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79.ワイバーン

 リーフォセリアからやって来た一行はソランジュの持っていた地図を見せて貰い、ここから北……と言うよりは北東に向かって進めば帝都ランダリルへ辿り着くのを確認。

 ベルフォルテの町からかなり遠いが、それでも向かうと決めたからには向かうしか無いのだ。


「でも、結局どっちの依頼も一日掛かりになってしまったからペース上げて行かないとな」

「そうね。馬を借りるのは良いんだけど、急ぎ過ぎると馬が潰れちゃうからそれが問題よね」

「それに馬の返却場所も限られて来るし、どういうルートをとるべきか悩むな」


 レウス、アレット、エルザの三人がうーんと唸って悩んでいる横で、ソランジュがふとこんな提案をする。


「そう言えば、ワイバーンの交通手段って使った事あるか?」

「ワイバーン……いや、話には聞いた事はあるが実際にはまだ無いな」

「俺は昔、ワイバーンを使って飛び回っていた事もあったから経験はあるけど……それがどうかしたのか?」

「いや、この町からワイバーンの貸し出しを行なっていて、それを使って帝都ランダリルの街まで一気に飛んで行くのはどうかと思ってな」


 ソランジュの提案に、マウデル騎士学院の生徒達はハッとした表情になる。

 ワイバーンなら空を飛んで素早く移動が可能なので、馬よりも速い上に川だろうが砂漠だろうが関係無しに一直線のルートを通ってランダリルまで向かえる。


「あ……そうか! それだったら馬よりも全然早く辿り着けるかも知れないな!」

「そうね。でも……私達はワイバーンの訓練を受けた事は無いのよね」

「そうなのか? だったら私とレウスで一頭ずつ借りて、それぞれが後ろに相乗りをすれば良いだろう。今、レウスは自分で言っていたよな? 自分は昔ワイバーンに乗っていた経験があるんだって」

「ああ、あるよ」

「だったらそれで良いじゃないか。ワイバーンは夜目が利くから昼夜お構い無しに進む事が出来る。ただ、その分レンタル料金もちょっと高めだから食事の一回や二回は抜かないとダメかもな」

「それ位だったら俺は問題無いが、二人は……」


 食事無しになっても大丈夫なのか? と心配そうな表情でアレットとエルザに目を向けるレウスだが、どうやらその心配は無用だった様である。


「私は大丈夫よ。帝都に行けばまたギルドの依頼でお金を稼げば良いんだし」

「私も同意見だ。レウスも問題無いんだったら、後は貴様だけだが……」

「私か? 私もお主達と同じで問題は無い。そもそも提案したのも私だからな。そうと決まればさっさとワイバーンのレンタル場所に向かおう。この港町ベルフォルテからランダリルまでならワイバーンで大体三時間で辿り着けるぞ」

「えっ、そんなに近いの!?」


 ワイバーンのスピードの速さはある程度予想していたものの、実際に具体的な数字で示されると思わずそう声が出てしまうアレット。

 そんな彼女に対し、ソランジュは口元に微笑を浮かべて頷いた。


「近いんじゃなくてワイバーンが速いって言った方が良いな。ただし、天気は見ておいた方が良いのは分かるだろう?」

「ああ。ワイバーンは天候に左右される。特に雨の日は乗れない。夜目が利くから良いんだけど、雨が降ればそれだけ搭乗者は濡れるし雷を伴う雨だったらワイバーンや搭乗者に直撃する可能性だってあるからな。特に俺達はこういう金属製の武器や防具を装備しているから、それだけでも雷の日に乗るなんて自殺行為だ」

「そうか。だったら私やアレットを乗せるにあたって天気は気にしなければならないか……」


 金が掛かる、天候によって左右される等メリットばかりでは無い移動手段ではあるが、それでも徒歩や馬で移動するのと比べたら遥かに早くランダリルまで向かえるので、一行はそのワイバーンをレンタルしにベルフォルテの町外れに向かった。



 ◇



「近くで見ると生々しいわね……」

「でも人間にも獣人にも慣れているから心配は無いぞ」


 そのワイバーンのレンタルをするにあたって、実際にこうしてワイバーンと対峙すると引き気味になってしまうアレット。

 残りの三人は大丈夫らしいが、アレットは一種の気持ち悪さを覚えてしまうらしい。

 それでもこのワイバーンを移動手段として選んだ以上、背中に乗って移動しなければならないのだ。

 ソランジュはワイバーンでの移動経験があるのでレンタルするワイバーンを彼女に選んで貰っている間に、彼女に聞こえない様にアレットとエルザはレウスに話を聞いてみる。


「ねえ、ワイバーンの経験ってあるの?」

「ああ。前世では馬もワイバーンも普通に移動手段として使ってたけど……逆に騎士学院でワイバーンの操縦方法って習わないのか?」

「習う事は習うけど座学だけかな。ワイバーンは飼育するのに金が掛かるって話を叔父さんから聞いた事があるし、騎士団に入ったら馬を使って色々な場所に移動する事が多いからワイバーンは知識だけだな」

「そうなのか……五百年前だと色々事情が違うみたいだな、やっぱり。俺の時代の騎士団はワイバーンを使ったドラゴンライダーって奴等が居たんだが、今の時代にも居るのかな……?」

「資金力が豊富な所は居るんじゃないかしらね? まぁ、今回は私も良い経験になると思って我慢して乗るわよ」

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