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831.受け渡し当日

『なぁ……それってあれじゃねえの? アークトゥルスの墓から漏れ出したって言っていた、魔力が原因なんじゃねえの?』

「えっ?」

「あー……あったわね、そんな話」


 呆気に取られるドゥドゥカスと、随分懐かしい話をするもんだと苦笑いを浮かべるアレット。

 彼がこう思う理由は、当時エヴィル・ワンを倒した一行のメンバーがそれぞれ身体の欠片を証拠として持って帰ると言う、とんでもない事を仕出かした事から始まる。

 だが、残ったアークトゥルスの身体はその場に放置されたか朽ち果てたかは分からないが、結局あのエスヴァリーク帝国のアークトゥルスの墓から漏れ出してリーフォセリア王国まで辿り着いたと言う魔力に引っ張られて、その結果この城の庭の片隅で見つかったと言う話になるんじゃないか、と言うのがペーテル改めこの世界の神であるエンヴィルークの見解であった。


「でも、俺達にそれを言われても俺はその殺された張本人だから分からないし……みんなは知ってるか……?」


 レウスは恐る恐ると言った表情と口調で、ドゥドゥカスの執務室に集まったメンバーに聞いてみるものの、やはり返って来る答えは無言か首を横に振るものだけであった。


「……ま、つまりこの場所でそのエヴィル・ワンの身体の欠片が見つかったって事で話を進めよう。何時までもここにこだわっていてもそれこそ話が纏まらないからな」

「そうだね。とにかく今までの経緯の事はもうどうでも良いから、とりあえずこの先の事を考えなきゃ。で……明後日の昼の鐘が取り引きの合図だったね。それまでにどうにかしてエヴィル・ワンの身体の欠片をどうやって運ぶかを考えなきゃ」

『そうだな。とりあえず俺様の方からアンフェレイアに話をして、それから輸送手段を考えようじゃねえか。俺様達が持っている身体の欠片はルルトゼルの村にもある訳だしな』


 別にバカ正直に持って行かなくても良いと思うが、向こうも把握しているだけの分を持って来ていないと分かったら本当にティーナに何をされるか分からない。

 しかし、レウス達もただでこのまま向こうの思い通りに動かされる訳にはいかないと思っている。


「なぁ……エンヴィルーク、あんたは確かテレパシーが使えるよな?」

『ん? ああ』

「だったらカシュラーゼのレアナ女王に連絡を取れないか? そもそもレアナ女王はあんたからテレパシーで連絡を貰って、そして俺達にテレパシーで連絡して来たんだから出来るだろ?」

『連絡をするのは良いけど、一体何をするつもりなんだ?』


 もしかして城の内部構造でも把握するつもりなのか? と考えているエンヴィルークだが、レウスはそれ以上の事を考えていた。


「いやあ……エヴィル・ワンの身体の欠片以外にも色々と手土産を持って行ってやろうと思ってさ」

『手土産?』

「ああ。それもとんでもなく豪勢な物を持って行くつもりだ。それにはここに居るみんなの協力もそうだし、ルルトゼルの村の村人達にも協力して貰わなければならないけど」


 それから万が一の場合に備えてバックアップもしっかりと取っておくつもりである。

 こうして始まった取り引きへの準備を急ピッチで終えた一行は、二日後の昼に向けて動き出す。



 ◇



 それから二日後の約束の日。

 魔術王国カシュラーゼのディルク達は、取り引き前の報告会を開いていた。


「例の女はどうしてるの?」

「はっ、見張りをつけてきちんと幽閉をしておりますのでご安心を」

「なら良いけど。それからライマンドは生きてるの?」

「生きているには生きてますけど、でもまだ前線に立てる状態では無いですね。あの爆発から生き残っただけでも奇跡みたいなものですよ」


 ヴァーンイレスに向かったライマンドは、砲台の最終メンテナンス中にあのアークトゥルスの仲間達の襲撃を受けた。

 そして敗北してしまった上に、魔晶石の爆弾によって砲台まで破壊されてしまった。

 ライマンド自身は爆発からギリギリ逃れたものの、流石にその分の怪我も大きくて現在は魔術による回復を続けながら、地下の世界の病院にあるベッドで寝たきりの状態になっている。


「そうだねえ。とりあえず君も頼りにしてるんだからね、ドミンゴ」

「はっ」

「それから君もだよ、ラスラット。とりあえず取り引きの条件は向こうに提示してあるんでしょ?」


 ドミンゴと一緒に報告にやって来ていたディルクの弟子、ラスラット。

 彼はその条件を事前にディルクと相談して決めた上で、向こうに提示してあるのだとキチンと伝えた。


「勿論です。でも、向こうがその条件を素直に呑むと思えねーんですけど……」

「僕だって同じ気持ちだね。必ず向こうは何かを仕出かして来ると思う。仲間を連れて来る様な事があればその場で取り引きはすぐに中止だからね」

「ええ、分かってますよ」


 かなりきつい条件だが、もし本当にバカ正直に条件を呑んだらこれ以上のカモは無い。

 そもそも取り引きの条件を満たしたからって、あの女を返すつもりはさらさら無いのだから。


「……さて、そろそろあの昼の鐘が鳴る時間だよ。外に出て様子を見に行こうか」


 そう言いつつ立ち上がったディルクだったが、城の中にその瞬間いきなり大きな警報が鳴り響いた!!

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