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822.流砂の中の光

『これで全部か?』

「そうですね。周りにもう敵の気配はありませんから、いよいよ後はこの砲台と大砲を爆破するだけです」


 敵を殲滅して増援の可能性が無い事を確認したクリスピンは、エンヴィルークが見守る前でその砲台の周囲に分けて貰った魔晶石を置いて行き、それから一気に離れる。

 しかしこの砂漠の状況、それもまた別の流砂に呑み込まれるかも知れない状況の中では上手く動けるかどうかが分からないので、爆弾を仕掛けた後にエンヴィルークが彼を前足に掴まらせて一気に引き上げる事を決めた。


「準備はよろしいですか?」

『ああ、俺様は何時でも行けるぜ』

「ではやりましょう」


 クリスピンが砲台の周囲に魔晶石を設置し、そして爆破の為に魔力を注ぎ込んで駆け足で離れてエンヴィルークとともに空へと舞い上がった。

 その瞬間、下に見える砲台が一瞬まばゆい光に包まれたかと思うと大爆発を引き起こし、黒煙と炎の中に呑み込まれて崩壊して行く音が聞こえて来た。

 これでこのルリスウェン公国の砲台は破壊出来たから、残りの他の砲台もしっかりと破壊して欲しいと心の中で頼んでいるクリスピン。

 しかし、そんな彼が前足に掴まっている状態のエンヴィルークがある違和感を覚えていた。


『……んっ!?』

「いかが致しました?」

『あ、いや……流砂の中なんだけどよ、何か光が反射したんだよ……今』

「えっ?」


 それって太陽の光が砂に反射したからじゃないのかと考えるクリスピンだが、エンヴィルークが言うにはそんな光の反射の仕方では無かったらしい。

 もっと、何かの物体に反射して一瞬目が眩みそうな眩しさがあったんだと主張するエンヴィルークは、その光が反射した流砂に近づきたいのだが、今しがたクリスピンが仕掛けた魔晶石の爆弾によってなかなか近づけない状態が続いていた。

 そこでクリスピンを一旦地上に下ろし、自分の背中に乗せて空からその光の反射が無いかどうかを再び確かめる事にする。


「流砂の中から反射しているんでしたよね?」

『そうだよ。だから変なんだ。普通は流砂の中って空洞になっている筈だから、あんな光がしっかりと反射するのがまずおかしいんだよ』


 そう考えているエンヴィルークの背中に乗っているクリスピンだが、次の瞬間流砂の一つの中からキラリと反射する光が見えた。


「……っ!? あ、見えました!!」

『見えたか?』

「ええ、私にも見えましたエンヴィルーク様! あそこの流砂の中です!!」


 しかし、クリスピンがそう言いながら指差した流砂に対してエンヴィルークは首を傾げる


『えっ……いやいやいやいやちょっと待てよお前。俺様がその光を見たのはそっち側の流砂の中だったぜ?』

「何ですって? あの左側にある流砂の中からではないのですか?」

『ちげーよ、俺様はあの右の方にある流砂の中から見えたんだよ』


 何だか話が噛み合っていない。

 お互いにその光が見えた流砂が違うと言うならば、その二つの流砂それぞれに何か異変が起きているらしい。

 なのでここはまず、爆破地点から少し離れていて今でも確認が出来そうなクリスピンの流砂の元へと翼を動かして接近するエンヴィルーク。

 するとその流砂の奥深くに、やはりキラリと反射する光が見える。


『あー……確かにここにも見えるなあ。俺様が向こうの流砂の中に見たのと同じだぜ』

「もっと接近出来ませんか?」

『ちょっと待ってな。それじゃギリギリまで近づいてみるから』


 このでかい図体が接近出来るギリギリまで距離を縮めるエンヴィルークだが、それによって中に見える光の正体が何だか分かったのだ。


「……え、エンヴィルーク様!! この流砂の下に大きな金属の塊があります!!」

『ええっ、どんなんだよ?』

「何て言うか……私には良く分からないのですが、箱みたいな物ですね。大きな箱が何重にも積み重なっている様な、そんな物です!!」

『箱だぁ? って事は、もしかしてこの流砂ってそもそも自然のもんじゃなくて、もしかして人工的に作られたダミーの流砂って奴じゃねえだろうな?』


 そんな、流砂が人間や獣人の力で作れるのかどうかはエンヴィルークにも分からない。

 しかしその流砂の奥に見える金属の箱の謎もある事だし……と、エンヴィルークは一旦ペーテルの姿になってクリスピンの言っているその流砂の中へと呑み込まれてみる事にした。

 もしかしたら、この流砂の下にはとんでもない物があるかも知れないからである。


『良し、それじゃあまずは俺様が先に行く。何かあればお前を呼ぶけど、俺様が呼ぶまではここを動くんじゃねえぞ』

「分かりました」

『ああ、それから俺様が潜っている間にジーク大公とかあのアークトゥルスの生まれ変わりに連絡を入れておいてくれ。これは他の奴等にも伝えておくべき事だろうからな』

「かしこまりました」


 右手を胸に当てて一礼するクリスピンに背を向け、ペーテルは足から一思いに流砂の中へと自分から飛び込んで呑み込まれて行った。

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