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814.大爆発

 その矢が突き刺さった兵士を中心として、大爆発を引き起こした砲台周辺。

 これで一気に見張りの数は減ったものの、まだ見張りが居るので油断が出来ない。

 アニータはそれを確認し、すぐに立ち上がって次の矢を準備する。


(この反動の大きさからすると、そう何回も使える様な作戦じゃないわ。でも今の飛距離から考えると意外と飛ぶわね。もっと近づいてもう一回!!)


 兵士達が異常に気が付いてしまったので、ここからは迅速な行動が求められる。

 そう考えたアニータはすぐに次の矢を準備し、キリキリと引き絞る。今しがたやってみたばかりの感覚と力を思い出しつつ、今度はもう少し接近して矢を上空に向かって放った。

 矢は風を切って飛んで行ったものの、やはりまだ距離が足りないらしく砲台の少し手前で大爆発を起こした。


(くっ、これじゃあまだ距離が足りないわね!)


 ならばもっと接近して撃ち込むしか無い。しかしそう決意した彼女に向かって、敵もこのまま黙っている筈が無かった。

 それは彼女が、敵の一人がこちらに向かって構えている大きな筒状の物体を目にした事から始まった。


「……!?」


 その物体はかなりやばい。そう本能が伝えている。

 アニータは腕の痛みも忘れ、咄嗟に横っ飛びで回避。地面を転がって受け身を取りつつ立ち上がる。

 そのすぐ横を、煙と魔力エネルギーの光を出しながら何かが音を立てて飛んで行った。

 そして次の瞬間、林の中にある木の一本に激突したその物体がカッと一瞬光ったかと思うと、先程アニータが放った弓矢爆弾と同じ位の大爆発を引き起こした。


(あっ、あれがもしかして……ランチャーって兵器なの!?)


 その爆発によって一瞬で木々は焼け焦げ、地面はえぐれて火災も起き始めている。

 まさかあんな兵器が敵の手の中にあるなんて。あれをもし自分が受けてしまっていたら、直撃を免れたとしても身体が思う様に動かなくなる事は間違い無いだろう。

 しかし二発目が撃たれる気配は無い。恐らくだが、魔力エネルギーを消費するのもその威力に比例して量が多くなりそうなので、それで次を撃つまでの時間が掛かっているのではないかと推測するアニータ。

 ならばと普通の矢による攻撃に切り替えた彼女は、普段の力と感覚で残っている見張り達を倒して行く。

 兵士達は近接戦闘用の武器やハンドガンを持っているのだが、小柄故に身軽な動きが可能なアニータにはなかなか狙いが定まらない。

 そしてあらかたの兵士が倒され、ようやく砲台に爆弾を仕掛けて爆破出来る……と思った矢先の事だった。


「おらああああああああああああっ!!」

「きゃあっ!?」


 怒声とともに飛び掛かって来た人影。

 その姿を認識すると同時に身体に物凄い衝撃を受けるアニータ。その人影と言うのはサィードとイレインの二人に飛び掛かって押さえ付けられてしまっていた筈の、カシュラーゼの重要人物の一人であるライマンドだった。

 しかし飛び掛かって来たには分かるのだが、その手には愛用のショートソードが握られておらず丸腰状態である。

 飛び掛かった勢いそのままにアニータを地面に押し倒したライマンは、彼女の首を両手でギリギリと絞め上げ始めた。


「げ……げへっ、ぐえ!!」

「ちっきしょう……まずはテメェからぶっ殺してぐほあああっ!?」


 首を絞めていたライマンドのその手が急に離れたと同時に、のし掛かっていた身体が横に吹っ飛んで行った。


「その前に俺がお前をぶっ殺してやるぜ!!」

「えっ……さ、サィード?」

「アニータは早くあの砲台をぶっ壊せ!!」


 何故かサィードも丸腰のままであり、お互いに格闘術での戦いが幕を開ける一方で、林の中から走って来たイレインがアニータの爆弾設置を手伝い始める。


「手伝います。さぁ、雑魚は私に任せて下さい!!」

「う……うん。でも貴方だけどうして武器を持ってるの?」

「あの二人の武器はお互いに吹っ飛びました。そしてあの男がここに居る貴女の方に逃げました。さぁ、早く爆弾を!!」

「あっ、はい!」


 周辺にまだ残っている雑魚をイレインに任せて、手早く爆弾の設置を終わらせるアニータ。

 分けて貰った袋の中に残っている爆弾を全て設置し終わり、さっさと退散するべく声を張り上げる。


「準備は終わったわ!!」

「分かりました。陛下、逃げますよ!!」


 しかし、まだそのサィードとライマンドの戦いは続いていた。

 しかもお互いに殴り合って蹴り合って実力が拮抗している状態が続いているので、ここでアニータが弓をキリキリと引き絞った。

 そして狙いを定めて一気に発射すれば、狂い無しに矢がライマンドの背中に斜めに突き刺さった。


「ぐふあっ!?」

「そりゃっ!!」

「がはっ……」


 アニータの援護によって一気に崩れるバランス。

 トドメにサィードの強烈な右後ろ回し蹴りがライマンドの腹に入り、力無く吹っ飛ばされたライマンドの身体が砲台に向かって飛んで来た。

 それを見たアニータとイレイン、そしてサィードは一目散に砲台から離れて行く。

 ライマンドの激突によって衝撃を受けた魔晶石爆弾が一気に誘爆し始め、砲台全体を包み込んで今までのとは比べ物にならない程の大爆発を引き起こす。

 三人は走れるだけ走ってその爆発から逃がれ、何とか砲台を破壊する事に成功した。


「はっ……はぁ、はあ……やったぜ、これであいつもろとも砲台破壊完了だ!!」

「ええ、ありがとう」

「お礼を言うのは私達の方です。おかげでこの無人島に対しての警備も必要だと分かりましたから」

「ああ。それにまたヴァーンイレスをあいつ等に破壊されるのを防いだんだからな。助かったぜ」


 ヴァーンイレスの砲台破壊はこれにて終了。

 しかしまだ他にも砲台が残っているので、その現状を確認するべくアニータはアンフェレイアに連絡を入れ始めた。

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