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848.しつこいあの二人

「ええっ、エドガーがこの中に逃げて行った!?」

「ああそうだ。だから俺はあいつを追い掛けなけりゃならないんだが……わざわざ城の中に逃げるって事は何か理由があるんだろうな!!」

「くそっ……叔父さん、いやエドガーめえええっ!!」


 叔父さんと呼ぶのを止めて、呼び捨てに変わったエルザはレウスとドリスと一緒にエドガーを追い掛けて城の中を駆け巡る。

 しかし、彼が何処に向かったのかが分からないままこの城の中を駆け回るのは、いたずらに体力を消耗するだけであった。


「くっ……あいつは何処に行ったんだ!?」

「完全に見失ってしまったな! こうなったらまた手分けして捜すしか無いだろうな!!」

「それしか無いわね……ん?」


 その時、ドリスはふと自分の持っている通話用の魔晶石が熱を帯びている事に気が付いた。

 こんな状況で一体誰が通話をしようと言うのだと考えるドリスだが、その相手は今の彼女が一番通話をしたい相手だったのだ。


『あっ、ドリス!?』

「え……ね、姉様!?」

「お、おいそれってまさかティーナからの連絡か!?」


 まさかの相手からの通話に、ドリスのみならずレウスとエルザもその通話に注目する。

 そして相手のティーナからの連絡は、二重の意味でショックだった。


『今、エレベーターってものを使って地下世界に降りて来たエドガーを追い掛けているの!! レアナ様も一緒にいらっしゃるわ!!』

「ど、どう言う事よ姉様!?」

『そう言う事よ!! とにかく何かを企んでいるのは確かみたいだから、私はレアナ様と一緒にエドガーを追い掛けるわ!!』

「え、あ、ちょっと姉様!?」


 そう言い残して通話が終わってしまった。

 残された三人は、何がどうなっているのか良く分からないもののとにかく地下に行けば何かが分かるのだと確信する。


「とにかくそのエレベーターってのを探して、俺達も地下に向かおう!!」

「勿論だ。とにかく何処かで騎士団員や魔術師と戦って、その連中を締め上げて地下への道を見つけ出すぞ!!」

「了解よ!!」


 そして地下に向かうべく、一階に降りようとしていた三人の目の前に現われた増援集団を軽く蹴散らし、その中の何人かを殺さずに締め上げてエレベーターの場所を吐かせる。

 ティーナがエドガーを追っているのは分かるのだが、レアナまで一緒に居るとなると彼女がやられてしまってはまずい。

 なのでとにかく全力疾走でエレベーターに飛び乗った三人は、エドガーの居る場所を目指して走り始めた。

 しかし、そんな三人の行く手を阻む者がまたもや現われたのだ。


「へ、へへっへ……ここから先には行かせねえぞ!!」

「お、お前等は!?」

「ねえねえ、そんな病み上がりの身体で大丈夫なの?」

「ちょっと動きが鈍いが、私の懸命な治療で何とか動ける様になった。だからこそ、ここで君達には死んで貰うぞ!」

「それは無理な話だな。そっちこそ私達を通してくれないか……ライマンドにドミンゴ!!」


 今まで散々自分達を邪魔して、そして何回も負けているのにまだ懲りないのだろうか。

 騎士団の期待の若手であるライマンドと、カシュラーゼの魔術師の中でも一際腕の立つドミンゴがこの地下通路の中で立ち塞がった。

 しかし病み上がりのライマンドは、ちょっと足がフラフラしながらも大きな金属の筒を肩に担いだ。

 そしてそんなライマンドに重そうなそれを担がせているドミンゴは、この通路の幅を計算して右手をゆっくりと上げて振り下ろした。


「……やれ」

「ぶっ飛べえええええっ!!」


 その手が振り下ろされると同時に、レウス達三人に向かって筒の先端から特大のエネルギーボールが撃ち出される。

 しかもかなりのスピードで三人に迫っているだけあって、ここから振り返って駆け出してもエネルギーボールに追い付かれて逃げるのが間に合わないだろう。

 そう考えていたライマンドとドミンゴだったのだが、もしかしたら反撃されるかも知れないとも思っていた。

 あの勇者アークトゥルスの事である。きっとまた、あの凄い魔術を使って来るに違いない。

 そう考えていた二人の視線の先で、ドォンと音がして通路が爆発した。


「……どうだ、やったか!?」

「いいや、最後まで油断は出来ないぞ」


 ライマンドとドミンゴはその場から動かず、あの三人の気配を確認して脅威が去ったと確信出来るまでは武器を下ろす訳にはいかなかった。

 だが、一向に向こうからのアクションが何も無い。

 そのまま十秒か、二十秒か、それとも三十秒か。分からない位の時間が経った時、完全に煙が晴れた通路の向こう側には一人の男が立っていた。

 それがレウスだと確信するのに時間は掛からなかったのだが、この時ライマンドもドミンゴも重要な事を失念していた。


「……くっ、しぶとい野郎だぜ!!」

「だったらもう一発撃ってやれ」

「言われなくても分かってらぁ!!」


 そんなやり取りをしながら再びランチャーを構えて発射準備に入るライマンドだが、それを見たレウスは二人に聞こえる位の声量で一言呟いた。


「もう遅いぞ」

「ん?」

「何だ……ぶほっ!?」


 その声に気を取られたライマンドとドミンゴが、自分達の後ろから投げ付けられた魔晶石の爆弾に気付く事が無いままに吹っ飛ばされた。

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