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826.意外な通信

「あれがそうだ」

「あれか……」


 ギルベルトが指差す先を見て、レウスも納得して頷く。

 そこにはあのエレデラム公国や、アイクアル王国のレイベルク山脈の頂上で破壊した砲台と同じ物が鎮座していたからである。

 そしてそれは、方角からするとまっすぐ王都のカルヴィスに着弾する様に向けられているらしい。

 あれをそのまま放っておけば、カルヴィスがシルヴェン王国の王都シロッコやルルトゼルの村の様になってしまう事になりかねないので、さっさと破壊してしまう事を決める。


「これだけの戦力を集めて来たんだし、あの砲台を護っている連中もカシュラーゼの奴等なんだろうが見ての通り数が少ないし、さっさとやっちまおうぜ」

「ああ、そうだな」


 結論から言えば、砲台はすぐに破壊される運命にあった。

 ギルベルトの言う通り、カシュラーゼ王国騎士団の団員だけではなくてこのリーフォセリアの中に駐屯しているエスヴァリーク帝国騎士団の団員達まで協力してくれているので、勝負は五分もあれば終わってしまったのだ。


「何だか呆気無かったな」

「それで良いじゃないか。それでだ、後はこの砲台を破壊する為に魔晶石をあの砲台の周りにセットして……それで終わりだ」


 そのレウスの指示通りにカシュラーゼとエスヴァリークの連合軍が魔晶石をセットし、そして爆破する。

 森の中と言う事で、万が一爆発した際の延焼に備えて魔術師達も待機している。

 なのでもう心配は無いだろうと考えていたレウスの元に、誰かから魔術通信が入ったのはその時だった。


「……はい?」

『私だ、クリスピンだ』

「あ……ルリスウェン公国の騎士団長? 一体どうしたんだ? 何か問題でも起こったのか?」


 もしそうならすぐにそっちに向かえる状態だけど……と返答するレウスだが、クリスピンからの話は違うものであった。


『いいや、そうじゃない。実はこちらの砲台が設置されている砂漠の地下にだな……』

「え?」


 あの流砂の地下に存在していた、増援を呼ぶ為の地下空間の存在を知らされて通話が終了するレウス。

 それをギルベルトに話した所、彼は自分の部下達とエスヴァリーク帝国騎士団の団員達に念の為に砲台の周辺を調べる様に命じた。

 何も無ければそれで良い。

 最終的には世界各国のこの砲台に対して、魔力エネルギーを供給している元を絶たなければならないのでカシュラーゼに乗り込む予定なのだから。

 そう考えているレウスの元に、再び誰かから通信が入った。

 しかしその通話の相手は、レウスが全く予想していない相手からだったのである。


「……はい?」

『よう……元気にしているかな?』

「は? 誰だ?」

『誰だとは失礼だな。俺だよ、ディルクの弟子のラスラットだよ』

「な……何だと!?」


 通話の相手は、自分と因縁のある相手の内の一人であるラスラット。


 何故彼に対して自分の連絡先を教えていないのにも関わらず、彼が自分と通話をする事が出来ているんだ?

 いや、それより何より自分に対して何を伝える為にこうやってわざわざ連絡をして来たんだ?

 いきなりの事で頭の中が混乱してパニック状態になっているレウスの様子を魔晶石越しに見抜いたらしく、嫌らしい笑い声を皮切りにしてラスラットが通話の目的を話し始めた。


『ふふふ……どうして俺があんたに通話出来てるんだって思ってんだろ。理由は簡単だ。あんたの仲間を捕まえて人質にしてある』

「ひ、人質だと!? 誰を人質にしたんだ?」

『ふふふ、さて……誰だろうな。それはあんた達が全員合流すれば分かるこったろうよ』

「ふざけるな!! お前、俺の仲間に何か危害を加えたら俺が黙っちゃいないからな!!」


 しかし、魔晶石の向こう側のラスラットは半笑いで返答する。


『はははっ、今まで散々こっちの俺とその仲間達に危害を加えておいてその言い分は無いだろうよ』

「何を言っているんだお前は」

『まあ良いさ。とりあえずお前達の仲間が全員集まれる様にリーフォセリアのドゥドゥカスの元に向かえ。そこで誰が足りないのかが分かる筈だからな。そして俺からの連絡を待て。俺達だってせっかく手に入れた交渉の材料を無駄にしたくねえから、それまでは危害を加えねえでおいてやっからよ。ひゃっははは!!』

「お、おい……待て、ふざけるな!! ふざっ……くそ、切りやがった!!」


 怒りから、思わずその魔晶石を地面に向かって叩きつけるレウス。

 単なるハッタリなのかも知れないが、もしそれが本当だったらパーティーメンバーの内の誰かがカシュラーゼ側に人質に取られてしまったと言う事になる。

 とにかく緊急事態なので、レウスはギルベルトにこの事を話してカルヴィスに居るドゥドゥカスの元へと戻る事を決めた。


「ラスラットがそんな事を言っていたのか?」

「そうなんだ。嘘か本当かは分からないが、もし本当だったらかなりやばいからな。しかもドゥドゥカス陛下の事まで言っていたから、最終的に陛下にまで危害を加えないとも限らないぞ!」

「そうだな……分かった。それじゃあここの調査は俺の部下とエスヴァリークの連中に任せて、急いで戻るとしよう!」

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