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90.実力の証明

 先程、自分に詰め寄ったレウスをセレイザと一緒になって止めに掛かったセバクターと、今度は戦えと言い出したバスティアン。

 そう言えば、この国の皇帝は好戦的だと以前に何処かで聞いた覚えがあるレウスは、今になってその厄介さに気が付いた。


(ちくしょう……この男の事だからな、三人を人質にされてしまっている以上は断ったら何をされるか分かんないぞ)


 自分一人がここに連れて来られていたらバスティアンをぶん殴ってでも逃げていた所だが、アレットとエルザとソランジュが一緒に居る以上そんな事をすれば間違い無く彼女達に攻撃を加えるだろう、とレウスは簡単にイメージ出来た。


「良いよ……やるよ」

「ほー、やけに素直になったじゃねえか。何を考えてんのか知らねえが、やる気になってくれたんなら俺はそれで良いや。じゃあそいつにはそれで戦って貰えよ」


 主君にそう言われたセレイザが差し出したのは、誘拐犯ウォレスの手下達からエルザが奪い取った二振りのロングソード。

 既にバトルアックスを二本持っているエルザには必要無いので、レウスが譲り受けて腰にぶら下げていた物だった。


「え……俺が使うのは槍じゃないのか?」

「槍でも良いんだけどよぉ、かの有名なアークトゥルスは色々な武器を使えたそうじゃねえか。俺達も同じ様に色々と武器が使えるんだけど、せっかくならてめえがどんな武器を使ってもそれなりの有名人には勝てるんじゃねえかって思ってよお」


 どうやら、このバスティアンは自分がセバクターに勝つのだと思っているらしい。

 確かに以前、学院に初めて行った時のあの覗き事件の冤罪を晴らす為にセバクターと戦って勝ってはいるが、あの時はお互いに初対戦だった事もあって相手の手の内が分からないバトルだった。

 しかし今回は二度目の上、お互いにそれなりに経験を積んで強くなっているのでは無いかと考えている。

 つまり、レウスが絶対に勝てる保証は無いしセバクターもまた負けてしまうかも知れない。

 そんなレウスの心境を悟ったのか、更に挑発的なセリフでバスティアンはレウスを煽る。


「はっ、相手が炎血の閃光だから怖気付いたのかよ?」

「いや、そうでは無いんだが……」

「じゃあボケーッとしてねえでサッサとやれよ。それとも槍以外は振るえませんってか?」

「違う違う。セバクターにやる気があるのかどうかが気になるだけだ」

「あ?」

「だってさ、俺達はマウデル騎士学院の卒業生とその後輩なんだぞ。仲間内で斬り合う様な真似をすると思うか?」


 その問い掛けに対し、レウスに向かって飛んで来たのは怒声と大型のナイフだった。


「ゴチャゴチャうるせえんだよ!! やれっつったらさっさと始めやがれ!! これ以上俺をムカつかせたら二人纏めて俺がぶっ殺してやるよ!!」

「はーい、わっかりましたあー」

「っの野郎……何処までもムカつく勇者様だぜっ!!」


 血管が切れそうな位に怒りで顔が真っ赤になっているバスティアンの目の前で、二本のロングソードを渡される前に彼をおちょくったレウスと、愛用のロングソードを構えるセバクターが向かい合う。


「ちょ、ちょっとお! 二人とも止めてよ!」

「おいおい、貴様等が真剣で斬り合うなんてやってはならないだろう!!」

「おい、その女どもを黙らせておけ!!」

「かしこまりました。それでは……始めっ!」


 控えの騎士団員達がバスティアンの命令でアレットとエルザを更にきつく拘束している目の前で、セレイザの合図と共にレウスvsセバクターの二戦目がスタートした。

 今回も同じくロングソードを使うセバクターに対して、レウスは前回と違ってロングソードの二刀流である。


 先に動いたセバクターのその身体から繰り出される鋭い突き込みを回避し、バックステップで距離を取りつつ謁見の間の中央へと下がるレウス。

 玉座に繋がる階段付近で戦うのは二刀流もロングソードもやりづらいので、お互いにこれで楽に戦える様になった。

 お互いの様子を窺い、円を描く形でグルグルと回りながら二人は睨み合う。

 謁見の間に緊張が走る。


(どうする……向こうは俺に対してどう出て来る!?)

(やっぱりなかなか強い。だが俺だってあの時このレウスに負けてから腕を磨いて来たんだ。そう簡単に負けはしない!!)


 お互いの考えが何となくかみ合わないまま、足音が一瞬途切れた。

 それを合図に、二人は再び打ち合いを始める。


「たあっ!」


 若い身体を弾かせて、レウスに対してセバクターが飛び込んで来る。

 真っ直ぐ飛び込んで来る事で勝負を決めに掛かって来ているのか、それとも別の考えがあるのかは分からないが、それでもさっきと変わらないそれなりに素早い突きがレウスに襲い掛かる。

 だがレウスだって黙ってやられる訳も無く、右に避けてからグルンと左回りに回転しつつ、セバクターの脇腹目掛けて回し蹴り。


「ぐっ……」

「っ……」


 回し蹴りをセバクターの脇腹に当てる事には成功したが、彼のつけている防具の部分に左足のかかとを当ててしまう形になり、結果的にレウスも自爆でダメージを受けてしまう。


(ぐぅ……運の強い奴だ……)


 再び向かって来るセバクターに対して、こっちから先制攻撃でやってしまうしか無い、と左足を振って痛みを逃がしつつレウスは判断。

 ギン、ギィンと金属のぶつかり合う音が謁見の間で繰り返され、マウデル騎士学院の関係者同士のバトルが騎士団員達や騎士団長セレイザ、そして固唾を飲んで見守る女達をギャラリーにして続く。

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