続き18
「ふふふふふ、くだらない場所だな。この程度の霊で俺を止めようとは愚かな事よ」
呪者が笑った。
「あららら、四階の山本さんにはびびって悲鳴上げて落ちた割に随分と自慢げじゃ無いですか」
野崎君が貶している。
「さあ、加茂とやら! 貴様の作戦程度では俺の三鈴さんの愛を止めることはできないのだ! 」
「何ぃぃぃぃぃ! 」
大神さんが呪者にブチ切れる。
そのせいで俺が怒るタイミングを外した。
俺も怒るべきなのだろうが、それよりも、これから呪者同士の戦いが始まるのかと思うと、どれほど凄い呪術の能力者の戦いになるのだろうかと言う興味が勝ったのもあるかもしれない。
「ふははははははははははは」
そうして、呪者がそう笑いながらマンションの中庭を歩いてこちらに向かってきたら、……落ちた。
「あら? 」
俺が思わず間の抜けた声を出した。
「いだぁぁぁあああああ! 」
呪者の絶叫が上がる。
「ふふふふふ、落とし穴の底に敷いたアルミパイプを切って作った乾山に足を落としたな」
大神さんがにやりと笑った。
「落とし穴? 」
「ふふふふふ、その通りです。このマンションは評判が悪いので三階の女子大生とここを借りてる私しかいないんですよ。土地が悪いせいでまともな奴は住まないんです。だからこその罠が他人にかかることも無い」
「え? そんな理由? 」
「痛てぇぇぇ」
呪者が泣き言みたいに呟いてるってーか、落とし穴から出てきたら、足の裏を一本アルミの杭が貫いてた。
「くくくくく、ざまあみろ。ここは雰囲気悪いから警察もすぐには来ない」
大神さんが笑っている。
その瞬間、ピンがはじけたような音がした。
呪者は錫杖の小さいもので弾いたが、それは仕掛け矢だった。
「ち、ちょっと待ってください。これ呪術じゃないじゃ無いですか。完全に物理的な罠じゃ無いですか」
俺が動揺して聞いた。
「当たり前ですよ。呪者が呪いとか秘術とか仕掛けてくると思って乗り込んでくるから、こういう単純な罠に引っかかると言う事です」
「いや、何かおかしい。これって単に相手を殺そうとしているだけじゃ無いですか」
「大丈夫です。あんな奴は死んだ方が良いんだ」
大神さんが爽やかに笑った。
野崎君が横でコクコク頷いていた。
「いや、呪術の遣い手としての矜持とか無いんですか? 」
俺が必死に止める。
「戦いと言うのは相手の意表を突く事です」
大神さんがきっぱりと言い切った。
何かがおかしい。