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867.唯一の倒す方法

 ヴェラルが魔晶石爆弾によって頭を吹き飛ばされて絶命した頃、エヴィル・ワンの前方に出ていたレウスは意外な程にエヴィル・ワンもディルクも何もリアクションを起こさないので、かなり拍子抜けしていた。


(どう言うつもりだ……この俺がこうやってわざわざ前に出て来たのに、何もして来ないのはかえって不気味過ぎる!)


 バサバサとお互いの翼が動いている音だけが響き渡る中で、睨み合ったままの膠着状態が続いている。

 この時のレウスは、まさかディルクの方も自分と同じ様に疑心暗鬼の状態になっているとは思いもしていなかった。

 お互いにそんな状態が三十秒程続いた頃、先に動いたのはディルクとエヴィル・ワンの方だった。

 このままこうして膠着状態を続けていても何も変化が無いので、ひとまずレウスに手を出すのは後回しにして、テストも兼ねて先にこのルルトゼルの村から潰す事にした。


「くっ、逃げるつもりか!?」

「今はね。ただ、完全に逃げる訳じゃないから安心してよ。君はそこでジッとそのまましているんだね!!」

「く……くそっ!!」


 いきなり方向転換をしたエヴィル・ワンを追い掛け始めた筈のレウスだったが、そんなレウスに対して思いっ切り尻尾を振り回した。

 幾ら魔術防壁を掛けているからと言って、その魔術防壁の防御力を上回る攻撃力の攻撃を受けてしまったら意味が無い。

 レウスは咄嗟にワイバーンを翻したものの、そこに今度は特大のエネルギーボールがディルクの手によって放たれる。


「うおっ……!?」

「ははっは! ちょっと追尾機能をつけてみたよ!」

「は……!?」


 今までのエネルギーボールと違い、そのエネルギーボールにはターゲットを認識して当たるまで追尾する特性がある。

 五百年前にもそんなエネルギーボールを使う敵と出会った事があるので、その時の経験を思い出し何とか追撃から逃れるべく地面に向かって特攻する。


(ギリギリまで引き付けて……今だ!!)


 ワイバーンが地面と激突するかしないかギリギリのラインを見極め、そして素早く上昇する。

 エネルギーボールは追尾する時にターゲットに対してワンテンポ動きが遅れるので、その特性も頭に入っているレウスは自爆を覚悟でこの追撃回避方法を選んだのである。

 垂直に近い角度で地面へと特攻し、そして同じく垂直に近い角度で上昇したレウスのワイバーンを追い切れなかったエネルギーボールはレウスの計算通り地面に激突し、そして大穴を開けて爆発して消滅した。


(ふぅ……これで何とか逃れた訳だが、問題はあのエヴィル・ワンをどうやって倒すかだな)


 正面から向かっても到底勝ち目は無い。

 だったら自分が考えているその一つの勝利方法を実行するべく、レウスはボルド村長の元へと向かう。


「おーい、ボルド村長!!」

「あっ、アークトゥルス!?」

「おい、あれの起動はどうなっているんだ!?」

「そ、それが……起動に必要な魔力が足りないんだ!!」

「な、何だと!?」


 ここでまさかの事実が発覚する。

 何故こんな時にこんな事になってしまうのかと思いながら、レウスはあれを起動する為の魔力を確保するべく村の地下へと向かった。

 そしてその頃、赤毛の二人とそれぞれ戦っていた三人やカシュラーゼに残って残党と戦いを繰り広げていたレウスのパーティーメンバーが、レウスを追い掛けて続々とルルトゼルの村へとやって来た。

 そうなると当然、ルルトゼルの村を荒らし回っているあのエヴィル・ワンを目撃する事になる訳で……。


「ちょ、ちょっと……何よあれ!?」

「あれが私達が追い掛けていたエヴィル・ワンよ。でも……私達が追い掛けていた時よりもかなり大きくなっている気がするんだけど、気のせいかしら?」

「気のせいじゃないわ。紫色のオーラを纏っている時点で普通じゃないって分かるし」

「そうだな。それにしてもレウスは一体何処に行ってしまったんだ?」


 多少の時間差はあるものの、パーティーメンバー達がこれでようやく全員揃った。

 しかし、肝心のリーダーであるレウスの姿が見当たらないのでメンバー達は村人から彼の居場所を聞き出して、同じく地下へと向かった。


「おーい、レウス!!」

「あっ、お前等! 無事だったのか!?」

「ええ……何とかね。レウスも無事で良かったけど、あのエヴィル・ワンが上で暴れ回っているわ!!」

「ああ、それは分かっている。だから今こうしてこれをまた起動する為に、俺の魔力を送り込むんだ!!」


 自分が常人の十倍の魔力を持っているのを、これ程までに感謝した事は無いかも知れない。

 そう思いながら、レウスは以前自分を含めたパーティーメンバー達が危うく吸い込まれそうになった地下の扉を開ける準備を着々と進めていた。

 これが、エヴィル・ワンを倒すための唯一の手段なのだから。

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