4部 <市松人形 <老公>死闘編> 始まり
軽自動車には燃料があまり入っていなかった。
「え? 燃料少ないっ! 」
俺が驚いて叫んだ。
「いや、こいつ千円ごとくらいしか燃料入れないんです」
「金が無いんだから仕方ないだろっ! 」
<おやっさん>の野崎君に中西君が突っ込んだ。
「いや、燃料タンクはなるべく一杯にしとかないと、タンクの内側が錆びる事があるぞ? 」
俺がそう忠告した。
「土御門家から援助を受けたらそうしますよ」
そう言って中西君が軽自動車のエンジンをかけた。
だいぶ古い軽自動車はかなり音が大きかった。
「音が大きいな」
「年式が古いですからね」
「ほっとけっ! 」
俺に突っ込んだ<おやっさん>の野崎君に中西君が怒鳴る。
「いやいや、だからこそ、こういう時は良いのですよ。少々ぶつかってもカーアクションしても中古だから安心ですよ」
そう<おやっさん>の野崎君が言うが中西君は細心の注意で車をさっきの騒動で落ちて来てるマンションの壁面とかいろいろ避けながら発進させた。
「細かいな」
「軽だからぶつかったら壊れるんですよっ! 」
「壊れても良いじゃ無いか」
「壊れたら軽自動車はすぐ動かなくなるんだ! 」
「いやいや、言い合ってる暇がない。人形たちが来るぞ? 」
ヤタガラスさんが叫ぶのでマンションを見たら、次々と操り人形が壁面を降りてくる。
人の顔をしたフクロウもこちらに向かって来ていた。
「慌てさせないで」
中西君が言いながらゆっくり移動していた。
「急がないとっ! 」
<おやっさん>の野崎君が勝手にアクセルを踏み込んだもんで、横をブロック塀でガリガリこすって駐車場を出た。
「ああああああああああああああああっ! 」
中西君が涙を流していた。
「今は戦いなんだ。泣くのは勝ってからにしよう」
「やかましいわ! ああああああ、車まで傷ついたぁぁぁぁ! 」
<おやっさん>の野崎君が渋い感じで話したら中西君が泣きそうな顔で叫んだ。




