続き16
「ふっ、かかったな」
大神さんが急に動き出した。
「一体、何が? 」
俺が動揺した。
「いや、隣の四階のマンションと近いから、四階からこちらに板を通せば移動できるんですよ」
「それは防犯的にいかがなもんなんですか? 」
大神さんがドヤ顔したので突っ込んだ。
「山本さんに会ったんでしょう。間違いないと思います。四つん這いでケツから血を流して出して出してって騒いで現れますから」
「だろうな。俺も初めて会った時は四つん這いで凄い速さで向かってくるから滅茶苦茶ビビったし」
野崎君の言葉に大神さんが笑って頷いた。
「いや、成仏させてあげなよ」
俺が思わず突っ込んだ。
何の為に祈祷とかやってんだか、良く分かんねぇ。
「いや、山本さんは成仏したらエンマ大王に、何故こんな事をしたって聞かれて説明するのが辛いらしくて」
野崎君が苦笑した。
いやいや、別れていく彼女を呼び止めたくて首吊る真似のはずが間違って首吊って亡くなった君がそこまで上から目線で言う話じゃ無いよねと思ったが。
「閻魔庁の皆さんに何故フィギュアをそんなとこに突っ込んだんだって聞かれるのは確かに辛いだろうからね」
大神さんが悲しそうに首を振った。
「いやいや、天国に行くかもしんないでしょ」
俺が可哀そうに思って突っ込んだ。
「天使さんや神仏がそれはちょっとって引くと思いますよ」
首吊りになっちゃった野崎君がドヤ顔した。
いやいや、君が言えないと思うのだけど。
「きゃああああああああっ! 」
ガシャーンって激しい音とともに何かが下に落下した。
「ど、どうしたんだ? 」
俺が慌てて、立ち上がった。
「山本さんから逃げようとして、上の上の誰も住んでない家のベランダから下に降りたんだと思います。それを上の女子大生が見て悲鳴を上げて物を投げたのでは? 」
野崎君が見て来たように話した。
俺達が外を見たら確かに下に、あの呪者が落ちて倒れていた。
「な、何で、そんな風に分かるんだ? 」
俺が野崎君に聞いた。
「いや、脇田さんも同じパターンだったんで」
そう野崎君が建物の陰で見ている脇田さんを指さした。
脇田さんは凄く嬉しそうに下に落ちた呪者を見ていた。
仲間だと思ったのかもしれない。




