続き17
脇田さんが嬉しそうに呪者に近づいていく。
さっきまで怖い顔して三階を血まみれで覗いていた顔と違う。
あからさまに微笑んでいた。
「仲間が出来たと喜んでいるのでしをょうね」
野崎君がそう笑った。
「オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラニ・ハンドマ・ジンバラハラバリタヤウン」
そしたら、呪者が光明真言を唱えて砂をまいた。
「あああああああああああああああ! 」
そうしたら脇田さんが砂を被りながら何かが取れたような顔で上に上がって行った。
「なっ! 」
俺が驚いた。
「光明真言と土砂加持の砂をまいたようですね」
「それは? 」
「清浄な地の砂を綺麗な水で良く洗い、それを光明真言を千回呪して祈祷することであらゆるものを浄化して成仏させることが出来るんですよ」
大神さんがそう答える。
「そんな。脇田さんがぁぁぁ! 」
野崎君が絶叫した。
いや、そこまで嘆く事なのか?
「いや成仏できたんですから良かったじゃ無いですか」
俺が野崎君と大神さんにそう話す。
「馬鹿な! あんなに一生懸命、女子大生の下着を盗もうとしていた脇田さんに、それをさせないで成仏させるなんて鬼じゃ無いですか! 」
野崎君が悲しそうに呟いた。
「私も彼のいやらしい冷やかな目が大好きだったのに」
大神さんも寂しそうに呟いた。
「いや、ここの浄化を頼まれてたんじゃ無いんですか? 」
「良いですか? 浄化にはああやって神仏の力で浄化するものもありますが、本人がしたかったことをして満足して成仏する事もあるんですよ。私は彼に満足して成仏して貰いたかった」
「いや、下着ドロですよね」
「良いじゃ無いですか。単なる布に命を懸けるなんてなかなか出来ませんよ」
大神さんがそう少し寂しそうに呟いた。
いかん、この人達、何かずれてる。
「このままだと俺まで成仏させられちゃう」
野崎君が悲しそうだ。
「いや、成仏したいんじゃ無いんだ……」
「もう少し、遊びたいです」
野崎君がきっぱり答えた。
ああ、なんか本当におかしい。




