌打ちをしていたが……。
「それでですね。社長が入院してますんで、柚原さんにスッポンを捌いて持って行ってもらおうと思うんですが良いですか? 」
そう水島先輩が常務に聞いた。
そう、やはり打撃が半端無かったせいで、社長は再度入院していた。
それで、毎日夜になると、血まみれの熊である柚原さんがいろいろと入院している社長の部屋に世話をしに行ってるのであった。
勿論、勝手に行っていろいろとしているだけだが。
逆に、やばいのではないかと思うのだが、それはそれである。




