続き13
「いや、土地とか関係あるんですか? 」
「ここはたくさん亡くなった人がいるマンションですから」
俺が大神さんに聞いたら、何故か野崎君が返事して来た。
「いやいや、どんなマンションなの? 」
「分かりませんけど、土地が良くないと大神さんがおっしゃってますから」
野崎君が言うと大神さんがうんうんと頷いた。
「まあ、そりゃ、人が亡くなるってのは当たり前の話ですから」
俺がそうため息ついた。
「いやいや、四階の山本さんなんか、オ〇ニーで興奮しすぎて自分の大切にしているフィギュアをケツの穴に捻じ込んでしまって大量出血で亡くなったんですよ。すぐ救急車を呼べば助かったんですが、恥ずかしくて救急車を呼べなくて自分で抜こうとして出血多量死ですよ」
野崎君が首を吊ったまま身を乗り出してきて話す。
何だか、のりのりだ。
「いやいや、どんな死に方なのよ」
「それから、四階の廊下で自分の大事なフィギュアが抜けないって彷徨う山本さんの幽霊が歩き回る様になって、未だに四階は誰も住んでませんから。出てくるときは四つん這いですよ、四つん這い」
「それは……怖いな……」
俺はそんな話もドン引きだが嬉しそうに話す野崎君にもドン引きだ。
「でしょおおお! 」
野崎君が爆笑した。
「自殺した人に見えないよ……」
「ああ、加茂さんは知らないかもしれませんが、心霊写真なんかでも個性が出るんですよ。性格が暗い日本人は良く集合写真にひっそりと写りますよね。でも、例えば陽気なアメリカ人は並んでるど真ん中に座ってピースサインしたりして写ったりするんですよ」
「そーそー、俺はポジティブですから」
大神さんが信じられないような説明をした後にアメリカ人でも無い野崎君が笑った。
「別に幽霊なんて死んだときの心がまんま残ってるんだから、ポジティブだと普通は成仏しちゃうんですけど、彼の場合自殺だったんで地縛霊になっちゃって」
大神さんがほっこり微笑んだ。
いや、笑う所がおかしいと思った。
ついてけねぇよ。




