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823.神の前に立ち塞がるもの

 流砂の中に飛び込んだペーテルは、そのまま地中へと落ちて着地に成功。

 流砂の下は空洞になっており、やはり流砂に見せ掛けた秘密の何かがある様だ。


『これは……』


 その秘密の何かの内、一つ目がまずクリスピンの言っていた「金属の塊」の正体。

 地下部分に大きな金属製の機械を設置して、それを使って地中から魔力を吸い出してさっきの魔力エネルギー弾を撃ち出せる様にしていたらしい。

 今は既にさっきの爆発によって壊れてしまっているのでもう大丈夫なのだが、他の砲台にも同じシステムがあるのだろう。

 恐らく、これが出発する前に話に聞いていたカシュラーゼからの魔力供給システムでもあるらしい。

 ルリスウェンの地中から魔力を吸い出した上に、カシュラーゼからの魔力供給があるとなればそのエネルギーを何時までも溜め続ける事が出来る。

 人間や獣人がこれだけのテクノロジーを生み出せる様になっていたとは……と、ペーテルも驚きを隠せない。

 それに周辺の流砂は全てこの地下に続く様になっているらしく、それぞれ違う流砂の奥で太陽の光が金属部分に反射していた理由も分かった。

 更に万が一流砂に呑み込まれても、地下に落ちてしまえばしっかり着地して地上に戻って来られるので、まさに流砂と言うトラップの先入観を利用してここの関係者しか近づきたがらない様にしていた巧妙な砲台製造計画だった様だ。


【けど、気になるのはあれもそうなんだよな】


 ペーテルが目を向けるその先。

 そこにはこの地下に造られている石の壁に描かれている大きな魔法陣。

 あれは一体何なのかと思っていると、次の瞬間その魔法陣の中からズズズ……と言う音とともに多数の武装した兵士達や魔術師達が姿を現わしたのだ!


【まさかこれは……転送陣か!!】


 周囲を良く見てみれば、さっき自分が飛び込んで滑り落ちて来た流砂の近くに地上に繋がる簡素な階段が作られている。

 となれば急ピッチで作ったにしてはかなり用意周到らしいこの砲台システムだが、転送元は間違い無くカシュラーゼだろうと考えるペーテル。

 なのでまずは、エンヴィルークとしてその出て来たカシュラーゼの武装集団を魔術を使って一気に焼き尽くす。

 攻撃と破壊のドラゴンの本性がここで現われ、何人掛かって来てもものともしないのはやはり彼が神であるからだろう。


『ふう……まぁ、こんなもんだろーな』


 足元に転がる数々の焼死体、それから肉の焼け焦げる臭いが充満する流砂の下でそう呟いたペーテルが次にする事は、まだ次の増援が出て来る前にこの魔法陣を消滅させる事だった。

 魔法陣は魔力を使って壁や床に描くものであり、魔力が切れればその魔法陣は消えてしまう様になっている。

 つまり魔法陣を書いても放っておけば普通は消えてしまうのだが、この魔法陣は普通のものと違って消すのには少々手間が掛かる。

 それもその筈で、この魔法陣はこの上で爆破された砲台と同じ様にカシュラーゼとこのルリスウェンから魔力を吸収しているが故に、何時まで経っても消える事が無いらしい。

 そこでペーテルが考えたのは、この魔法陣を破壊してしまえば増援も止まる筈だと言う作戦であった。


【しかしなあ……この魔法陣を壊すって言ってもどーすりゃ良いんだろうな】


 自分で考えた作戦なのに、その手立てが見つからない。

 このままではまた増援が出て来てしまうので、その前に何とかしなければとこの地下を見渡してみて彼が出した結論は「ここを埋めてしまえば良い」だった。

 魔法陣の魔力を吸い取ってしまえるならそれで魔法陣が消えるのだが、そうなるとこの世界の魔力を全て吸い尽くさなければならないかも知れない。

 それは魔力で成り立っているこの世界の崩壊を招いてしまう事になるので、それを避けるべくせっかくこの砂漠と言う条件があるのだから砂を使ってこの地下を埋めてしまえば良いとの結論が出た。

 だったらすぐに行動だと決断したペーテルは、まず階段を上がって地上に出た後にその階段を叩き壊す。

 これで増援部隊が地上に出る為の手段を絶った後、今度は地上に居るクリスピンにも手伝って貰って周囲の砂をとにかく下に落として貰う。


「証拠になるかも知れないのに、本当に埋めてしまって良いんですか!?」

『俺様だって本当は地下を残しておきてえけど、増援が来るんだったら埋めちまわねえとまた砲台が造られちまうぜ!!』


 既に仲間達に連絡をしたのに、ここに来て埋めてしまうと言う決断をしたペーテルに対して勿体無い気持ちで一杯のクリスピンだったが、ここで効率的に砂で埋められる方法を思いついた。


「そうだ……エンヴィルーク様、ここの流砂を爆破しましょう!」

『爆破?』

「はい! まだ魔晶石の爆弾は残っていますし、周囲の砂を爆破して一気に砂を地下に落とすんです!」

『あー、その手があったか。それじゃやってくれや。俺様は引き続き他の流砂から砂を落として行くからよお』


 ペーテルの姿から元に戻り、その巨体を利用して砂を押して落としていたエンヴィルークが了解を示す。

 その了解によってそれぞれの流砂の周囲に残っている魔晶石爆弾を設置し終え、十分に距離をとって爆破したクリスピン。

 結果、砲台の周囲で多数の爆発が起こって地下空間の土台も一気に崩れ去り、砲台とともに地下空間が轟音を立てて埋まって行ったのだった。

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