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806.イーディクト帝国の砲台

 ソルイール帝国の基地で大爆発が起こっているその頃、イーディクト帝国の砲台へとやって来たのはレウスからメンバーとして振り分けられた、ここが地元のソランジュとそのサポートのエルザだった。

 彼女達がやって来たのは、イーディクト帝国の中でもかなり東の方にある砂漠を更に超えて、その奥の森の中だった。

 こんな場所まで砲台を造りにやって来たのかと思うと、敵ながらその労力には感心してしまう。


「ワイバーンを使ってエレデラムの西の方から南西に向かって飛んで、結果的に海を越えてイーディクトの東側に入って来たとは言え、まさかこんな場所に造っているなんてね」

「ああ。しかもまた森の中か。他の場所はどうなのか分からないが、これを見る限りでは大体の砲台が森の中に造られているみたいだな」


 やはりあれだけ大きな砲台を建造するとなれば、人目につかない場所に造るのがリスクが低くて好都合である。

 ルリスウェン公国の場合はあのカナカナの遺跡から更に離れた、砂漠の流砂が多い場所に砲台を設置しているとの情報だったので、その場合は少しイレギュラーなのかも知れない。

 だがどちらも関係者以外がなかなか近付き難い場所なのは共通しているので、ソランジュとエルザは自分達でここの砲台を破壊しなければならないと言う重大な使命を帯びていた。


「さて……ここまで来たのは良いが、この地に関しては貴様が地元だから道案内を頼むぞ」

「分かっている。とりあえずシャロット陛下にも連絡は入れたし、騎士団の応援もすぐに回してくれるって言っていたけど……果たしてそう上手く行くだろうか?」

「そう思いたいがな。ソルイールに向かった二人だって、事前にボルド村長に連絡を入れてもしもの時のバックアップを頼んだみたいだし……」


 結果的にそのバックアップを使う事は無かったのだが、いざと言う時のバックアップがあるのと無いのとでは不安感が段違いである。

 こうしてレウスに振り分けられた二人は、それぞれの持ち前の冷静さを武器に森の中に入り込んで行く。

 しかし、その冷静さが一気に崩れてしまう出来事がその砲台がある場所に待ち構えていた!!


「これはこれは、かなり久し振りだな?」

「はっ……?」

「ど、どうしてお主がここに居るのだ!?」

「どうしてって……俺がここに来たのはカシュラーゼの計画を進める為さ。軍事顧問として呼ばれたんだよ」


 この長い旅の中で、まだレウスと知り合って間も無い頃の話。

 初めてソルイール帝国にやって来て、そしてあの凶暴な皇帝バスティアンに良い様に扱われた、屈辱的な過去は忘れたくても忘れられないレベルの話である。

 そしてそのバスティアンから信頼されている人間の一人として、最初にかなりフレンドリーに話し掛けて来た記憶のあるその男が、今どうしてここに居る?

 それを彼の口から説明されても、まさかの場所でまさかの人物に出会った二人のショックはかなり大きい。


「貴様は確か……ギルドランクがトップクラスで未来のギルドを引っ張って行く男と言われていた、エジットだな!?」

「ヘーっ、俺の名前覚えてたんだ?」

「ああ。貴様と……それから騎士団長と皇帝に受けた屈辱は今でも忘れていないからな!!」


 それを聞き、エジットは嫌らしい笑みを浮かべて愛用のハルバードを構える。


「そうかそうか。だったら今度は屈辱にまみれながら死ぬ苦しみを味わって貰うとしようか」

「……でもちょっと待て。今までのこのやり取りからすると、私達がここに来るのをお主は知っていたのか?」


 自分達が突然ここに現われたのなら、もっと驚いても良い筈なのに。

 それどころかかなり余裕な表情で、さして驚きもせずに自分達を出迎えたこのエジットに対して違和感を覚える二人。

 すると、彼はその理由もキチンと答えてくれた。


「ここに連絡があったのさ。エレデラムの砲台をぶっ壊しに来た奴等が居るってな。しかもその連中の中にはあのアークトゥルスの生まれ変わりの姿を見つけたって連絡があったから、もしかしたらこっちの方にも行くかも知れないって話があったんだよ」

「くそっ、遅かったか!!」


 苦々しげにソランジュが呟いた所でもう遅い。

 こうして事前に連絡が行ってしまっている以上、ここでこの男を倒して砲台を破壊するしか方法が無さそうだ。

 問題の砲台は目の前にある、森の中の広場に堂々と鎮座しているのであれさえ壊してしまえば良いのだが、それを邪魔する連中の排除が先である。

 ならばやれるだけやるしか無いと考えたエルザとソランジュだったが、その時エジットの部下が気になるものを空に見つけた。


「え……エジット様、あれは何ですか!?」

「ん?」

「ほら……あそこですよ。空から何かがやって来ます!!」


 部下の一人が指差すその先には、空に浮かぶ幾つもの小さなシルエット。

 それは隊列を組んでいる様に見えるので、何がやって来たのかはエジットにもソランジュにもエルザにも分かった。


「あ、あれは……」

「もしかして、シャロット陛下が派遣したイーディクト帝国騎士団!?」

「ワイバーンの群れだな!!」

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