続き10
大神さんが自動車で俺を連れて来たのは瀟洒なマンションが並んでいる場所だった。
まあ、田舎のマンションなんで、せいぜい四階程度のものだが。
「ああ、結構、良い場所にあるんですね」
俺がそう呟いた。
街中のマンションだったし、駅に近い。
これだと会社に行くのも楽そうだ。
「これが良い場所ですか? 」
大神さんが失笑した。
「いや、駅前に近いですし、スーパーも近いじゃ無いですか」
俺がそう笑った。
「ここね。土地があまり良くないんですよ。再開発でこうなっただけでして」
「いや、土地が良くないと言っても好立地じゃ無いですか」
「我々の世界の人間はそう言う風には考えないのです。ここに何のいわくがあるか。方位がどうか。どこの神社が氏神様かまで考えるのですよ」
「いや、私は素人ですし」
「だから、こういう事を三鈴様と結婚する前に理解して欲しいと思う私からの貴方へのご忠告ですよ」
「はあ……」
上から目線でうんざりするがとりあえず、しょうがないので頷いておいた。
「で、ですね。ぶっちゃけそういう訳で、実は師匠から言われた場所に引っ越したんでは無いんです。ここは私が今手掛けている場所でして……」
大神さんが訳の分かんない事を言い出した。
「は? 」
「私はね。三鈴様に近づくあの男も許せません。だから、奴にここで罠を仕掛けようと思うのです」
「いや、何を言い出しているんですか? 」
「この貴方の引っ越してきたマンションを奴と戦う場所にするつもりです」
「いやいや、それはお義父さんは了承しているのですか? 」
「貴方は自分の大切な人を守るのに自分は何もしないつもりですか? 」
「いや、そんな事は無いですよ」
俺がむっとして言い返した。
「それならば協力してください」
大神さんが有無を言わさない感じで言うので仕方なく頷いた。
良く考えたら、凄く無茶な話なんだが、この時は自分の意地もあってそうせざるを得なかった。
三鈴さんを出されたら仕方ない。
こうして、俺は関わるべきでない連中に関わる事になってしまった。