続き9
「何で、三鈴様は貴方を選んだんですかね? 」
いきなり、発進前に真顔で聞かれた。
「え? 」
俺がいきなりすぎて驚いた。
「もっと顔が良いのかと思ったら全然大したこと無いし、別に何か能力があるわけでも無いし」
「いや、そう言われても」
「まさか、三鈴様の弱みでも握ってるんですか? 」
「それは無いでしょ。失礼な事を言いますね」
俺が流石にキレて答えた。
「自分でもおかしいとか思いませんか? 」
「いや、そりゃ、魅力も何も無いのに不思議だなとは思うけど……」
「なら、何かあると私が思うのはおかしくないでしょ」
「いや、そういう男女の機微ってそんなもんでは無いでしょう」
「モテなさそうなのに、格好良い事を言うんですね」
「いや、本当に失礼ですね」
段々俺が腹立ってきた。
「いやいや、いきなり貴方は皆の憧れの人を奪っていったんですよ」
「それなら、憧れにせず、冥婚にならないようにもっと早く告白でもしたら良いじゃ無いですか」
俺がむっとして言い返した。
本当は三鈴さんも生きてるうちに結婚したかったろうに。
「巫女は恋愛とかしてはいけないんですよ」
「そんなのは関係ないでしょ。貴方が本当に大切に想っていれば声を掛ければよかった」
「ふふふ、部外者だから言えるんでしょうな」
「それは言い訳ですね」
俺がきっぱりと言って大神さんと睨み合った。
「まあ、良いでしょう。今は折れておきましょう」
大神さんが自動車を発進させた。
何だか、周りにこんなのしかいないから、俺がまともに思えたのだろうか?
正直、三鈴さんの周りは不思議な事も多いが変な人ばかりである。
自分も変わっていると思うが度を超した人が多い。
あの呪者も弟子のこの人もだ。
何だか、三鈴さんに凄く同情して来た。




