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91.決着、そして……。

 二刀流のレウスに対してセバクターは素早くロングソードを突き出す。迷いは無い。

 真剣での勝負なので、胸を突かれでもしたら確実に死んでしまう。


「……っん!」


 だがレウスは、迫り来るそのセバクターのロングソードを左手のロングソードで弾き、そのままガラ空きのセバクターの足をブーツを履いた自分の足で素早く払い飛ばす。


「うお!?」


 あくまでも我流ではあるものの、前世の数々の冒険で培った経験で体術に関してもエリートクラスのレウスは、例え相手が歴戦の傭兵であろうともビビる訳にはいかない。


「ちっ……」


 セバクターは油断していた自分にその舌打ちで活を入れ、再びロングソードを振り回してレウスに向かって行く。

 スピードを乗せたセバクターの突き、薙ぎ払い、そして振り下ろし。それをレウスはギリギリで回避して行くが、まだレウスには余裕がある。

 避けられないスピードでは無い以上、自分の動体視力でしっかりと見てからでも回避は可能だった。


「悪くは無い、が……」


 突きを繰り出して来たセバクターのそのロングソードを身体を捻って回避し、そのままぐるりと身体を回転させて、ロングソードを握ったままの左の裏拳でセバクターの顔面を殴り飛ばす。


「ぐぁっ!!」

「まだまだ甘いんだよ」


 セバクターがドサッと地面に倒れ込んだのを見て、レウスはもう使う必要は無いと自分のロングソードを二本とも腰の鞘に収めた。

 一方で殴られた頬の痛みに耐えつつ起き上がったセバクターは、レウスの行動を見てその普段冷静な性格が一時的に変わっていた。

 つまり、ヒートアップしたのだ。


「余裕か……? 余り俺をなめるなよ!!」


 セバクターは再びロングソードを持ってレウスに向かうが、レウスは冷静にロングソードの振り下ろしを回避。

 そのままセバクターの右腕を思いっ切り捻り上げて彼の手からロングソードを落とし、グイッとセバクターの右肩の関節を回してやる事で、セバクターの身体を前方に半回転させて背中から地面に叩きつけた。


「ぐあ!」


 再び地面に倒れる格好になったセバクターだったが、手首を掴まれたままでも素早く体勢を立て直して再び起き上がる。

 しかし、レウスはそれを待っていたかの様に手首から手を離したかと思うと、空いている右手でセバクターの腹に強烈なボディブローを一発。


「ぐぅ!?」


 みぞおちを的確に捉えられてセバクターが怯んだ所で、若干前のめりになった彼の身体をレウスは全力で持ち上げて、地面にセバクターの背中を叩き付ける。


「がはぁ……っ!?」

「これ以上やりあっても無駄だろう。決着はついたと思うがな……」


 レウスは前世の自分……アークトゥルスとしての経験から、今しがた地面に投げ落としたセバクターの顔を見下ろしながらそう言う。

 だが、勝敗の判定をするのはレウスでは無いのだ。


「良し、そこまでっ! 勝者はレウス・アーヴィン!」

「はっ、やっぱり五百年前の勇者様ってのはそんなヘボい奴に負ける訳が無かったな。俺の目は確かだったってこった」


 セレイザの判定を聞いたバスティアンが、満足そうな笑みを浮かべて嬉しそうに膝をポンッと打った。

 そしてこの勝負の結果を見て、改めてレウスに皇帝の命令を下す。


「それじゃてめえが強いのは良ーく見せて貰ったからよお、一番使い慣れている武器を返して貰ってさっさとバランカ遺跡に行ってくれや。サンドワームの奴等をぶっ殺して戻って来てくれよな」

「レウス……無茶しないでね。無事に戻って来てね!?」


 声を掛けるアレット、それから黙ったままのエルザにソランジュの三人を見据え、レウスは頷いて答える。


「ああ。俺はあの遺跡がまだ町だった頃に何回か行った事があるから、その時と構造が変わって無かったら大丈夫だ。……おい、クソ野郎。無事に戻って来たら、この三人をちゃんと解放して下さいよ」

「良いからさっさと行って来いよ。何回も言わせんな!!」


 頬杖をついたままのバスティアンが面倒臭そうに左手をヒラヒラと振って、邪魔だと言わんばかりの態度でレウスに出発を促す。


「あ……そうそう。言っとっけど、途中で尻尾巻いて逃げ出すんじゃねえぞ? 俺の息が掛かった帝国騎士団員達が城下町からバランカ遺跡の周辺に至るまで目を光らせてるし、逐一報告もしてもらうからな。てめえに逃げ場は無えんだぜ?」


 その上、こうして監視しているから逃げられないと脅しまで掛けられ、レウスは謁見の後にした……と言うよりも追い出されてしまった。


「陛下の事をクソ野郎と呼ぶだの、胸倉を掴んだりする等の野蛮な言動は即刻死刑に値するが、今回は陛下が任務を与えて下さったのだから今の時点では大目に見てやろう。だが、怖じ気づいて逃げて帰って来る様な事があれば私がこの手でお前を葬り去ってやる」


 蛇も逃げ出しそうな視線でレウスを睨みつけながら、セレイザは没収していた彼の槍を返す。

 そんな彼を見て、思わずレウスの口から率直な感想が出てしまった。


「……良くあんなのに仕えてるよな、あんたも。何が楽しくてあんなのと一緒に居るんだよ」

「うるさい。私の事はどうでも良いだろう。良いからさっさとバランカの遺跡に行け。陛下は気が短いのだと自分で仰られていた通りのお方だ。余り長くお待たせするのであれば、あの三人の女がどうなるか分からないでもあるまい?」

「とことん腐ってやがる……何がソルイール帝国だ。お前達に協力するのはこれっきりだからな」


 五百年前の勇者としてでは無く、一人の人間としてバスティアンやセレイザに殺意を覚えているレウスだが、今は任務を成功する事に意識を集中させながらクレイアン城を後にした。

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