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865.赤毛同士のバトル

 立ち上がったアニータは、ヨハンナが立ち上がる前にその身体を素早く足で踏みつけて地面に抑え込む。

 そのままキョロキョロと周囲を見渡し、先程ヨハンナの手から飛んで行ったショートソードが少し離れた場所に落ちているのを発見する。


(このままじゃああそこまで手が届かないわ。仕方が無いからこのまま押さえつけて首を締め上げるしか……)

「ぬぐぐ……ふんっ!」

「ぐえっ!?」


 その迷いが隙を生む。

 身体を捻って足での押さえ込みを解いたヨハンナは、そのまま転がって身体を半回転させて仰向けの状態になり、自由な右手でアニータの股間を殴りつけたのだった。

 余りの痛さに股間を押さえて倒れ込むアニータから逃げ出したヨハンナは、先程吹っ飛ばされてしまった自分のショートソードを回収するべく地面を這っていた手に力を込めて、立ち上がって駆け出そうとした。

 しかし今度はそこに側面から物凄い衝撃を食らい、再び地面に倒れ込むヨハンナ。

 一体何事かと痛みを覚えながらその衝撃の方に目を向けてみれば、そこには自分と同じ様に地面に倒れ込んでいるレアナの姿があった。


(この女……また私に体当たりをして来たのね!?)


 こうなったらこの女を人質にするなんて生ぬるい事を言わないで、この場で殺してやると意気込むヨハンナは今度こそすぐに立ち上がってショートソードの元へ向かう。

 だが、横から飛び込んで来た人影にショートソードを先に奪い取られてしまった。


「あっ!?」

「ふっ!」

「ぐぅぁっ!?」


 ショートソードの元に先に飛び込んで、転がりながらショートソードを拾い上げたのは先程ヨハンナが悶絶させたばかりのアニータだった。

 レアナの決死の体当たりによって再び吹っ飛ばされたヨハンナの姿を視界に捉えたアニータは、このまま悶絶しているばかりではいられないと気力を振り絞って立ち上がり、ヨハンナよりも先にショートソードを拾い上げる事に成功した。

 そしてその現実に足を止めてしまったヨハンナは隙だらけなので、転がって地面に伏せたその状態からショートソードを彼女の足目掛けて薙ぎ払う。

 その刃は足を切断するまでには至らなかったが、ヨハンナの身体の中で剥き出しになっている部分の一つである太ももを斬り付けた。

 左脚を斬られたヨハンナはバランスを崩し、返す刃で今度は横薙ぎに腹を斬り割くアニータ。


「ぐぅえ!?」

「ふんっ!」

「がはっ……は……」


 完全に膝をついてしまったヨハンナの胸目掛け、素早く立ち膝状態になったアニータの全力の突き込みが入る。

 しかし、狙いが外れたその凶刃はヨハンナの胸ではなくて首を貫通してしまったのだ。

 それでもヨハンナはその攻撃によって絶命し、この場でレアナを取り戻すと言う目的は達成したのであった。


「はぁ……はぁ、はぁ……れ、レアナ様! 大丈夫ですか!?」

「は、はい! 私は大丈夫ですが、アニータさんこそ……」

「私も大丈夫です! ですがまだ戦いは終わっていません。ひとまず私のワイバーンに乗って、もう一人の赤毛の……あの息絶えた女の師匠を追いかけて行ったアレットとソランジュと合流しましょう!」

「ええ、分かりました!」



 ◇



 アニータとヨハンナによる、赤毛の女同士の殺し合いがアニータの勝利で幕を閉じた丁度その頃。

 もう一匹のワイバーンを追い掛けて行ったソランジュとアレットの二人は、前方を飛んでいるワイバーンの乗り手であるヴェラルと激しいドッグファイトを繰り広げていた。


「ちょっとぉ、何時まで逃げる気!? もう諦めなさいよ!」

「アレットの言う通りだぞ! 既にお主に逃げ場は無い。さっさと諦めてワイバーンを停止させろ!」

(しつこい女どもだ……!!)


 普段は冷静な性格のヴェラルも、しつこく追い掛けて来るこの二人が乗っているワイバーンにイライラが募る。

 もう一匹のワイバーンに乗っているヨハンナは今頃どうなっているのかさっぱり分からないのも、そのイライラを増長させる原因の一つとなっていた。

 最初はさっさとスピードを上げてこのワイバーンを振り切ろうと思ったのだが、ソランジュがワイバーンを操っているせいか丁寧な乗り方をしているので、向こうの方がワイバーンへの負担が少ないらしい。

 しかもヴェラルの方は一人しか乗っていないのに、ソランジュとアレットで二人乗りのワイバーンが追い付いて来ているのもヴェラルは納得が行かない。

 なのでしつこく食い下がって来られているヴェラルのワイバーンが、そろそろ息切れを起こし始めていた。


『グゥ……ガア……』

「なっ!? ちょ、ちょっと待て……翼をしっかり動かすんだ……うおっ!?」


 明らかにスピードが落ちて来たヴェラルのワイバーンに対して、ソランジュとアレットのワイバーンが並び掛けてサイドアタックをお見舞いする。

 そのアタックによって大きく体勢を崩したヴェラルのワイバーンは、ヴェラルを乗せたままフラフラと地上に向かって落下して行く。


「くそっ……戻れ、戻るんだよっ!!」

『ガウウウッ……グウッ……』

「く……くそっ、このまま着陸するしか無い!」


 何処をどう通って来たのかも分からないまま、何処かの山の頂上へと着陸したワイバーンから飛び降りたヴェラル。

 そのヴェラルが逃げるのを阻止する為、唯一の登山道へと繋がっている道を塞ぐ形でソランジュとアレットのワイバーンが着陸した。

 だが、ヴェラルはこれで諦めて投降する様な男では無いのをソランジュもアレットも良く知っていた。

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