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858/875

855.最後の手段

 レアナが誰かにさらわれたかも知れない。

 その事実を確認する為に一刻も早くこのエドガーを倒し、地下から脱出しなければならないのに、エドガーも激しく抵抗する。

 それに魔術が使えない様になっているので、今は武器と体術だけで何とかするしか無い状況である。


「おらあっ!!」

「すっ!」


 エドガーの鋭い突き込みが入る。

 レウスはそれを身を捻って回避して槍を突き出すが、エドガーもバックステップで回避して再び向かって来る。

 パワーはエドガーが上、リーチの長さはレウスが上。だったら自分よりも一つでも勝っている所があれば、そこを武器にして徹底的に攻めるのみである。

 お互いにそれは分かっているものの、純粋な武器と武器の戦いならば実力はどうやら互角らしいので、なかなか決め手に欠ける。

 しかし、二人にも予想出来ない出来事が起こるのはそのすぐ後であった。


(このままじゃどっちかが力尽きるまで、この戦いは続きそうだな……)


 お互いに歴戦の戦士と言うだけあり、隙が見えないままひたすら打ち合う状態が続く。

 そのままガキン、ガキンと金属同士がぶつかり合う音が広い部屋の中に響き渡り、レアナが謎のワイバーンに連れて行かれた天井の穴から空に向かって吸い込まれて行く。

 だが、その響き渡っている金属音が変な音になった。

 ギャイイン!! と明らかな異音とともに、レウスの使っている槍が叩き切られてしまったのだ。


「げっ!?」

「ははっ、そうなっちまったら俺の勝ちだぜ!! だけど泣き言は聞かんぞ!!」

「誰が泣き言なんか言うか!!」


 と言っても、素手になった状態のままで戦うのは厳しい。

 仕方無く腰に下げている二振りのロングソードを引き抜こうとするが、それを抜かせまいとエドガーが斬り掛かる。

 レウスはそれを反射神経を駆使して回避するものの、次第に壁際へと追い詰められて行く。

 このままでは本当に追い詰められて殺されてしまうのだが、隙を与えて貰えないレウスの不利な状況は変わらない。

 しかも、更にレウスが不利になってしまう様な事がこの後に起こる。


「う、お、おおっ!?」

「うおらあっ!!」


 何と、床の至る所に散らばっていた金属の破片にレウスの足が取られてしまい、それにつまづいて滑ってしまったのだ。

 そのまま前のめりに倒れたレウスの上から、ロングソードを突き立てるべく素早く振りかぶって振り下ろすエドガー。

 しかしそれをゴロリと転がって回避したレウスは、転がる途中で手に触れた鋭利な金属片を手に取ってそのまま起き上がり、ロングソードの攻撃が無駄に終わってしまったエドガーの左の太ももにその金属片を突き立てた。


「ぐおあああああっああああ!?」

「ぬん!」

「ぐぅあっ!!」


 エドガーの黄色いズボンが見る見る内に血に染まる。

 太ももに突き立てられたままでは終わらず、そのままレウスは金属片を持つ手を引き、太ももを縦に切り裂いたのだ。

 まさかの反撃によって足を潰されてしまったエドガーだが、このままで終わるつもりは無い。

 ディルクによって回復魔術もこの部屋では使えなくなってしまっている以上、レウスの攻撃手段の大部分を封じたつもりだったのだが、それが逆に仇になってしまった。

 何処かでさっさと止血しなければまずいのだが、それよりもまずはレウスに対して反撃をするべく地面から抜けたロングソードを薙ぎ払い、レウスの腹に一撃を食らわせる。


「ぐうっ!?」


 咄嗟にバックステップで距離を取ったのだが、レウスも完璧には避け切れずにロングソードの先端が掠ってしまい痛みが走る。

 それでもエドガーの方が重傷であり、まともに歩ける様な状況には無い。


「くっそ……ざけんなよアークトゥルス!! この時代にまで俺達の邪魔をするつもりなのかよっ!?」

「だから突拍子も無い事を言い出して、俺を逆恨みするのは止めてくれ。俺だってあんたの一族がどうこうって話を聞いたのはさっきが初めてだからな。それに邪魔をするんじゃなくて、俺はエヴィル・ワンの復活を止めたいだけだ!!」

「はっ、ははは……そうかよ。だったらよぉ……くっそ、お前等も全員道連れにしてやるよ!! ディルクの奴がこんな時の為に用意していてくれて助かったぜ!!」

「え?」


 またディルク絡みの話が出て来た。それはつまり、悪い予感しかしない。

 そう考えて一瞬動きが止まってしまったレウスに対し、エドガーはロングソードを投げつけた。


「うっ!?」

(今だ!!)


 自分の横を掠めて行くロングソードを回避して隙が出来たレウスを尻目に、エドガーは自由に動く右足を精一杯動かして先程のガラス張りの容器の近くにあるコントロール用の機械に向かう。

 そして、その機械についているこれまたガラスで覆われている赤いボタンに、茶色い手袋をはめた拳を振り下ろした。

 その瞬間ビーッ、ビーッと地下通路中に今までとは別の警報と恐ろしい内容の男の声のアナウンスが鳴り響いた。


『緊急自爆装置作動、緊急自爆装置作動。地下通路は残り五分で爆発します。速やかに全員避難してください。繰り返します、緊急自爆装置作動……』

「お、おい……あんた一体何をした!?」

「この声の通りさ。ここで復活したエヴィル・ワンが暴れて手が付けられなくなった時に、地下ごと埋めてしまおうってこった。はっはっはっ……もうお前等も俺も終わりだぜ!!」

「この野郎!!」

「ぐおっ!!」


 怒りのままに、まだ持っていた金属片でレウスはエドガーの喉を突き刺して絶命させる。

 しかし、自分の命の危機はまだ去っていない。

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