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820.狙われる神

 最初に砲台を破壊したエレデラム公国から北に向かったエンヴィルーク、それから騎士団長のクリスピンはその公国の砲台を壊しに来ていた。

 本当であればクリスピンは公国騎士団の団長の身分なので、自分の主君であるジークのそばに控えて護衛をしなければならない。

 しかしそのジークから「俺はこのエレデラム公国に滞在しているし、それまではちゃんとこのエレデラム公国の人達に守って貰うから心配すんな」と何故か胸を張って言われたのである。

 更にエレデラム公国の大公であるラグリス、そして騎士団長のラニサヴからもジーク大公の事は任せてくれと言われたので、こうしてエンヴィルークの背中に乗って彼は自分の国へと戻って来たのである。


『さて……砂漠についたのは良いけど、結局砲台があるのは何処なんだ?』

「あれ? もしかしてエンヴィルーク様はここに来られた事は無いのですか?」

『あるにはあるけど何回かしか無えよ。ってか、俺様があのアークトゥルスの生まれ変わりと手合わせをしていた時に、この大陸中にある砲台の場所を調べてたんだろ? もう一回教えてくれや。教えてくれたらその場所までひとっとびすっからよ』

「分かりました……」


 打ち合わせの内容位は覚えておいて欲しいと思いながら、クリスピンはその打ち合わせの時の会話を思い返しながらエンヴィルークに場所の説明を始めた。


『こんな所にあったのか……だとすれば、我がルリスウェン公国ではこっち側から回り込んで行った方が良い。ここは砂漠なんだが流砂があるんだ』

『ここにですか?』

『そうだ。私の元にも以前から騎士団の部隊の中でこの流砂の餌食になる者が現われてな……わざわざ流砂がある場所に砲台を造るだけの技術も驚くのだが、一番はその立地条件だろう。流砂に呑み込まれたらそれで絶命してしまう可能性が限り無く高いから、迂闊に近付いて破壊されない様にしたのだと思う』

『砂埃も凄かったりしますか?』

『ああ。以前向かったカナカナの神殿とは違い、ここは海から離れている場所だからな。見晴らしは良いけどその大量の流砂のせいで近づく旅人も商人も居ない。人目につかない様に砲台を建造するにはうってつけの立地だろう』


 その回想の中からエンヴィルークに聞かれた事をかいつまんで話し終えたクリスピンは、その場所に向かって地図も併用して案内して貰う。

 しかし、それが危機一髪の事態を巻き起こす事になろうとは思いもしなかった。


『えーっと、お前の言っている場所だと向こうの方だな。確かにカナカナの神殿から離れた場所にあるみたいだが、良くこんな場所に造ろうと思ったもんだぜ、しっかしよぉ』

「立地条件はともかく、人目につかない場所としては最適でしょう。ですから敵もなかなか考えているみたいです。とは言え流砂が周りに沢山ある場所なのに、そこをわざわざ選ぶのはちょっと引っ掛かりますがね……」

『そうだな。俺様だったら仲間が流砂に沈んでしまう可能性もあるからこんな場所は絶対に選ばねえけど……ん?』


 空を飛んで、その流砂と砲台がある場所まで一気に加速して行くエンヴィルークだったが、そのスピードを少しずつ緩め始めた。

 それに気が付いたクリスピンが何事かと首を傾げる。


「どうしたんですか? エンヴィルーク様」

『何か嫌な予感がするぜ。目的地はこのままずっとまっすぐ行った場所の筈なんだが、そこからとんでもない量の魔力が感知出来るんだよ』

「え……それってもしかして……」

『掴まれっ!!』


 まさかその砲台関係の事じゃ……とクリスピンがセリフを続けようとする前に、それが現実のものとなって襲い来る。

 エンヴィルークは強烈な嫌悪感を覚え、本能が警鐘を鳴らして危機的状況を訴え掛けるのを感じて一気に左へと急旋回。

 そしてそれと同時に叫び声で指示をされたクリスピンは、今までの人生の中で培った反射神経でエンヴィルークにしがみつく。

 そして次の瞬間、バチバチと耳障りな音を立てながら光の帯が自分の右を掠めて行ったのをクリスピンが感じ取った。


「……っ!?」

『あっぶねーあっぶねー……あー、俺様の本能に感謝してくれよな』

「い、今のは!?」

『今のはって……あれが例の砲台に設置されている大砲から発射された魔術エネルギー弾だよ。方角からしてみても間違いねえ。あれが恐らくシルヴェン王国の王都とか、それからルルトゼルの村を破壊した元凶なんだろうよ』

「うぷっ……」


 自分の横を掠めて行っただけなのに、その魔力エネルギーによって気分が悪くなるクリスピン。恐らく急に強い魔力を感じた事で体内の魔力が反応しているのだろう、と分析した。

 だが、もしあんなものが都のペルドロッグを始めとする町や村に直撃したら、それこそシルヴェン王国やルルトゼルの村と同じになってしまう。

 そう考えたクリスピンは思わず身震いをしたが、それよりも大事な事を思い出した。


「あっ、そう言えば今のエネルギー弾は一体何処へ飛んで行ったんですか!?」

『俺様にも分からねえけど、少なくともペルドロッグの方じゃねえだろうな。だけどあの飛ばし方だったらどっかの村とか町を狙った可能性が高いだろうな』

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