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俺は異世界転生していない。  作者: モロッコ
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産まれた時からおかしかった。


ある春の日の朝、母親の胎内から産まれてすぐ、言葉を喋れた。

「乳を飲ませろ」

取り上げた助産師は俺を抱いたまま気絶した。

母親はおっとりな性格のおかげか「あらまあ、赤ん坊って喋れるのね」ときた。

立ち会った父親は「私か?」と検討違いな回答をする。


首がすわったのは産後1か月後。普通の赤ん坊は3ヶ月位だが、成長が少し早かったらしい。

乳離れはそれから2週間後。「茹でたいもが食いたい」とハイハイをしながら厨房に行き、コックに頼んだ。

バランスのいい野菜を細かくすりつぶした物を出された時は叫んだ。「食べたいのは固形だ!」すぐ温野菜が作りなおされた。


俺の家族はそんな俺を可愛がってくれた。大きな家だから使用人も沢山いる。

俺に会うと怖がるものもいたが、いいさ、人は自分と違うものを怖れる。


一歳になると全属性の魔法を発動した。

1人1つ、もしくは3つ、頑張っても5つらしい。

特殊魔法、光・闇

六性魔法、地・水・火・風・金・雷

庭で見付けた羽の折れた小鳥。「楽にしてやろう」と闇魔法・毒で苦しまず寝かせてやると、後ろに付いてきていたメイドが気絶した。あ、治せば良かったのか。


子供は一歳になると教会で神の恩恵(ギフト)・スキルをもらう。

これによって魔法特性のない者も将来スキルを使って仕事ができる。

ほとんどの平民は魔力を持っていても魔法特性がなく、教会で与えられたスキルによって人生を決める。

貴族は特性を持った者が多く、そこまでスキルは大事ではないが、たまに『神からの称号』をもらったりする。


俺も教会へ向かう。

子供達は白い服を着て親に抱かれながらやってくる。

俺だけ自分で歩く。ざわめく。うるさくて子供達も泣く。

教会の偉いじい様の挨拶が終わり、いよいよ『ギフト』が始まる。

平民から始まり、階級の高い貴族が最後となる。終わった者から帰っていく。

これは将来、いいスキルの人間をスカウトするためもある。

アレン・マックイヤー『ギフト』スキル・剛力!

テジー・オーレント『ギフト』スキル・!研磨!

ミランダ・アジュール『ギフト』スキル・裁縫!

ほとんどの子供は親のスキルと同じくなる。神が選定して職業不足を無くしていると言われている。


平民から商人や職人などの金持ちに変わると、スキル名も変わってくる。

エヴァン・カーター『ギフト』スキル・鑑定!

エレノア・トンプソン『ギフト』スキル・裁縫!

マーカス・マグワイア『ギフト』スキル・加工!


最後騎士と貴族、王族の番だ。

セルナン・K・イルナッツ『ギフト』スキル・跳躍!

ノーブル・D・クードゥ『ギフト』スキル・俊足!

ナオラー・T・マクワート『ギフト』スキル・記録!


俺の番がやって来た。

ユージン・W・ハマー『ギフト』スキル・運命!?

おい、なぜ俺だけ疑問系なんだ。運命とはなんだ?大人達がざわついている。


ルーカス・G・シュベルグ『ギフト』スキル・威光!

最後、王子のスキルが発表された。


「ハマー公爵、あのな…まだ帰らないで待っていてくれ。」偉いじい様に呼び止められる。教会の使いの者が俺と親父をじい様の書斎へ通す。

部屋のソファーへ座って待つよう言われ、紅茶を運んできた。

「いま子息様の飲み物を準備します。何を飲まれますか?」親父に聞く修道士。

俺に聞け、俺の飲み物だろう。

「紅茶をくれ」と伝える。そう驚くな、少し成長が早いだけだ。


「息子よ、私は何か仕出かしたのか?」いや、親父ではないだろう。俺だ。

「早く帰りたいなー、どうせ王子にゴマでもすってんだろー?「威光」って王族なんだから皆敬うじゃん?必要?「運命」ってなんだ?」それは俺も気になる。


ガチャッ…バダン!じい様が乱暴にドアを閉めて部屋へ入ってきた。

「ああー!嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃーーー!!バカ王がぁ!!」頭を抱えながら叫び、ソファーに座る。


「おいおいじじい、どうした?なんか言われたか?」


「王がな…「我が息子のスキル、王家なのだからいらないだろう。新しい物を能えろ」無理じゃって!神様怒るって!」


「嘘を言ったらどうだ?「スキル・美男子」とか。あ、そのスキルは王に必要だな。」


「そもそも1つしか能えられないというのに…王子も将来ああなるのか?もうこの国…いや、他の国の王家も同じだな、人間は腐ってしまった。」


「じい様、親父、あまり変な事を口にするな。誰がどこで聞いているのか分からんぞ」


「はっはっはっ!父は嘘をつかん!」


「ユー坊、わしだって我慢しておるんじゃ。もう嫌じゃ!誰かあの王を呪ってくれ!痔が悪化してしまえ!」


「小さい呪いだな、その位なら俺がやっておこう。それで何故俺を残したんだ?」


「えーっとのぉ…そうじゃそうじゃ、なんじゃ「運命」って、ふざけんじゃないわ!わしは早く引退したい!」


「おい、なぜ怒ってんだ?俺だって意味わからないんだ、ちゃんと教えろ。」


「はあ…神の言葉じゃ。「我に選ばれし者、決められた運命を歩め、誰にも邪魔できない。」だ、バカ王に聞かれたが「ちょっと幸せな運命」とだけ伝えておいた。

後おまけで称号あるぞ、「神の息子」これ絶対内緒な!ユー坊が10歳を迎えたら神託で説明するそうだ。今後、教会はユージン・W・ハマーの後ろ楯になる事を私、教皇ディーリッヒ・K・アダムが約束しよう。」


親父は「ん?神に選ばれた?息子が?ふーん」で終わり、じい様は「甘い物食べたい」と言ってパイを棚から出し俺にもくれる。


屋敷に帰り、家族会議が始まった。


「ならユージンは凄い子ってことよね?」


「母上、ユージンはやはり素晴らしい弟ですわ!感激ですわ!」


「兄としては心配だよ…王家に利用させないために我が家の別荘がある北の領地へ行かせたら?あそこのなら王都の人間も来ないよ。」


「それもいいが、家族が離れ離れはいかんだろう。」


母のダイアン、姉のニール、兄のディロン、父のマット。

お袋もニールも俺を褒めている。いつもありがとうな、今度綺麗な石を取ってきてやる。

ディロンも心配してくれてるのか?そうだな、離れたくはないが、面倒事は勘弁だ。


「確かに田舎に行った方がいいが、今すぐ行くのは不自然だ。もう少し子供らしい事をしたい。

二年後、俺が3つになったら病気か何か理由をつけて田舎に療養する。それまで皆、家族の時間を楽しもう。何、10歳になると人生が決まるんだ、そこまで悲観することもあるまい。」


その後二年間は王都の国立図書館にある本や、他国の本も読んだ。その間目立った事はせず、本は全てディロンと親父が屋敷に持ってきてくれ、一歩も屋敷から出なかった。

馴れてきた使用人達に手荒れ薬を作ってやったり、一緒に菓子も作った。

たまにじい様が遊びにきて聖書と多国語の勉強をする。

親父の知り合いの偉い軍総括のおっさんも来て剣を教えてもらった。今では俺が教えている。


二年間過ぎ、田舎へ篭る。


度々家族から本や新聞が届く。

親父は良き好かれた領主らしく、俺を迎え入れてくれた。

体が弱くないのを知っているが、余所者にそれを隠してくれている。


たまに動物の被害がある時は感謝のために駆除する。

勿論死体は民にくれてやる。

たまに魔物もいるが、俺の遊び相手位にしかならん。


それから数年、王都に戻る時がきた。

じい様から「神託が下る」と呼び出されたからだ。

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