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第七話 「夢から覚めても」

 

「かえるさんはひとごろしなの?」



 少女の目は俺をしっかりと捉えていた。。


 ひとごろし?俺がか?


 ゴブリンを倒したことを言っているわけではなさそうだけど…


「なぁ嬢ちゃん、俺が人殺しってのは、いったいどういうことだい??」


「わたしはアウラだよ!かえるさん!」


 口をとがらせて少女は名乗った。


「アウラか。かわいらしい名前だな。俺はアオモリだ」


「アオモリ・ケズヤね。そうステータスに書いてある!」

 アウラは俺のお腹らへん見てそう言った。


「ステータスが見えるのか?」


「うん、わたしの龍様に貰ったスキルなの」


 こんな小さな少女でもスキルを持ってるのか

 いや俺もこの世界で目が覚めてから割と直ぐにスキルを貰えたし、結構ポンポン貰えるもんなのかな


「というか、ケ じゃない。カ ズヤだ。」


「ケズヤ!ケッズヤ!むずかしいいいいい」


「言いにくいならそのままカエルでいいよっ」


「わかったぁ!」


「この世界ではあまり聞きなれない発音なのかな。」


「この世界って??」

 と物珍しそうな顔で首を傾げるアウラ。


 俺はつい口を滑らせてしまった。


「あ、いやな… 実は俺はこの世界出身じゃないんだ」


「かえるさんは不思議なことをいうんだね。」


「不思議なことったって、本当なんだよ。」


「ふーん、、そうなんだ。でもかえるさんの言っていることはなんだか嘘じゃないような気もするの!ふしぎー!」


 彼女の紫の瞳がまた俺をとらえていた。


「そんなあっさり信じてくれるのか? …ありがとう」


 俺がもし他人から同じことを言われていたら、受け入れることが出来ただろうか?


 アウラが俺の事を受け入れてくれたという事がとても嬉しかった。この世界で初めて自分を肯定された気分だった。


「かえるさんは、名前があるのにどうして人の形をしてないの??」


 スライムと同じことを聞かれた。あの時も俺は答えることが出来なかった。自分でも分からないと俺はアウラに伝えた。

 


「やっぱり変な、かえるさん」

 アウラはくすくすと笑った。



「あぁそうだ どうして人殺しって?」

 アウラに聞きたいことをもう一度尋ねる。


「カエルさんのステータスにね人殺しって称号があるの。」


 こりゃまた物騒なっ。このいたいけな少女が口にするこの単語が痛く似合わないな。


「でね、その名の通り人間を殺したことで取得してしまう称号のことだよ」


 いやまぁどうやら俺には「人殺し」の称号が着いているらしい。


 しかしどうも腑に落ちない。


「待ってくれ!俺がこの世界に来てから出会った人間は君が初めてだ!もしかしてさっきのゴブリン達も含まれるのか?」


「ううん、人殺しは人型のモンスターではなく人間、に適応されるの。」


「じゃあどうして、、、」


「わたしもわからない」


 ん?待てよ。”この世界では” って言ったよな。俺。

 もしかして、、、





 そういうことか。


 思い出したぞ。

 俺は元いた世界で人を跳ねたんだった。少しずつだが思い出す。握るハンドル、ガラスを伝う雨、動かない少年。流れる赤色



 そうか。俺は。



 少年を轢いたんだ

 



 なんでこんな大事なことを… 忘れていた?

 元の世界で俺は死んだとかか?少年を轢いてしまったあの光景しか思い出せない。その後どうなった?


 全然思い出せないのはなんでだ。

 轢いた俺がこの世界にいるのは何故だ?俺は死んでいなかったはずだよな。


 なにより、罪悪感が冷たく重くのしかかる。心が潰される。あの少年は助かったのだろうか。


 俺に『殺人の称号』があるということは、そういうことなんだろう。あの少年の未来を俺は奪ってしまった。


「少年…。」


 人殺しか…。俺は真っ当に生きていたつもりだったんだがな。犯罪者か。恐ろしいほどの寂寥感せきりょうかんに襲われる。


 俺はここで一体何をやっているn


「かえるさん!!!!」

 アウラの声が響いた。


「大丈夫?かえるさん」



 彼女はどうやら固まってしまった俺を心配してくれていた。

 優しい子だな。恐らく元の世界の俺とは歳がだいぶ離れていると思う。俺に娘がいたらこんな感じなんだろうか?こんな哀れなカエルにねぎらいの心を持ってくれる



「アウラ、思い出したんだ。俺、元の世界で少年を事故で殺してしまったみたいなんだ。」


 俺は正直に打ち明けた。


「そう、、、なんだね、、、、。」



 そうだよな。さすがに笑えないよな。

 この子を安全なところに戻せば、俺はもう…



 自分切り捨てようとするカエルに少女が口を開く。



「それでもあなたはわたしを助けてくれた。」

「たとえあなたが人殺しだとしても、わたしを見つけ救ってくれた。」




 それでも俺は自分のやってしまったことがとんでもないことなんだ。

 自然とカエルから涙が溢れはじめる。自分の塞き止められていた過ちの記憶が洪水のようドバドバと流れ込む。罪悪感の荒波で押しつぶされそうになる。 死にたい死にたい。耐え難い。度し難い。死にたい。



 アウラは真剣な目でカエルを見つめていた。

 


「わたしね、自分のしてしまったことですごく悲しい思いをしたの。とても辛い日々を過ごして死にたい、とまで思ってたの。」


「それでねゴブリンに襲われて、殺されそうになって、やっとそこで私の大切な人との約束を思い出したの。 」


「どうか生きて」


「私はずっと忘れてたその言葉を思い出したの。」

「それで何としても生きなきゃって思ったの」

「そこで貴方が現れたの。 」




「貴方は私のヒーロー。 」





「それでも俺はっ。」



 少女は涙目になりながら小さなカエルをギュッと抱きしめた


「貴方のしてしまったことは決して褒められることじゃない。でもこの世界であなたはわたしを救ってくれた。」

「あなたは悪い人じゃない。そんな悲しい顔しないで 」


「だからわたしと約束して」




 

  どうか 生きて





 小さな少女はまた小さなカエルをギュッと抱きかかえて


「大丈夫。」「辛いこと思い出させてごめんね。」


 カエルの頬を撫でた。


 カエルは驚いた。

 なんて優しい子なのだろう。この子は。あまりにも優しい。俺の事なんて全然知らないのに。


 俺は少女のその小さな体からとても大きな温もりと優しさに包まれ、時を忘れて涙を流した。


「ありがとう。アウラ。」


「いいんだよ。あなたはわたしのヒーローなんだから」



 この子は何がなんでも守る

 そう強く決意をした。



 ━━━━━━━━━━━━━━



 少しだけ立ち直った俺は自分の体の異変に気がついた。


「なぁアウラ」

「なーに?かえるさん?」


「俺の体ボロボロじゃなかったっけか?」

「あーわたし!少しだけど回復魔法使えるの!少しだけだけどね!」


「アウラ!魔法が使えるの!?」

 なんとこの少女どこまでたくましいのだ。

 魔法か。はじめて受けたのが優しい魔法ですごくよかった。新体験。

 炎とか雷とかじゃなくて、よかった。


「でもねーわたし攻撃魔法はなーーんにも!使えないの!」

「マザーにね教えてもらったんだけど全然ダメだったの」

「龍様は私に戦う力はくれないのぉ」


「あーーーーー!!!!」

 アウラが急に声を上げた。


「うぉお、びっくりした!どうしたアウラ!?」


「あのね!!あのね!!この世界にはね!どーーんな願いでも叶えてくれる龍様がいるの!!」


「またファンタジーだな」


「アストロビスタっていうお名前の龍様!」



 その名前には聞き覚えがあった

 俺にスキルを与えてくれるやつだよな


 ていうか願いを叶えるりう?

 あいつじゃねぇか


 あれだろ?ツイツターのリプで画像保存して消えていくトカゲだろ?


「死んだ人も生き返られせることも出来るの!!」


 ん?つまり


「そうか!その龍に少年を助けてもらえばいいってことか!」


「そういうこと!でもね。でもね。伝承で聞いただけで、わたし実際に見たことないの…」


「期待できない、ってことか?」


「ううん、なんでも魔人族の誰かが願いを叶えてもらったっていうことだけ聞いたことがあるの。」


「魔人族ってのがいるんだな、、、」

「となると願いをかなえる龍とやらを、調べなきゃだな」


「そだね!!かえるさん」



 アウラの笑顔は太陽のようだった。ぱあっと明るくなったアウラの表情に俺は安堵する。さっきはありがとな。


 アストロビスタ…。 スキルくれる存在だし神々しい存在だと思ってたけど、案外気さくで良い奴なのかもな



「とりあえずアウラ!オレンジ色で、星の模様が入った玉見たこない?」



 







 龍の願い事については今後調べていくとして


「さてアウラこれからどうする?」


「本当はかえるさんについて行きたいけどね。『奴隷の称号』がある限りわたしは自分の意思であまり自由にうごけないの」


 そうか。アウラは奴隷だったのか。奴隷か…。

 この世界では普通なのだろうか。ズケズケと聞く気にもならないし、けどなんとかできないのかな


 そうだ。スキル『抜き足』でアウラの称号を抜き取ればいいんじゃないか?


「アウラ、そこを動くなよ」

「??」

「抜き足!!!!!」


 俺はスキル抜き足を発動した、のだが。。何も起こらなかった。アウラの『奴隷の称号』を抜き取ることは出来なかった。


「くすぐったいよぉ。かえるさんー。」


 アウラはまたくすくすと笑った


「『奴隷の称号』は主人が生きている限り、消し去ることが出来ないの。いくらかえるさんでも、そんなこと出来るはずないよ」


 そう言ったアウラの顔は少し悲しげだった。


 あははとアウラは笑っているが、どうしても無理にわらっているうにしかみえなかった。


「アウラ、称号を取りに行こう」

「アウラの話でいくと、主人はまだ生きてるってことになってるんじゃないか?」


 アウラの主人、奴隷商はゴブリンに襲われたはずだ。しかしまだアウラの称号が消えていないってことは、生き延びてるってことじゃないだろうか


 人間の町に帰っているかもしれない。


「アウラ。俺と一緒に行こう」

「え?」

「お前を隷属から解き放ってやる」


 アウラの顔がであってから1番、明るく、可愛く、元気にみえた。クシャッとした笑顔がとても可愛らしい。


 わあっと声を上げたアウラ。俺はこの世界での生きる意味はこれなのかもしれないと俺も笑った



「そうと決まれば、アウラがいた町に行こう」

「うん!!」



「といっても…。意気込んだのはいいが、一体どこに街なんてあるんだ?」


「あのね、かえるさん!多分ここからだと首都アンキロの方が近いと思うの!だから先にそっちに行った方がいいと思う!」


「ほうほう、なるほど…。この近くに街があるんだな」


 スライムも確か言っていたな、人間がウジャウジャしてるところがあるって


 しかしまぁ見渡すばかりの森、森、森、であっt


「ピギーーー!!!」


 また奴が鳴いた。 あいつホントにどこにでも居るんだよ。ふざけやがって。


「ピギーーー!」


 また鳴きやがった。いい加減にしろよな


「ピギーーー!」

「あぁうるせぇ!!!!!」


 俺は声を荒らげてしまった。


「おい!どっかで見てるんだろマンドラゴラ!お前ほんとふざけんなよ!!?こっちは町を探してるんだ!!!」

「ここでお前のちょっかいに付き合ってる暇はねぇんだ!」


「ピギーーー?(笑)」


 マンドラゴラ。絶対にヤル。

 俺の決意は硬かった。


「かえるさん。マンドラゴラ煽ってるよ。」


「やっぱりか。なんかピギーーー!がピギーーー?に聞こえたのは気のせいじゃなかったんだな。てか笑ってたよな。」


「さてまぁ首都アンキロはいったい、どこにあるんだ?」

「わたしも詳しい位置はわからないの」

 アウラでも正確な位置はわかって居ないらしい。



『首都アンキロ』総人口1万人程の街。大森林に囲まれている為、林業が盛んである。アウラに街の絵を書いてもらったが、アンキロサウルスの様な形をしていた。図で言うとしっぽのハンマーの部分に領主が住んでいるらしい。


 俺のいた世界の存在である恐竜が

 偶然かもしれないが、町として形を成していることに俺は少し感動した。


 俺たちは首都アンキロへの手がかりになりそうなものを探す。道中何度かマンドラゴラに煽られる。


 奴は姿を表すことなく俺たちに付きまとっているようだ。

 俺はピギーーー!としか聞こえないがどうやらアウラが言葉がわかるようなので、逐一翻訳してくれた。


(以下、マンドラゴラ『』)


『Hey!Yo!』


 多分あいついまグラサンしてニタニタしてるだろ。

 俺は怒りを通り越して笑えてきた


『かえるの脚が 全然ちゃう。

 ここで怒るの ゴブリンちゃう。

 ワムウがおまえに送るfuck

 ここでお終い ご愁傷さん 』


 トゥクトゥクトゥクトゥク


『俺の名前はマンドラゴラ!

 ここ通さねぇぜオンザボーダー!

 お前のいのちと等価交換!

 頂き勝利のコカ・コーラァァア

 リィィィィ!!!!!』


 何故かラップ口調だった。

 関西弁だし。

 コーラ飲んでるし。

 バクだろこれ。

 いいの?異世界転生だよ???


 アウラもこの状況を楽しんでいるようだった。

 てかアウラ韻踏むとか分かるの?

 もう言うことねえわ。 やっぱ強ぇわ もうダメだ 強い


『お前のビートを聞かせてみな!』

 声だけで対決するようだ。いかんせん姿が見えないので腹が立つ。


「ヒキガエル、カエル。」


『BOOOOOOOO!!!!!!!!!!』


 強烈なブーイングだった。だって分かんねぇもん。俺おじさんだし。なんだよまじで。


『ヒェッ、アーーーーーーイ!!!』


 なんだろう。あいつグラサンだけじゃなくてキャップも被ってそうなんだけど。絶対マンドラゴラa.k.a.束縛の大地 とかだろ。


『深淵をのぞけ』


 ちげぇだろぜったい。覗く時、向こうも覗いてるんだろ。なんで命令形なんだよ。「かろ、かっ、く、う う、い けれ」 の「けれ」じゃねぇか。蹴ってやろうか本気で。


『ヒェ』


 レパートリー少ないんだよ。他にあっただろ。仕事場の後輩が

「hey!hey!what’s up!」

 って言ってたけどその言葉そっくりマンドラゴラに返してやりたいわ。


『お前なんなん?』


 遂に、喋りかけてきやがったぞ。俺のセリフだろそれ。

 いや、ほんとに。そうだよ?いい加減にして欲しいよ


「早く姿を見せろよ!マンドラゴラ!」


『かえる風情に見せるわけがないだろうエイエイ』


「いいからでてこいよ!ビビってんのか!?」


 俺もだいぶ頭に来ている


『いや』

『俺は』

『でない』

 〖いいぜメーン!〗

『!?』


 今なんか別人格いたよな。俺はもう逆に怖くなってしまった。


 マンドラゴラとの口論をしながら歩いていくうちに少し開けた場所に出た。マンドラゴラの声はもう聞こえない。


 あれだけウザったい声も、いざ無くなってみると少し寂しい気もするけどこれでいい。


 アウラは俺の顔をみてニコニコしている。マンドラゴラとのやり取り、ずっと笑ってきいてたもんな。


 アウラが訳している間、俺の耳にはずっと

 ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!ピギーーー!って聞こえてきたけどな。気が狂うわ。


 ガサっ

「「!!!!」」


 不意に音がしたが俺たちは完全に気を抜いていたので、案の定ビクッ!っとしてしまった。


 ゴブリンの残党か?

 俺はいつでも蹴りを喰らわせられるように戦闘態勢にはいる。


 ガサツ、ガサッ

 ぬ、、、


「!」

「マジファット様、、、!」

「貴様、、、アウラか」


 現れたのは、アウラの主人、奴隷商であった。


キンチョールと緩和ですね。わかります。

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