続き1
朝、また、みそ汁の匂いで目が覚めた。
ふと、枕もとを見ると丁寧にワイシャツやスボンがアイロンをかけてたたんであった。
ハンカチも丁寧にアイロンがかけてあった。
どれも暖かい。
また寝ている間にアイロンをかけてくれたようだ。
いつものように部屋の隣のリビングに行くと、今日は炊き立てのご飯にかき卵と麩の味噌汁と焼いたししゃもとたらこを巻き込んだ卵巻きとカマボコの切ったものとサラダとぬか漬けなどが並んでいた。
ちゃんと朝食なのに品が変わっている。
素晴らしすぎる。
「三鈴さんっ! いらっしゃるんですか? 」
俺が必死に部屋に向かって叫ぶが、やはり返事が無い。
「是非、一緒に食べて欲しいのに……」
やはり、幽霊だから、それは叶わぬ夢なのかもしれない。
俺がそう呟きながら味噌汁を一杯すすった。
「ああ、こんな美味しい朝食を作ってくれる優しい妻の顔を見てご飯が食べたいんだけど……」
俺がそう呟くと激しいラップ音がして、タタタタタタタと俺の住む二階建ての軽骨鉄筋の階段を降りる音がした。
慌てて、俺が部屋のドアを開けるとやはり誰もいなかった。
「部屋に居たんだ……」
そう俺はため息をついた。
そしたら、隣のおばさんが足音を聞いたのか出て来た。
「加茂さん、おはようございます」
そう、隣のおばさんが笑った。
年は三十後半で旦那さんが単身赴任とかで、幼稚園の子供一緒に住んでいるそうな。
「ああ、三好さん。おはようございます」
俺がそう頭を下げた。
「何か喧嘩でもしたんですか? 」
「は? いえ、そういう訳では……」
俺が慌てて答えた。
「可愛い娘さんと結婚なさるんですね」
「え? 」
三好さんにそう言われて凄い顔で見た。
「昨日、結婚と引っ越しに来るのでって、ご挨拶を貰ったんですよ。三鈴さんって言うんですね」
「ええええ? 」
ど、どういう事なのだろうか?
俺が動揺して目が泳ぐ。
「やっぱり喧嘩したんですか? 駄目ですよ、あんな綺麗なお嬢さんを逃がしたら……」
そう言って三好さんがちょっと怒ったように話した。
「いや、そういう訳では……と言うか、挨拶って昼ですか? 」
「ええ」
俺の訝し気な顔に三好さんが頷いた。
真昼でも現れれるんだ。
「あの白い着物でですか? 」
「いえ、可愛らしいワンピースですよ」
「えええええ? わんぴーす? 」
三好さんににっこり笑って言われて声が震えた。
ど、どういう事?
三好さんに頭を下げて別れた後、俺の理解を超える出来事に頭が変になりそうだった。