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816.シルヴェン王国の反撃

 そして、そう言われた方のトリスティも少なからずショックを受けていた。


「えっ……」

「えっ、じゃないですよ。普通に考えれば分かるじゃないですか。国民はこうやって国王の貴方に対して信頼を無くして心が離れて行くんですよ。放浪をするのが全て悪いとは言いませんが、貴方には国王としての立場と義務があるんじゃないんですか?」


 しかし、そう言われてただ黙っている様なトリスティでは無い。


「私だって……羽を伸ばしたい時はある!」

「伸ばし過ぎなんですよ。毎回毎回脱走して、その度に連れ戻されてお小言食らって。何だか見ている方が恥ずかしい気がするんですよね、そう言うのって」

「黙れっ! 私だってなぁ、国王として真剣にやっているんだよ!! ただの一般人で……しかも他国の人間が私の国の事情に口を出す権利なんて無い!」

「っ……!!」


 確かにそれも一理ある。

 だからと言って、この身勝手な国王をこのまま許しておきたくないのもアレットにとってはまた事実。

 どうしたものかとお互いに睨み合っていた矢先、その様子を見ていたミネットが口を開いた。


「では、私の言う事であれば陛下は受け入れていただけますか?」

「何だと?」

「その理論ですと、私はこの国で生まれ育ったこの国の人間です。ですから少なくとも、外国人であるアレットさんと違ってこの国の人間である以上、国の事に対して意見する権利はあるのかと思いますが?」


 それに、とミネットは続ける。


「私はまだ若輩者ではありますが、それでも王都シロッコにある城の関係者でもあります。それに今回の砲撃によって壊滅に追い込まれてしまったそのシロッコの住民達に炊き出しを行なったりしていました。それなのに……陛下はすぐに帰って来る事もせずに砲台の位置を調べてから帰って来た。これは優先順位が違うのではありませんか?」

「……そ、それは……」

「砲台の位置を調べるのは確かに功績ではありますが、だからと言って自国の民を疎かにするのは国王失格だと思います。もしこの発言が不敬罪だとおっしゃるのであれば、私はその罪を受け入れる覚悟でいます!」


 しーん、と三人の間の空気が静まり返る。

 これ以上この状況で何をどう話して良いか分からず、三人はただ見つめ合ったまま立ち尽くすのみとなったのであるが、そんな三人の元にバサバサと複数のワイバーンが羽ばたく音が聞こえて来たのはその時だった。


「陛下ーっ!!」

「あっ、あれは……もしかして!?」

「あの声は確か……ロルフ副騎士団長ですかね。それから一回り大きな団長専用のワイバーンも見えますから、レメディオス騎士団長もいらっしゃいますわ!」

「どうやらこの話の続きはまた後でと言う事になりそうだな。ひとまず、あの騎士団長達に話をするのが先だ」

「ええ。陛下の口からしっかりと説明して下さいね」


 そうして降りて来たワイバーンとそれを操る騎士団員達に、トリスティが事情を説明して砲台の破壊に向かう。


「……まぁ、俺達もお話は分かりました」

「そうですね。しかしこうして戻って来られた以上、ここから先は陛下と……それからアレットだったな。砲台の場所にまで案内してくれ。そして陛下の指示に従います」

「分かったわ。ええと……それじゃあこの先にその砲台がある筈だから着いて来て」


 レウスとエルザが以前ここに来たと言う、森の中の広場。

 そこであのカシュラーゼの手先であり、マウデル騎士学院の時からの因縁でもあるヨハンナとエルザがバトルをしたとレウスから話を聞いている場所だけあって、何だか初めて来たとは思えない様な不思議な感覚に包まれているアレット。

 そしてそのアレットの先導によって辿り着いた場所には、確かにそのレウスとエルザが見つけた砲台が鎮座していた。

 ……思わぬ邪魔者達とともに。


「……ん?」

「おい、砲台の周辺に多数の人影が見えないか?」

「本当ね。ちょっと確認してみましょう」


 騎士団の備品として支給されている望遠鏡を取り出したクラリッサが、それを使って砲台の周囲を観察してみる。

 するとその周辺に居るのは見慣れぬ武装集団らしいと言うのが分かった。それも山賊や盗賊と言ったその辺りの悪者では無くて、妙に戦闘訓練を受けている様な立ち振る舞いをしている集団。

 その動きとこの場所の事を考えると、どうやらカシュラーゼの手先らしい。


「砲台を壊す前に、まずはあの連中の排除が先になりそうだな」

「良し、それならば私達が暴れ回って陽動しよう。その間に爆弾を仕掛けてあの砲台を吹き飛ばすんだ」


 レメディオスがそう指示を出したのだが、それよりももっと簡単な陽動作戦があると言う。


「いいえ、これを使えば簡単に陽動出来る上に相手の戦力も減らせるわ」

「えっ、それって魔晶石?」

「そうよ。それも今回の作戦に必要な爆弾の魔晶石。あの砲台の周りに魔晶石を設置しても、その周辺で戦っていると爆発に巻き込まれちゃう可能性があるわ。だからあの連中をまずは砲台から引き離して、その上で砲台を爆破しましょう」


 そう言いつつ、まずは森の広場に向かって魔晶石を投げ入れて大爆発を引き起こすアレット。

 シルヴェン王国の反撃が今、この爆発を切っ掛けにして始まった。

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