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81.殺人事件と顔見知り

 ワイバーンでの空の旅を特に何事も無く終え、一行はソルイール帝国の帝都ランダリルに辿り着いた。

 これが朝とか昼間であれば観光で色々と見回る事が出来たのかと思うが、あいにく今は既に日が沈んでしまったので、帝都の出入り口で簡単な手続きをしてから街の中に入る。


「あー、尻が痛い……やっぱり久々にワイバーンに乗ると身体が慣れないもんだな」

「うう……痔になっちゃいそう」

「私もだよ。その点、貴様はなんて事は無さそうだな」

「まあ、これでもお主達をワイバーンの空の旅に誘った人間だからな。ところで、まずは宿を確保するのが先じゃないか?」

「そうだな。と言っても俺達はここに来るのは初めてだから、何処かオススメの宿があるのなら教えてくれ。金と相談して行けそうならそこにしよう」


 ワイバーンのレンタル費用で、一食分の生活費にも事欠きそうな現状では野宿も覚悟していた一行だったが、ソランジュにはどうやらアテがあるらしい。


「そうだな、それなら私の知り合いのサイカってのが働いている宿に案内しよう。このソルイール帝国で知り合って意気投合したから、色々と事情を話せば安く泊めて貰えるかも知れない」

「えっ、本当に?」

「ああ。彼女がまだそこに居ればの話だがな。ランダリルに来た時は何時も泊めて貰っていたんだが、最後に泊まったのが去年の春頃だからな」

「何だよそれ……余り期待はしないでおこう」


 そんな昔の話なのかよ、とエルザが明らかに落胆する一方で、ソランジュは三人を引き連れてその宿へと足を運び始めた。


 しかし、その宿へと向かってみると何やら様子がおかしい。

 宿の周りには何故か数人の騎士団員がピリピリしたムードで立っており、この時間帯には宿の一階にある酒場が宿泊客でそれなりに賑わっている声が外まで聞こえて来る筈なのに、今は声がしないのだ。


 その異変に気が付いたソランジュの足が宿の手前で止まる。

 そしてこの後、一行はまたもやとんでもない事態に遭遇してしまうのだった!


「む……様子が変だな?」

「どうしたんだ?」

「何だか何時もと様子が違うんだよ。ちょっとそこの騎士団の方、ここで何かあったのか?」

「ああちょっと、近づかないで。今はこの宿は立ち入り禁止なんだ。今日の朝方に殺人事件が起きたばっかりなんだよ!」

「へっ、殺人事件!?」


 どうやら相当まずい場面に出くわしてしまったらしいので、面倒事は避けたいと退散しかけるレウス。

 しかし彼の意思とは裏腹に、ここで働いている知り合いが居ると言っていたソランジュは更に騎士団員に事情を聞き始めた。


「えっ、まさかその殺されたのって、私の知り合いのサイカって女じゃないだろうな!?」

「サイカ……いや、違うよ。この宿に泊まっていたお客さんで、名前は言えないけど美術商人の人が殺されたんだ」

「な……何だって!?」


 何と、殺されたのはソランジュの知り合い違いらしい。

 そのベルフォルテの美術商人と聞いて、一行には思い当たる節があったからすぐに分かった。


「ちょ、ちょっとそれってもしかして、南にある港町ベルフォルテの人じゃないの!?」

「ああ。ベルフォルテの一角にある屋敷で美術商人をやっていた証拠が所持品から判明しているんだけど……君達はその殺された美術商人の知り合いなの?」

「あ、ああ……そうなんだ」

「なら騎士団の詰め所まで一緒に来て貰えるかな。色々と話を聞かせて欲しいんだ」


 ほーら、また面倒な事に巻き込まれてしまった。

 どうしてこうも行く先々でこうして事件に巻き込まれてしまうのだろうか。

 騎士学院に入学してから自分の運気がどんどん悪い方向に向かっているんじゃないかと考えつつ、レウスは他の三人と一緒に騎士団の詰め所まで向かう事になった。

 だが、そこで更に思い掛けない人物と出会う展開が彼を待っていたのである。



 ◇




「へえ……お前が噂の冒険者、レウス・アーヴィンか」


 騎士団の詰め所までやって来た一行は、ソランジュの「元」ご主人様が殺されたと確認を取ってすぐに帰ろうとした。

 だが、その詰め所に居た一人の男にレウスが呼び止められたのだ。

 ちょっと長めの銀髪に青い瞳、黄緑色の上着を着込んでいる冒険者風の格好をしている男。

 自分と全く面識の無い、初対面のこの男に何故自分が呼び止められたのだろうと不思議に思うレウスだったが、一行の中にこの男と面識がある人物が一人居たのだ。


「あ、貴方はエジットさん……!?」

「えっ、この人とソランジュって知り合いなの?」


 取り調べ室でご主人様関係の事情聴取が終わって、レウス達の待っている廊下に出て来たソランジュが、レウスと会話をしているその男を見て驚きの表情になった。

 彼女のただならぬ雰囲気を察したアレットが聞いてみると、やや興奮気味にソランジュはこのエジットと言う男の素性を話し始める。


「知り合いって程では無い。だが、前にちょっとだけ話しただろう……このソルイール帝国のギルドを中心に活動している冒険者のほぼ全員や、帝国騎士団の団長セレイザ様にまで顔と名前が知られている期待の若手の冒険者。それがこの方、エジット・テオ・ピエルネさんだ!」

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