第三話 「常識の範疇」
俺は4つの手足を最大限利用してワームから逃げた。体が小さいので何度も追いつかれそうになったが、俺は無秩序に成長している木々を利用しながら「ゲッコゲッコ」と蛇行し夢中で走り抜けていた。逃げている時に、また見たことない植物を横目に見ていた。ブロメリア、カポック、ヤシ、マンドラゴラ。
マンドラゴラ「ピギー!!!」
また鳴いていた。
「ゲゲココォ」
ここまで来たら大丈夫だろうと俺は立ち止まった。
気が付けば俺は高台の上にいた。後ろを見渡すと、あのデケェ(まじでデケェ)×2はいなくなっていた。息切れがひどい。。喉も痛い。。体が焼ける。
「ゲコーッ、ゲッゲコー。」
と息が荒くなる。
焦る脳裏の裏で不思議と脚に疲労感はなかった。カエルって脚の力すごいだなと関心した。
俺は高台からちょうど隠れやすい自分の体より大きな1枚の葉を見付けた。俺はその葉の裏にそーっと隠れ、そして周りを見渡す。周囲に危険が無いか「ゲーーコー」と確認し、これからどうしようかと考えていた。
「ムニュュユウ」と和らいかい感触が体を走った。
1匹のスライムが同じ葉の裏にいた。
俺は大慌てで葉の裏から「ゲルっっ」脱出した。
おいおいスライムか...。やっぱ本当にスライムっているんだな...。異世界っぽい展開だなこりゃ。おじさんには展開が早すぎて着いてけねぇなぁ。
そのスライムはマルクエに出てくる「スライム」そのものの姿をしたモンスターだった。俺は身構え、じっとりとスライムを睨んでいたが、どうやら襲ってくる気配は無い。
「お前はここでなにしてんだ?」
「ゲコッ!?」
突如スライムが言葉を発した。スライムは言葉を話すものだったか?スライムに声帯なんかあったのか??
「おい無視すんなよ!」
いやそう言われても俺は言葉が話せないんだよスライムくん。
あれ?そういえばこの世界に来て試してなかったな。俺は人語を話せるのだろうかと思い口を動かしてみるが、やっぱり「ゲルル」としか言葉が出ない。
少しずつ「ゲル、ゲルは ゲレハ、、」と発声練習。少し経ってからすると流暢とまでは行かないが言葉を話せるようになった。スライムがこの間待ってくれた。良い奴やな。すこい。
「ゲートッ。ワームから逃ゲてきたゲロ。」と俺はまだ警戒を続けつつ言葉を発した。
「そういうお前ナニモンだゲ?なんで話せゲル?」と続けて俺はスライムに問いかけた。
「ただのスライムさ、話すもんは話すよ。」
そのモンスター、スライムは ぷるると体を揺らし答えた。
「お前もただのカエルか?」とそのスライムがまたぷるると体を揺らし俺に問いかけてきた。
「ゲルか?ゲッ、オレは、、」
俺ってカエルだよな。 まぁ見た目もそうだしな...
「多分ただのカエル、名前はね...。 アレなんだったかな???」
「名前?」ピチクッとスライムが反応する。
何だっけ? 俺の名前。ア、モリ、、リ?
駄目だ。全く思い出せない。
スライムが不審な目をにこちらを見ている。
「アーー、アオ?アオモリ?そう!アオモリだ!!!」
なんでこの名前が咄嗟に出てきたんだろう。
こんな名前だっただろうか。あんまりピンと来ない。いやしかし人語に慣れてきた。いい進歩だと前向きになる。すると
「お、お前名無しじゃないのか!?」とスライムは驚いた。
「権兵衛の事か?」と俺が聞くと
スライムは「なんだそれ?」否定した。
伝わらないのか?名無しの権兵衛が...。そうかここは異世界だった。文化はまるまる違うと考えた方がいい。
スライムがまた口を開いた。
「ただの名無しのことだよ。お前も知ってるだろ、ある程度力を付けると自分に名前が付いて名前付きになることぐらい。」
初めて聞いたわ。なんだよその設定。
「誰かが付けるのか?」と俺は疑問を投げかけた。
「??。えっとアオモリだったけか? アオモリはバハムート様に付けてもらったんだろ」
「バハムート様???」
「俺たち魔物はドラゴン様に認められて魔人になれるんだぜ?常識だろ?」
「そう、、だったな 忘れてたぜ」
咄嗟に口裏をあわせた。そうなのか。ドラゴン???ドラゴンもやっぱいるのか。さすが異世界。ていうか、それよりいま魔人って言ったか!?この世界には魔人がいるのか。するとつまり人間もまたいるのだろうか。
「人間ってやっぱいるのか」
カエルは恐る恐るスライムに問いかけた。
「人間?当たり前だろ?確かこの大森林から南の方に抜けた先にいたようなぁ..アイツらゾロゾロいて気持ち悪いんだよな。」
ここに来て1番嬉しいニュースだった。この異世界には人間がいるみたいだ。俺は「ゲール」と安堵した。この世界の文化レベルは分からない。どんな人間がいるのだろう…。人間に会ってみたいな。私はカエルの姿だから遠巻きにでも見れたらないいなぁ。
そのままカエルとスライムは会話をした。
このスライム曰く、世界にはモンスターが沢山いて、ドラゴンに認められたモンスターが人型になって行くらしい。
職場の新人に借りた漫画のように、この世界にもファンタジー的設定があるのだろうか
「というかお前は名前付きなのになんでカエルのままなんだ?」
突然スライムがアオモリに聞いた。
「あーなんでだろうな?お前も名前が着くといいな」と俺がいうとスライムはコクりと頷いた。と思うと、いきなり口を大きく開けて俺に覆いかぶさってきた。
突然のことに俺は声が出なかった。スライムに体を持っていかれている。飲み込まれてしまった。
「ムゲルググ!!!」
苦しい。息ができない。俺は体をジタバタさせた!だがスライムの体は柔らかく抜け出せそうにない!
視界に靄がかかり、だんだん暗くなってきた。あぁ、、ここで死ぬのか。打ち上げられた魚のように動いていた俺の体も徐々にダラんとしてきた。
完全に世界が暗くなったかのように思えた時、赤く光るモノが俺の視界をとらえた。
本能と言うのだろうか。気づけば俺はその光るモノを掴んでいた。
「ゲ、ゲルゥッ!!!」
スライムが俺を吐き出した。
俺を吐き出した口からピチャピチャと液が滴り落ちている。
「何するんだよ!!!!!」と俺は叫んだ。
スライムは苦しそうにしながらも不敵な笑みを浮かべ...
「よくよく考えたんだよ!!お前名前付きなのにカエルなんだろ?魔人にはなっていないんだろ!!って事は弱いって事じゃねぇか!!お前を喰えば俺は名前を貰える!!!!」
そういう魂胆か。たしかに俺は傍から見ればカエルでしかない。。。
「だからって俺を喰わなくてもいいじゃないか!!!」
「こんなラッキーな事があるかよ!!!お前を取り込まない手はないね!!!」
もう出会ったときのあのスライムの親しみ安さは完全に消えていた。
やはりモンスター。力への渇望は他の追随を許さない。
グポリッとスライムは液体の塊を吐き出した。 俺は何とかそれを交わした。すると
ジシュー。と地面が溶けていくのを俺は目にした。
「ゲロっ、さっ酸か、、、?これはやべぇな」
どうやらこいつは溶解液を出すみたいだ。しかし息の取り憑く暇もなくまた2発目がグポリと発射される。くそ避けきれない!!終わるっ!!
ビッチャーリィと溶解液にかかった。
あー終わったぁ、異世界人生いや、カエル生もここまでかぁ。さよならだ。
短いカエル生。走馬灯すら流れる気がしないなぁ。
んーーーー。あれ?溶けないぞ?なんかピリピリする。
俺の体には自分でも気づかなかったが
実は肌の表面にうっすら粘液が分泌されているようで、やつの溶解液はピリピリと痺れる程度であった。
「食われた時にすぐ溶けなかったのはそのおかげかっ!!今回はこのカエルの体に助けられたぜ!!しかしあまり当たりすぎるのも良くないな!」
また次々とゴポッゴポとスライムは液を吐き出してくる。
俺はそれをすんでのところで交わしていく。走った時もそうだったが俺の脚の力が強いようだ。
それが功を奏してよかった。もし、おじさんナメクジになってたら今頃どうなっていただろう...。
「大人しく俺に喰われろよ!!!!!」
するとスライムがミルリ、ムルリと体を大きくさせた。
その時ピカラッと、スライムの体の奥に赤く光るモノがあった。
どうやらスライムの中心部には核のようなものがあるみたいだ。
そうか!!さっき俺が掴んだあれは核だったのか!!
吐き出したということは、アソコが弱点じゃないのか?
そう思った俺は
「俺の負けだ。」とスライムに喰えよと言わんばかりに体をうつ伏せにした。
「それでいいんだよそれで。」クククとスライムが笑う。
アングリとまた大きく口を開き、アグリッと俺を飲み込もうとした。
その瞬間、俺は脚に懇親の力をいれスライムの口の中に飛び込んだ。
「!?」
スライムが驚いた時にはもう遅い。
俺はまた足に力を入れ、スライムの核に脚を抉るように刺し込んだ。
「繧ッ繧@ス縺fhp??アベ?繧ね、!ギゴ?? 」
耳を劈くような、聞くに耐えない奇声をあげ、スライムは消滅した。
「たっ。倒せた。」 私は腰を下ろそうとした。
すると「ジガガガ」と急に脳をジャミングされたように感じ突然無機質なアナウンスが脳内に響いた。
《スライムを撃破。個体レベルが上がります。スキル『超跳躍』『刺し脚』『豪脚』を申請します》
《龍アストロビスタより、スキル『超跳躍』『刺し脚』の申請が受諾されました。》
「ゲロッ!? スキル??超跳躍、刺し脚、豪脚???」