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83.宿泊場所

 騎士団長とも繋がりがあると有名なら自分の事を知っていてもおかしくはないのかな……とレウスは疑問に思うが、何だかあのエジットと言う男は危険な感じがするので、この国で情報を集められるだけ集めたらすぐに東のイーディクト帝国に向かおうと改めて決意。

 南のアイクアルに向かっても良いのだが、こうして北東側まで来てしまったからにはイーディクト帝国側に向かった方がアクセスが良いのは明白だ。

 その次の目的地を心の中で決めているレウスがアレットとエルザと共にソランジュに案内されたのは、ランダリルのメインストリートから大きく離れた住宅街の一角にある民家だった。


「え……ここって宿屋なのかしら?」

「まさか、違うよ」

「じゃあ何なんだ? まさか私達をはめようと思っているんじゃないだろうな?」

「そんな事するもんか。ここはお主達を受け入れてくれる私の知り合いが居る場所だ」

「知り合い? ああ、宿を取るって話で俺達に話していた……」

「そうそう。その時に言っただろう? 私の知り合いのサイカと言う者が宿屋で働いていると。だがその宿屋で殺人事件が起こってしまって、サイカを始めとする従業員は事情聴取とアリバイの確認をされてからそれぞれが自宅に帰されたらしいんだ。だから私がさっき騎士団の詰め所で事情聴取を受けている時、ついでに通話魔術でサイカに連絡を取ったら、お主達を泊めても良いと言ってくれてな」


 だが、三人はソランジュの事を完全に信用出来ていない。

 ハーレム状態に誘ったのは自分達ではあるが、それも彼女が無理やり押し掛けて来た事と最終的なレウスの判断で仲間に加えるって話になったからだ。

 しかもさっきのエジットと同じく、このソルイール帝国の冒険者ギルドにそれなりの期間を属して活動していた過去を持っているだけあって、どうしても足踏みしてしまう感情が出て来る。

 口ではこう言っているが、結局また何処かに誘拐されてしまうのではないか?

 しかもレウスが学院であの大きな魔術を使ったのが、さっきのエジットの発言でバレてしまった訳なのでそれについて根掘り葉掘り聞かれるのではないか?

 漠然とした不安がリーフォセリアの三人を襲うが、最終的にはこのサイカと言う知り合いの民家に世話になる事を決めた。


「でもワイバーンを使ってここまでやって来て、満足な宿に泊まっている余裕も無いし……ここは素直に甘えさせて貰わないか?」

「……うん……そうね」

「そうだな。泊めさせて貰う身で文句を言ってはいけないよな」


 正直言えば信用出来ない気持ちはあるが、せっかくの好意に対して批判的な態度を取るのはやっぱり良くないと三人は反省し、ソランジュの知り合いのこの民家に泊めて貰う事を決めたのである。


「サイカ、居るか?」

「あら、いらっしゃい。その人達が連絡にあった冒険者の人達ね?」

「そうだ。よろしく頼む。ほらお主達も挨拶、挨拶!」

「どうも……お世話になります、アレットです」

「エルザだ、よろしく」

「俺はレウスだ、よろしく。ところで今回は大変だったそうで……」

「そうなのよ。本当、誰があんな殺人をやったのかしらねえ?」


 二階建ての木造の民家の奥から現れたのは、エルザと同じく茶色の髪の毛を持っている年若い女だった。

 ただし年若いと言っても自分達よりは上だろうな、と雰囲気で分かる。

 パッチリとした大きな目に、少し面長気味の輪郭からは後ろで一本に縛った長めの茶髪が背中に向かって下がっている。

 料理をしていたからなのか、薄い水色のシャツと紫色のズボンの上に花柄の白いエプロンを着けている。

 その証拠に、家の奥の方からは焼き魚の香ばしい匂いが漂って来ている。

 だが、それよりも気になる物がレウスの目に留まった。


「そうだよな……自分の凄く身近で殺人事件が起こるなんて物騒だよな。物騒だからこれで武装しているのか?」

「え?」


 レウスが指差した先には、玄関のすぐ横の壁に引っ掛けられている装飾の施された黒いシャムシールだった。

 刀身には幾多もの傷が付いていて使い込まれた形跡のあるそれは、この民家の家主が持ち主である事を示していた。

 そう問われたサイカと言う女は、若干答えにくそうにしながらも認める。


「まあ……そりゃあね。物騒だしそれなりの護身術は身につけておかないとね。それはそうと、こんな所で立ち話もなんだから中に入ってよ。丁度ご飯作っていたから泊まる準備は出来ているわよ」

「ああ、それじゃお言葉に甘えて今日はお世話になります」


 こうして世話になる事になったレウス一行だが、タダで泊まらせる訳にはいかないのだとサイカは言う。

 この家はサイカが借家として使っているものであり、普段は宿屋に仕事に出ている為になかなか掃除や整理整頓の手が回らない。

 二階建てなのがそれに拍車を掛けているので、泊めて貰う代わりに家の掃除や料理の手伝いをして欲しいのがサイカからの条件だった。

 そうそう上手い話は無いものだが、掃除と整理整頓と料理を手伝うだけで泊めて貰えるのはラッキーではある。

 なのでサイカの指揮の下、レウス達はそれぞれ分担して作業をスタートした。

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