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第六話 「絶望を撃て」

 

  わたしには人や動物、モンスターのその体の奥にあらゆる形をなした結晶が見え、そこに肩書きや能力、所謂(いわゆる)ステータスを可視化することが出来るスキルがある

 といっても常にそう見えるという訳では無く、目を凝らし、しっかり見るとそれが見えた。これは多分、記憶にはないけど龍様から貰ったわたしのスキル。


 自分では自身のステータスを見ることは出来なかった。そうしたら自分の生い立ちも分かったかもしれないのに、なんて考えたこともあった。


 わたしは孤児だった。本当のお父さんとお母さんを知らない。

 物心着いた時には街の奥外れにある寂れた、明かりの灯る小さな協会の孤児院で、他の孤児たちと一緒に暮らしていた。


 孤児院でわたし達を育ててくれたマザーはとてもいい人だった。ニカっと笑うと(しわ)が増え、たまに冗談も言う愉快な人だった。


 あれはわたしが12歳になってすぐだっただろうか。わたしに突如スキルを授かった時の事。


 わたしは他の孤児達にはスキルがないことを知った。

 スキルを獲得したことを知ったわたしは興味本位でマザーの事も視てみようと考えた。


「おーい」


 花に水をやっていたマザーにわたしは声をかけた。



「っ!!!!!!!!」


 驚くべきステータスが表示される。


 ─え?どういうこと?─


 わたしはマザーに表示されているものが信じられず思わず口を覆った。


「どうしたんだい??」


 マザーがわたしに駆け寄って来たが、恐ろしくなり後退りをする。


「どうしたんだいアウラ。。。」


 マザーがわたしを心配して覗き込む。


『個体名:「ベヨネッタ・サンタテレサ」

 人間種/称号:大罪人/スキル:━━━━━━━━』


「タイザイニン?」と小さく呟く。


 わたしの目に新たな情報が開示される。 

『称号:大罪人』とは10人以上人を殺した者が授かる称号だとスキルが解説した。


 わたしは嘘だと疑った。

 目の前に居るこの優しさ溢れるマザーが人を殺すなんて信じられない。悪い人なわけが無い。


 このスキルは嘘つきだ。絶対うそっ。

 こんなスキルなんていらないっ。

 信じないっ。


 こんな目ならいらないよっ。




 わたしをここまで大きく育ててくれたのは彼女だ。彼女の存在は、小さな協会で育ったわたしにとって全てだった。。

 ─そうよ─



 たとえ人を殺した過去があってもマザーはマザー。

 わたしのお母さんだ。。


 わたしはそう考えるようにした。


 この事は、わたしだけの秘密にしようと考えた。


 その日は「なんでもない!ただ呼んだだけー!」と、はぐらかした。

 それからわたしは怪しまれないように日常的に笑顔を絶やさず気丈に振舞った。


 それから少し日がたった頃


 わたしは誤ちをおかしてしまう。

 いつも食料配達しにくる若い気さくな青年にマザーの称号について話してしまった。

 1人では抱えきれなくなったいた。

 そしてその行為がもたらす悲劇を、思慮に乏しい幼い少女には想定することが出来なかった。


 青年はその日何事もなく帰って行った。

 がその日の夜、神妙な顔で、息を切らし肩を動かし、協会で寝ているわたしのところへ来て

「助けてあげる」と言い、わたしをヒシと抱いた。


 青年は街の自警団にマザーの称号について話してしまった。青年の行動は至極当然であったであろう。


 街の自警団がぞろぞろと協会に入りマザーの居所を捜索し始めた。


 寝ぼけているわたしは何が起きているのかうまく理解できない。


「抵抗するな!」


 大きな声が聞こえた。

 マザーが自警団の大男たちに連れ去られてしまっていた。


 小さな少女には突然広げられたこの光景を、ただ眺める事しか出来なかった。

 それは孤児たちが母親を失う瞬間だった。


 それからわたしの母親は連れていかれ二度と帰ってくることは無かった。





 そのまま身寄りもない、わたしたちは奴隷として足枷を付けられ街の奴隷商の建物の地下に収監された。


 あの食料配達の若い青年も「こんなつもりじゃなかったっ。すまない」と言葉を発していた。


 しかしわたしにはもう、いろいろどうでもよかった。

 自分の軽はずみな行動がこんな地獄へ誘うとは予想もしていなかった。後悔に打ちひしがれる。悲しい。


 それに他の孤児達はここに来てから見ていない。




「あなたは悪くない。どうか生きて」




 マザーが自警団に手錠をつけられ、

 連れていかれる時にそう私に叫んだ


 人を殺した過去なんて関係ない。わたしは今そこに見えている確かなものを信じれば良かったと思った。

 称号やスキルは関係ない。その人過去や心は可視化することは出来ないのだから。



 わたしは小さな奴隷商に売り飛ばされたり

 他の街に送られたりと、色んな町を転々としていた。


「がたんがたん」


 そしてまた次の大きな街に拠点を移すために

 同じ境遇の奴隷達と一緒にわたしは馬車に揺られていた。


 目的地は首都『アンキロ』。


 その首都『アンキロ』に向かうにはとても大きな大森林を抜ける必要があった。護衛の人が何人かつけられ、そのために金を払ったんだぞ。と奴隷商の人に殴られたことを覚えている。



 ある夕暮れ時、馬車が大きく揺れ、護衛のが騒ぎ始めた。


「くそ!!!!!ここでこんなやつと出くわすとはめんどくさいな」

「これはもう少し金を貰いたい状況だなっ。」

「Cランクってところかっ?」「まぁただのゴブリンだろ」



 わたしは馬車の鉄格子から外を覗くと、ゴブリンの群れとそれを指揮する大きなゴブリンが馬車の周りに現れていた。

 わたしは自分のスキルを通し、その大きなゴブリンがホモゴブリンであり名前がある事がわかった。


 -名前があるモンスターは基本的に人間より強く

 簡単には討伐することが出来ないのは世の常識-


 少女はここで終われると安堵した。


 ただのゴブリンだと敵を見誤った護衛の人達がバタバタと倒れていく。

 奴隷商の人もそれを見て驚愕し直ぐに逃げていってしまった。


 奴隷の子供たちは泣きじゃくり悲鳴をあげている。


「助けて」

「お母さんっどこっ助けてぇ」

「えんえん」


 わたしはその中で1人、泣くこともせず喜びに満ちていた。

 やっとこの地獄から開放される。



 ゴオオンと馬車に付属していた牢屋が大きな音をたて壊される。

 すると奴隷の子供たちは繋がれた鎖を必死に血が出るほど剥がそうとする。しかし満足に食事を貰えない奴隷には鎖を壊せるほどの力はみなぎってはこない。


 ドシャ


 何かが勢いよく潰れる音がした。

 ホモゴブリンが子供の一人を持っていた棍棒で叩き潰した。骨が皮膚を突き破り針山のような形になった塊がそこにはあった。


 奴隷たちは自分の運命をさとり、ものすごい勢いで泣き叫ぶ。


「嫌だよ怖いよ」「たすけて」



「黙れ!!!!」


 泣き叫ぶ子供たちに、ホモゴブリンが恫喝する。


「お前たちは連れていく。同胞よ運びだせ。」



 ━━━━━━━━━━━━━━


 足に繋がれた鎖をゴブリンたちは簡単に壊し

 子供たちを森の奥に運んでいく。

 その中には亡骸となった護衛の人達もいた。

 少女はなんの抵抗もなくゴブリンの向かう先に連れられる。


 恐らくここが住処であろう場所に到着した。

 子供たちは完全に泣き叫ぶ力も失いただ絶望に身を任せていた。


 ゴブリンとケタケタと笑いながら奴隷たち首をはね始めた。


 ザッサリ ザッサリ


 血が勢いよく噴射され、ゴブリンたちは盛大に大きく口を広げその返り血のシャワーを浴びるようにゴクゴクと飲み干す。


 みるみるゴブリンたちの腹が膨れていくことがわかった。


 少女は抵抗することも出来ずこの悲惨な状況に身を傾ける。

 1匹のゴブリンが目の前に立つ。

 ニヤニヤと笑うゴブリンの目は黒く澱んでいる


 少女は最後が来たことを悟る。

 あぁ、これは報いだ。わたしがマザーの事を話したから龍様が私を罰しようとしているのだ。


 走馬灯だろうか。昔のことが頭に流れる

 貧しながらも孤児院で楽しく過ごしてきた日々

 マザーの笑顔と優しさ



「どうか。生きて。」


 少女はマザーの最後を思い出した。

 どこかに隠れていた記憶の欠片。 その瞬間─


「ストッ」


 少女に生きる生気が飛びついてくる。


 その音の招待は1匹のカエルだった。


 わたしはゴブリンに顔を押さえつけられながら、


「たすけてっ」と声を絞り出した。


 と同時に「殺人」の称号がカエルに着いていることがわかる。このカエルが、人殺し??わたしもゴブリン達と一緒にころさ





「絶 対 助 け る !」


 そのカエルはわたしに約束してくれた。

 あぁ、マザー。いまなら分かる。やっぱり貴方は悪い人じゃない。また称号に囚われる所だった。


 わたしはまだ



 生きる。








 

この物語は一応、バットエンドにしようおもてます。

幻影旅団は全員死にます

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