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812.島の北側の砲台

 島の探索を始めてすぐに、明らかに人の手が加えられている道が見つかった。

 更に大勢の足跡も見つかったので、やはりここで砲台を建造していると言うアンフェレイアの話に間違いは無いらしい。

 北に向かって進むにつれ、嫌でも緊張感が高まるので三人とも武器を握り締めるその手に力が入る。

 そしてイレイン曰く、北の方から人工的な魔力を感じる事が多くなって来たと言う。


「自然に出る魔力じゃないですね。一箇所だけ明らかに魔力が強くなっている場所があります」

「分かるのか?」

「ええ。何となくですけど分かるんですよ。そしてさっき見つけた足跡からすると、決して油断出来る場所では無いですね」


 そう言うイレインの後を着いて行くと、やがてその整備された道が終わった。

 北に向かって進んで来たのは事実なのだが、どうやら整備されている道は北と南を突っ切るルートになっているらしく、特に探索も出来ていない。

 その代わり、無人島で魔物が我が物顔で闊歩している筈の魔物達を一匹も見掛けていないのは、恐らくここに入り込んだあの大勢の足跡の主達が討伐したのだろうと見当がついた。

 所々に魔物の体液と思われる液体がベットリとついていたり、血しぶきが飛んでいたり肉片が転がっていたりと後始末が全然されていないのも、魔物の討伐を優先していた証拠の一つだ。

 その一本道の惨状を見ながら北に向かって進み続け、こうして島の北側までやって来た三人は誰かの話し声を耳にする。


「……待って、誰かの声がするわ」

「俺も聞こえるぜ」

「それも複数人の声が聞こえます。とりあえずこのまま進むのは危険そうですから、そっちの林の中から様子を窺いつつ先に進みましょうか」


 自分達の右手にある林を指差したイレインの誘導によって、そのイレインを含む三人は林の中に身を隠して進んで行く。

 進むにつれて段々声が大きくなって来ているのに加え、ガチャガチャと金属製の防具を着けた状態で歩き回っている音も聞こえて来た。

 そして林がもうすぐで終わると言う所で、三人が林の中から見た光景はやはり……。


「おい、あれって……!?」

「間違い無いわ。あれが噂の砲台よ。私がレウス達と一緒にエレデラム公国で見たものと同じ形に同じ色、そして同じ大きさだわ」


 整備されている道が終わり、大きな広場が作られているのを林の中から確認出来る。

 そしてその広場の中に威圧感たっぷりに鎮座しているのは、やはりアンフェレイアの報告にあった砲台だったのだ。

 しかしその周辺には見張りが沢山居る上に、着々と色々な荷物が運び込まれている。

 砲台の上にある大砲の発射準備をしているのか、それとも砲台の周りにあるテントで寝泊まりしている兵士達への食事の差し入れか。

 どちらにしても砲台を破壊するのに邪魔であるのには変わりないので、アニータはどうするかを必死で考え始めた。


「このまま三人で一気に突っ込むのは得策では無いわね。ここは夜になるまで待って、夜の見張り達の気が緩んだ所で一気に爆破した方が良いかも知れないわ」

「でもそれだと時間が掛かり過ぎるぜ。見た感じでは敵の数は少ねえみたいだし、一気にぶちのめしちまったらどうだ?」

「駄目ですよ、陛下。敵の戦力も分からないのにむやみに突っ込むのは命取りですよ」

「じゃあ夜まで待てってのかよ?」


 お互いの意見が衝突しあい、なかなか砲台の破壊作戦が纏まらない。

 このままだとここで揉めている間に敵に見つかってしまうかも知れないので、もっと林の奥に身を隠して作戦を話し合おうと考え始めた三人だったが、そんな三人の目の前にもう一人の作戦提案者が現れた。


「俺だったら林の中から奇襲を掛けて、一気に仕留める作戦に出るけどなぁ?」

「え?」

「おっ、おおおおっ!?」

「あっ……」


 アニータはキョトンとし、サィードは大袈裟に驚き、そしてイレインは呆然とする。

 それもその筈で、身を隠す前に敵に見つかってしまったからである。

 そのセリフ通りに三人の背後にこっそり回り込んで奇襲を掛けて来たのは、サィードにとって見覚えのあるあの男だったのだ。


「てめぇ、確かカシュラーゼの騎士団員のライマンドだったな!?」

「ああそうだ。おーっと、動くなよ。動いたらランチャーでお前等木っ端微塵だぜ?」

「何ですか、そのランチャーって?」

「はっ、それも知らねえのか。だったらお前に向かって部下に撃たせて、身体を木っ端微塵にしながら威力を身をもって知って貰おうか?」

「くっ……」


 ランチャーと言えば、確かハンドガンよりもかなりの威力を持っている新開発の魔術兵器だった筈。

 聞く所によれば、家の壁にも簡単に穴を開けてしまうらしいのでそんなものを食らってしまえば間違い無く絶命してしまうだろう。

 いや、それよりも前に考えなければならないのはどうしてこんな状況になってしまったのかである。


「だから言ったじゃない。身を隠して夜まで待とうって!」

「だったらその前にぶっ潰しちまえば良かったじゃねえかよ!! うだうだここで作戦立てていたからこんな展開になんだろ!?」

「ちょ、ちょっと陛下落ち着いて下さい! アニータ様も落ち着いて!」

「お前は黙ってろイレイン! もうぶん殴ってやらなきゃ気が済まねえ!」

「やれるものならやってみなさいよ!」

「おー、そーかいそーかい。だったらやってやるよ、おらあっ!!」

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