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82.ギルドの期待の若手

 しかし、それを聞いてもレウスは「へぇ~……」と気の抜けたリアクションしか出来ない。

 今はこの街に着いて早々に殺人事件が起きた事や、その殺人事件の被害者がソランジュの知り合いだった関係でこうして騎士団の詰め所まで来た事で頭の中の整理が追いつかないからだ。

 ただでさえワイバーンに長時間またがって疲れているのに、更に疲れる事をこれ以上したくない。

 だが、ギルドの期待の若手と呼ばれているエジットの方はどうやらレウス達の事を知っているらしい。


「もしかしてその黒いコートの制服……隣のリーフォセリア王国にあるマウデル騎士学院の制服じゃないのか?」

「え、あ、いや……」

「知ってるよ俺。その制服はリーフォセリアに行った時に見た事あるからな。それを着込んでいるってのはその騎士学院の学生」

「えっ? お主達はリーフォセリアの方からやって来たのか?」

「そうじゃなきゃこの制服を着ている説明がつかないだろう。それに茶髪のあんたは俺知ってるよ。マウデル騎士学院の主席のエルザだろ?」


 何て事だ。今までそれなりにソランジュを騙せていたのに全てがこのエジットのせいで台無しになってしまった。

 自分達が騎士学院の生徒だと知られたら色々ややこしい事になるので、ここまで身分を隠しつつやって来たのに余計な事をしてくれたものである。

 そんなレウス達三人の気持ちを知る由も無いエジットは、ソランジュに向かって更にペラペラと話を続ける。


「この街で殺人事件が起こったのは痛ましいが、この三人が通っているマウデル騎士学院でも爆破事件があったんだよ。それも数日前にだ」

「爆破事件?」

「ああ。その騎士学院には何か重大な秘密が隠されているってのを聞いた事があるんだが、それを狙ったからなのか学院が爆破されたって冒険者仲間達の間ではもちきりなんだよ。おかげでマウデル騎士学院は休校せざるを得なくなったって話なんだけど、もしかしてそれ関係でこの三人はここまで来たんじゃないのかな?」

「まあ……そんな所だ」


 ここまで喋られてしまっては隠す事が出来ないので、必要最低限の受け答えを心掛けつつエルザが返答する。

 だが、今まで真実を隠されていたと知ったソランジュの興味は尽きない。


「もしかして、エジットさんはレウス達について他にもまだ知っている事があったりするんですか?」

「んー、そうだなあ……例えばこのレウスってのが、物凄い魔術を使っていたってのも聞いた事があるんだよ。それも学院の中でさ」

「……何でそれを知っているんだ?」


 おかしい。

 学院の生徒ならともかく、このソルイール帝国の中で活動している冒険者のエジットが何故その話を知っているのだろうか?

 そこまで情報が流出しているのは不自然じゃないかと考えるレウスだが、エジットはそのレウスの反応にキョトンとした顔になった。


「えっ、そうなの? 俺カマ掛けたんだけど……」

「はあ?」

「いやー何かさー、マウデル騎士学院にドラゴンが現れたって噂になってたんだよ。カシュラーゼの方から逃げて来ていたって噂のある生物兵器だっけ? そういう情報はかなり出回るのが速いんだよ。それを学院の中で撃退したって学生が居るって話だったんだけど、それってお前だったのか! へえ……お前が噂の冒険者、レウス・アーヴィンか」


 もう全てがメチャクチャになってしまったので、レウスは他の三人に外に出る様に促して帰り支度を始める。


「おい、何処に行くつもりだ? まだ俺の話は終わってないぞ?」

「ちょっと用事を思い出したんでね……それに今日はもう遅いから、またいずれ別の日に話が出来ればと思う」

「ふーん、ああそう……」

「おい、行くぞ。ソランジュは何処か別の宿に案内してくれないか」

「あ、ああ……分かった」


 本心ではこれ以上このエジットに関わるとロクな事にならなさそうなので、さっさとこのソルイール帝国から出て行きたい気持ちでいっぱいになってしまった。

 そのレウスの態度を見て、エジットは納得した様子で腕を組みながら壁にもたれ掛かった。


「なあソランジュ、あのエジットって男はどんな人間なんだ? 期待の若手ってのは分かったが、余りにも人の事情に首を突っ込み過ぎじゃないか? それだけの情報網を持てる人間だって事なのか?」


 そんな彼の方をもう二度と見る事が無いまま外に出たレウスは、ソランジュに道案内をして貰いながらあのエジットという男がどんな人間なのかをなるべく詳しく教えて貰う。


「そうだな。かなりの腕利きだ。公式情報は割と耳に入って来るから分かる。年齢は二十二歳。ソルイール帝国の未来を担って行くって噂の期待の若手。その関係でソルイール帝国騎士団にも色々と顔が広いが、プライドが高いのが欠点だとも言われている。今ああして目の前で見た通りのロングバトルアックスを豪快に扱う上に、帝国騎士団長以上の実力を持つとも言われている魔術の使い手なんだ。見た感じは細身に見えるが、脱ぐと凄い肉体を持っているって噂だから力負けする可能性もあるかも知れないな。ただでさえ身長は向こうの方が高いんだし……」

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