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808.ちぐはぐな話

 エスヴァリークの砲台を壊しに行くのは、レウス達がそこで出会ったドリスと武術大会の決勝戦でレウスが戦ったセバクター。

 当然、ドリスがエスヴァリークに向かう前にレウスがセバクターに連絡を入れており、そのおかげもあって合流までの話はスムーズに進んだ。

 しかし、問題はそこからだったのだ。

 まずトリスティからの話によると、このエスヴァリーク帝国内では砲台を見つける事が出来なかったらしいのである。

 最初は何故だろうと疑問に思ったドリスだったが、その後に判明したアンフェレイアからの情報によれば、砲台に関しての話は仕入れる事が出来なかったらしい。

 その代わりに、帝都ユディソスの中から異様な魔力を感じる場所があるのだと報告を受けた。


「その場所がここだって言うのか?」

「ええ。でもこんな場所に砲台なんて造れるのかしら?」


 セバクターとともにドリスがやって来た場所。

 そこはかつて、二人が武術大会の決勝トーナメントに出場してそれぞれ戦いを繰り広げていた、あのユディソスの闘技場だったのだ。

 確かに大きさから考えれば、砲台を建造出来る位の大きさがある場所ではあるのだが、今の所は全然何時も通りの闘技場の姿である。


「その異様な魔力云々って話の出所はこの闘技場らしいけど、見た感じでは私達が武術大会に参加した時と何も変わっていないわよね」

「ああ。それにここは定期的に補修だの整備だのと言ったメンテナンス関係で人の出入りがあるから、そんな大きな物を建造していたのであれば、すぐに騎士団に報告がある筈なんだ」

「普通に考えれば到底無理な話だと思うがな……」


 今回は帝国の危機でもあるので、セバクター以外にもエスヴァリーク帝国騎士団からフォンとニーヴァスがやって来ている。

 彼等二人の話によれば、帝国騎士団に最近入団したセバクターの話を聞いて不思議に思った事があるらしい。


「セバクターはここが元々自分の地元だから、その出入りしているメンテナンス業者の人物達の中にも何人かの顔見知りが居るらしいんだ。それでその情報をもとに私達で聞き込みを行なったんだが、そこで気になる話が出て来た」

「気になる話ですか?」

「ああ。私とフォン隊長で以前、そのメンテナンス業者の所にこれからも闘技場のメンテナンスをどうぞよろしくって挨拶に行ったんだ。そうしたらその時、メンテナンスを行なっていない筈の日にも誰かが闘技場に出入りした形跡を見つけたらしいんだ」

「ええっ!? それって明らかにおかしいじゃないのよ!!」


 そうだとしたら、この闘技場の中に砲台が建造されていると言う推測もあながち間違いとは言い切れなくなって来る。

 しかし、フォンからの報告は妙なものだった。


「俺達もそう思ってさ、実際に俺とニーヴァスで闘技場のメンテナンスが無い日に様子を見に行ったんだ。だけど出入り口はしっかり施錠されていたし、人の気配もまるでしなかった。きちんと中に入って隅々まで調べた結果だからな」

「それに、闘技場の出入り口には誰かが勝手に入ったら警報が鳴る様に魔術でセキュリティが掛けられているから、勝手に入れる様にはそもそも出来ていない」

「だとしたらますます怪しいわね」


 何だか話がちぐはぐな状態だが、いずれにせよこの目の前にそびえ立っている闘技場の中に入ってみて色々と確かめてみない事には何とも言えない。

 なので隊長のフォンに出入り口のセキュリティを解除して鍵を開けて貰い、四人は中に進んで行く。


「うーん、確かに人の気配はしないわね」

「そうだろう? だから俺達もおかしい箇所が無いと判断して、結局今に至る訳だ」

「私達が最初に見に行った後も何度かここには様子を見に来ているんだが、何時ここに来ても何も変わらない状態だったし、やはりこの地図の話は外れだと思うがな」


 だが、そこまでニーヴァスが言った時だった。

 闘技場のバトルが行なわれる場所の中心までやって来た一行の中で、セバクターが気になるものを発見したのだ。


「……ん?」

「どうしたの?」

「ここ……こんな切れ目なんてあったか?」

「えっ?」


 決勝トーナメントで使用された石舞台は、普段は設置されておらず武術大会を始めとした各種イベントの時に設置される。

 なので今はガラリとしている円形状の闘技場。

 その土の地面の中心に、妙な切れ込みが入っているのにセバクターが気が付いたのである。

 明らかにこれは自然に出来たものでは無い。何故ならこの切れ込みの形は恐ろしい程にまっすぐな上に、闘技場の端から端まで通っているからだ。


「なぁ、この切れ目は前回ここに来た時にあったのか?」

「いいや、私もフォン隊長もこんな切れ目は見ていない」

「そうか……なら、ますます怪しいな」


 どうやらここには自分達の知らない何かがある。

 そう確信した四人は顔を見合わせて頷き、この闘技場をもっと良く調べてみる事に決めた。

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