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856.爆破

 その警報に気が付いたのは、レウスのみならず一緒に地下にやって来たエルザとドリスもそうだった。


「なっ、何なのよこの警報!?」

「それにこの声……後五分で爆発するって話だが、それが本当ならさっさとこの地下から脱出しなければ私達まで爆発に巻き込まれてしまうぞ!!」

「そっ、それは良いんだけど……レウスは!?」

「あっ……そう言えばまだ見つかっていない!」


 レウスを追い掛けて来て地下通路の深くまで来てしまったのだが、結局レウスは見つからない。

 しかもその上にこんな警報が鳴り響き始め、今は逃げる事が先決の状況になってしまったのだが、レウスを一人残してここから逃げたくない気持ちは二人とも同じだった。

 しかし、それ以上に問題なのは……」


「ね、ねえエルザ。この地下通路の道順って言うか、出口は覚えている?」

「いいや、私も必死にこっちにレウスを追い掛けて来たから覚えていない……貴様は?」

「私も覚えていないわよ。ってか貴女、何で覚えていないのよ!?」

「ちょっと待て、貴様こそ覚えていないのか? だとしたら私の責任ばかりじゃないだろう!!」

「何よ!?」

「何だ、やるつもりか!?」


 お互いが道を覚えていない責任を押し付け始めたのだが、この口論が思わぬ幸運を呼ぶ。


「おいおいお前等、何を言い争ってるんだ?」

「あっ、レウス!?」

「貴様、無事だったのか!?」

「何とか無事だったよ。だけどこの警報が鳴り響き始めてもう既にここが大爆発する事が分かっている。さっさと出ないと命が危ないからな。口論している場合じゃないぞ!!」

「そっ、そうね。ごめんねエルザ!」

「いいや、私の方こそ言い過ぎた。すまなかった。とにかく出口を探さなければな!!」


 互いに謝罪をして仲直りをした二人は、レウスの後に続いて出入り口のエレベーターを探す事にする。

 聞こえて来た口論の大声によって二人の位置が分かったレウスは、こうしてエルザとドリスと再会した。

 しかし、その間にも無情なアナウンスによって残り時間が告げられる。


『残り三分。まだ避難していない人員は、速やかに避難して下さい』

「くそーっ、俺も出入り口を覚えていないからまずいな!!」

「誰かが道を覚えていれば良いのだが、三人とも覚えていないとなると正直言って……もう終わりじゃないのか?」

「バカっ、最後まで諦めちゃダメよエルザ!!」


 ネガティブになったエルザをドリスが奮い立たせようとするものの、確かにこの状況では諦めてしまう方が良いのかも知れない。

 しかし、その状況でもう一人の救世主が現われたのはその時だった。


「あっ、皆さん!! こちらにいらっしゃったのですね!」

「姉様!?」

「あれっ、ティーナ!? そう言えばお前何処に居たんだよ!」

「わ、私はレアナ様を追い掛けて行って途中で見失ってしまって、そしてこの通路の中で迷ってしまったんです!」


 警報の中に僅かに聞こえる、タタタッと駆け寄って来る誰かの足音。

 その正体は、あの偽レウスと遭遇した時以来行方不明になっていただけに留まらず、その後のバタバタですっかりその存在を忘れ去られていたティーナだった。

 残っていたもう一人との仲間と再会をしたのだが、ティーナにエレベーターまでの道が分からないと言う事を話すと彼女は自信たっぷりに頷いた。


「あら、それなら私が知っていますわよ」

「本当!?」

「ええ、本当よドリス。だから私について来なさい!」

「地下通路の中で道に迷ってしまった貴様が、エレベーターの所まできちんと案内出来るのか?」


 自分達も迷ってしまったので余り他人の事は言えないものの、道に迷ってしまったのだと自分から言い出したティーナがエレベーターの前まで無事に誘導出来るとは余り思えないレウス達。

 しかしこうしている間にも刻一刻と時間は過ぎて行くので、今はティーナに道案内を任せる事にした。


「ここまで来れば見覚えのある道ですから、一気に走りますわよ!!」

「あ、ああ……」


 その任されたティーナは、自信たっぷりに迷いの色を見せずに地下通路の中を駆け抜けて行く。

 地下通路爆破までの時間が刻一刻と迫る中、ティーナは何と本当にエレベーターのある場所まで三人を誘導する事に成功したのであった。


「おおっ、あれだ!!」

『爆発まで残り三十秒。最終警告。地下に残っている人員は避難して下さい』

「まだ喜ぶのは早いぞ!!」


 すぐにエレベーターを呼び出し、全員で飛び乗る。

 そして上昇を始めたエレベーターの下から、凄まじい轟音と振動が襲って来た。


「きゃっ!?」

「うおおっ!?」

「踏ん張れっ!!」


 その振動はエレベーターにまで伝わったものの、エレベーターの動きを止めるまでには至らない。

 下から徐々に上がって来る炎の熱風に身体が焼かれそうな錯覚に陥りながらも、何とか地下通路からの脱出を果たしたレウス達だったが、まだ問題が残っていた。

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