続き14
「しかし、今日自動車三台に轢かれた後、四トントラックに轢かれたばかりで来ますかね? 」
俺が大神さんに聞いた。
「来るよ。だって、土御門の本家だと結界が凄くて手が出せないから」
「は? 」
「土御門家は元々この地の聖地に建ってるからね。土地神様の加護も氏神様の加護もある。いくら凄い呪者と言えども破れないから。だから、貴方の新居もあそこに作られているんだから。今回、その近くの加護のあるアパートに一旦住ませようとしてたから、私がここに移したんです」
大神さんがドヤ顔で語る。
「へ? 」
「ここでなら、あの呪者は攻めてくるはず」
「いやいや、それなら、私はそのお義父さんのアパートに移ったら別にそれで良いじゃ無いですか」
「それじゃあ、面白くないじゃ無いですか」
大神さんがそう話すと、横で野崎君がコクコク頷いた。
「面白いって……まずは私の安全をってお義父さんが考えてくださったんじゃ無いんですか? 」
「そこですよ」
「そう、やっぱり漢なら彼女を助けないと」
大神さんの言葉に野崎君までドヤ顔で話す。
「いや、彼女に捨てられるって言うんで、自殺のふりして死んじゃった君に言われたくないんですけどっ! 」
「これが愛のなさせる業ですよ」
「いやいやドヤ顔で言う話じゃ無いですよ」
「俺はポジティブなんで」
「だから、ポジティブならそんな風に自殺の真似して彼女を引き留めようとしないでしょうがっ! 」
「何を言ってんです? 一番相手の心に響くんですよ。君の為なら死ねるって」
「それは何かの時に相手を命がけで庇って言う事じゃないのかなっ? 」
「だから、命がけの説得なわけです」
「自殺の真似が? 」
「ええ」
「おかしいでしょ」
「ポジィティブなだけです」
「あーあーあー、頭が痛くなってきた」
俺がそうため息をついた。
ふと、外を見るともう暗くなっている。
「夜中に来るのが普通ですが、相手も土御門の本家に籠られたら手が出せないから、今日は早めに仕掛けてくるでしょうね」
大神さんがそう呟いた。
「いやいや、それって、俺が囮って事ですか? 」
「愛の為ですよ」
大神さんがそう言うと野崎君が横で首吊りしたままコクコク頷いた。