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824.帰って来たリーフォセリア王国

 思えば、このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界中を旅する切っ掛けになったのはここからだった。

 自分が旅立ったヴァレリアと言う名前の田舎町から始まったこの旅は、結果的に世界を一周してここに帰って来たのだ。

 そして今のレウスはこのヴァレリアの田舎町にある、無人となっている自分の家の中に居た。

 何故なら、このヴァレリアの町から少し離れた場所にリーフォセリアの砲台があるとの話をドゥドゥカスから受けたからなのだ。

 レウスが最初に向かったのは勿論、このリーフォセリアの王都カルヴィス。そこでまずはドゥドゥカスに帰還報告をした後に、騎士団長のギルベルトとともに砲台を破壊しに向かう予定だったのだが、ここで思わぬ援軍が。


「えっ、エスヴァリークの駐屯している騎士団の人達も一緒に行ってくれるのか?」

「ああ。僕の元に連絡があってね。エスヴァリークにも仕掛けられている砲台がここにもあるんだったら、こっちのエスヴァリーク軍にも砲撃が仕掛けられないとも限らないからって」

「あっ、こっちの国の安否を考えている訳じゃないんですね……」


 呆れから思わず敬語になってしまうレウス。

 しかし、エスヴァリーク帝国軍がレウスに協力してくれる理由はそれ以外にもあるらしい。それはこの旅の中で、最初にエスヴァリーク帝国に向かって武術大会に参加した経験によるものであった。


「だけどね、君に協力してくれるのは武術大会の優勝者でもあるからなんだよ」

「あ……ああ、武術大会の。そう言えばそうだな。それは確かに俺がセバクターを破って優勝したのは覚えてるけど、それも協力理由になるのか?」

「らしいよ。君は武術大会の優勝者だ。だからこそ君に協力したいらしい。エスヴァリークの武術大会はこの世界で最も実力のある戦士達が集まる大会だと言う事を君は知っているかな?」

「えっ、そうだったのか!?」

「……その様子だとどうやら知らないみたいだね。とりあえず、君が制覇した武術大会はこの世界でも屈指の実力のある者だけが上に上がって行ける。だからこそ、その優勝者はエスヴァリーク帝国の英雄扱いだ」

「そうだったのか……」


 ちなみに、レウスに負けはしたものの二位になったセバクターも同じくエスヴァリークの英雄として認められているらしいのだが、彼は今エスヴァリークの砲台を壊しに行っている筈なので、ここはレウスに協力したいと申し出てくれたと言う事だった。

 勿論ギルベルトやリーフォセリア王国騎士団の団員達も一緒に来てくれるとの話なので、砲台を壊すと言う目的のメンバー数としては多過ぎる位かも知れない。

 ただし、ドゥドゥカスからはもう一つ別件でレウスに頼みたい事があるらしい。


「ああそうだ、それとは別なんだがな……あの君が今の人生の中で生まれ育った、ヴァレリアって田舎町があるだろう?」

「ヴァレリア? ああ、そこなら俺の地元だけどそれがどうかしたのか?」

「今回のカシュラーゼの件で、君の両親とマウデル騎士学院のエドガーが裏切っただろう? その件について君に調査を依頼したい」

「調査?」

「そうだよ。騎士学院の方は既に学院全体を調べ終わっている上に、エドガーが処分を忘れていたと思わしきカシュラーゼとの繋がりを示す書類も入手した。だが、そっちのヴァレリアの方はまだ調べられていないんだ。つい最近まで、ゴーシュとファラリアの二人はこちらの味方として僕達を騙し続けていたんだからな」

「いや、それって気付かないのか?」

「ん?」


 思わず本音がポロッと漏れてしまうレウス。

 自分達がこうして世界一周するだけの時間があったのに、あの二人の裏切りには気付かなかったのかと問いたくて仕方が無かった。

 それに対してドゥドゥカスは、それについては自分達の迂闊さもあったと述べ始める。

「それについては申し訳ないのだが、気が付かなかった。さっきも言った通り、僕達に対してつい最近まで普通に接して来ていたからな。だからあの二人が裏切ったと知った時は驚いたんだ」

「ああ……そうですか」


 レウスは思わず呆れてしまった上に、これ以上この話で時間を無駄にしたくなかった。

 普通だったら何かしらの怪しい動きをしていれば気が付く筈なのだが、今まで気が付かなかったと言うのは余程あの二人の演技が上手かったからなのか、それとも単純にこの目の前に居るドゥドゥカスが騙されやすかっただけなのか。

 いずれにしても、今の段階で騙されていたと分かった以上ドゥドゥカスはレウスに自分の生家を調べて来る様に命じた。


『実はだな、サィードが言うにはアーヴィン商会って所のゴーシュとファラリアって夫婦が、最近この国に対して書類でアプローチをしたんだってさ』

『しょ……書類?』


 エレデラム公国で、結局カシュラーゼのスパイだったコルネールとアーシアが言っていたこの話。

 それからそのエレデラム公国の大公であるラグリスが言っていた話。


『だが、この書類に書いてある事が本当だったらそなた達を見過ごす訳には行かないな』

『書類の内容が分からない事には何とも言えないんですけど、俺達が悪さを企んでいるって話でしたよね? それって何なんです?』

『それはだな、まず……そなた達がこの世界において大砲による砲撃を企てているって話だ』

『た……大砲による砲撃って……それってもしかして、あの……』

『あれ……ちょっと待って下さい大公。さっき『まず』っておっしゃいましたよね? それってまだ私達が他にも何かを企んでいるって事になりませんか?』

『ああ、そうだ。もう一つの容疑だが、このエレデラム公国の中で麻薬を流行らせようとしているらしいな。アーヴィン商会のゴーシュとファラリアから、自分の息子が麻薬の原料になる薬草を大量に奪い去って逃げているとの情報がもたらされている』

『いやいやいやいや、おかしいですよねそんなの。何でそんな俺達が麻薬なんか……』

『そうは言われてもな。聞いた話によれば、そなた達はカシュラーゼと繋がりがあるマウデル騎士学院の学院長や名うての傭兵と深い知り合いらしいな。そもそもそんな制服を着込んで今もこうして旅をしているそなた達が、絶対にカシュラーゼと繋がりが無いとは言い切れまい?』

『そんな……』


 この二つの報告が出たのがエレデラム公国の話だったので、それから余り時間が経っていない事を考えると、確かに気が付かないのも無理は無いのかも知れない……とレウスは心の中で諦めてしまった。

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