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859.弟子だからって油断は出来ない

 そのままお互いに何も言わずにバトルが始まる。ここまで来たらもう言葉は必要無い。

 これが最後の戦いになると二人とも思いつつ、お互いに刃を合わせて命を懸けた勝負を繰り広げる。

 だが、やはりこの男は強い。

 エルザは今まで何度もレウスに挑み、そして負けてしまった鬱憤も全てぶつけてみるのだが、そんなもので倒れるラスラットでは無い。


「どうした、その程度か?」

「うぐっ!?」


 振るわれるロングソードを避けたものの、それはフェイント。

 ラスラットの強烈なミドルキックがまともにエルザの腹に入り、後ろにゴロゴロと転がってバトルアックスも手から離れてしまった。

 ラスラットはそれをチャンスと踏み、立ち上がろうとしたエルザを素早く踏みつけてロングソードを持ち上げて突き刺す態勢に入った……その時。


「やあああっ!!」

「ぬぐっ!?」

「あが……はっ?」


 踏みつけられていた身体が軽くなるエルザ。

 踏みつけていたエルザの上から誰かに体当たりをされて吹っ飛ぶラスラット。

 窮地に陥っている仲間を間一髪で助ける事に成功した……ドリス。


「ど、ドリス!?」

「危ない危ない……間一髪ね!」

「そ、外は大丈夫なのか?」

「うん。後は残りのメンバーに任せておいてももう大丈夫よ。それよりも……」


 ドリスはラスラットに目を向ける。

 エルザとドリス、二人の視線を浴びるラスラットだが、それでも怯む気配は無い。


「さて……これでこっちは二人でそっちは一人だ」

「ふん、それで俺に勝ったつもりかよ?」

「ええ。勝ったつもりよ」


 短くそう返すドリスに対し、ラスラットは懐に左手を突っ込んだかと思えばそこからキラリと光る何かを投げて来た。


「ぬおっ!?」

「くっ!?」


 それは短剣。それもかなり正確な狙いであり、エルザとドリスの間を飛んで行った。


「だったら力尽くでもここでお前等を殺して、せっかくだから魔術の実験材料にさせて貰わなきゃな」


 二人とも実験材料にされるのだけは御免なので、数の利を活かして乗り切る事に決めた。

 ロングソードを右手で振り被りつつ二人に斬り掛かって来るラスラットだが、左手では短剣をたまに投げて来るので油断がまるで出来ない。

 恐らく彼は両利きなのだろう、とエルザもドリスも思いながら対抗するが、今まで数々の視線を潜り抜けて来たこの二人を同時相手にしても引けを取らないラスラットは、やはりかなり強いと確信した。

 これは本気で行かなければまずい。

 お互いにそう感じた二人は、数の差を活かしてとにかく手数で勝負を掛ける。

 武器を使う以外にも蹴り技も駆使し、それから投げられそうなら投げ技、組めそうなら組み技を積極的に狙って行くものの、ラスラットは苦戦する表情を見せながらもしっかり対応して来る。


「うおりゃあ!!」

「ぐえ!?」

「がはっ!」


 一瞬の隙を突いてジャンプしつつ空中で大きく開脚し、二人を同時に蹴り飛ばすラスラット。蹴られた二人が同時に仰向けに倒れ込み、ダブルベッドで一緒に眠る夫婦の如く横並びになる。

 その二人目掛けてロングソードを振り下ろすラスラットだが、そこはそれぞれがゴロゴロと素早く逆に転がって離れて回避。

 先に立ち上がったドリス目掛けて、全力ダッシュからのドロップキックでぶっ飛ばす。


「げはっ!!」


 更にエルザの身体から繰り出される速い攻撃も素早く回避し、足払いを掛けて彼女を地面に倒して再びロングソードを突き刺そうとするが、これも間一髪でエルザは回避。


「くっ、強いわね……」

「手加減なんて出来ないぞ、これは!!」


 ドリスに肩を貸してやりつつ、目の前でロングソードを構えるラスラットを見据えるエルザ。でも、ここで諦めたら終わりだ。

 二人は顔を見合わせて頷き合い、再度ラスラットに向かって行く。

 ラスラットは自分のロングソードを振るうが、それを二人は左右に分かれて回避し、ドリスがラスラットのスネを蹴る。

 そのスネ蹴りで前屈みになったラスラットのアゴに、エルザの振り上げた右足がクリーンヒット。


「ぐひゅう!?」


 後ろにぶっ飛んだラスラットに追撃を掛けようとするものの、ラスラットも口から血を流しながらも懐から短剣を二人目掛けて投げる。

 それをギリギリ回避したものの、それによって出来た隙を突かれて懐に飛び込まれ前蹴りでぶっ飛ばされるエルザ。

 エルザは後ろにある倉庫の柱に背中からぶつかり、余りの衝撃に悶え苦しむ。

 それを見てドリスがラスラットに向かって行く。


「おらああああっ!!」

「……!?」


 大きく振り被って、ハルバードで横殴りで殴りつけて来ようとするドリスを見て、ラスラットはロングソードを振るうよりも早く反射的に屈んで回避。

 それを見たエルザが力を振り絞り、ラスラットの後ろから近づく。

 ブンッと音を立てながら連続して振り回されるハルバードの二撃目を同じく屈んで避けて、三撃目を上体を反らして回避したラスラットのその後頭部を、エルザは全力で蹴り上げる。


「ぐっ!?」


 後頭部への衝撃で強制的に頭を上げられたラスラットのその側頭部に、四撃目のハルバードが今度はクリーンヒット。


「ぐえ!?」


 更に追い撃ちで五撃目も同じ場所にクリーンヒットし、ラスラットはロングソードを手から落として頭を押さえてその場で立ったままグルグルと回転。

 頭への痛みで何が何だか分からなくなっているラスラットのその腹に、先程のお返しでエルザの強烈な前蹴りが繰り出される。


「ぐあ……ああああああっ!?」


 その後ろにあったのはエレベーターシャフト。

 しかもそのエレベーターは呼び出されておらず、待っているのは地下深くまで続いている真っ暗で深い穴。

 そこにフラフラになった上にエルザの前蹴りで吹っ飛ばされたラスラットが、悲鳴とともに落ちて行った。

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