表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

808/875

805.軍事基地の落とし穴

 やはり軍事基地を造っているだけあってか、しっかりと魔物の駆除はされているらしい。

 騎士団の基地だって言うのであれば、それも当たり前なのだろうと思いつつサイカとシリルが進む。

 するとその途中で狼獣人であるシリルが、人間のサイカには決してあり得ない嗅覚の鋭さで何かの匂いをキャッチした。


「ん~? 匂うなあ」

「何がです?」

「人間の匂いがすんだよ。それから俺と同じ獣人の匂いもな」

「そうなんですか?」

「ああ。つってもまだまだこの道の先を行った所からここまで続いているみたいだがな。俺みたいな狼は鼻が利くから、傭兵の時ははぐれた仲間とかを探すのに良く駆り出されたもんだぜ」


 彼曰く、かなり大勢の人間や獣人がここを出入りしているらしい。

 やはりあの看板に書いてあった通り、この先に軍事基地があるとみて間違いは無いだろうと思いながら道なりに沿って進んでいくと、やがて鉄製の扉で仕切られている大きな建物が見えて来た。

 そこで素早く森の木の陰に身を隠し、遠くから建物の様子を窺う。


「見張りが扉の手前に二人ですね」

「見える限りではな。だが中からはさっき言った通り、多数の人間と獣人の匂いがする。中に砲台があるかどうかは分からないんで、どっちにしろ入ってみないといけないけど……正面突破はなかなか厳しそうだぜ」


 なので何処か別のルートを探すべきだと考えたシリルは、森の中に隠れて基地にもっと近づいて行く。

 そしてふと、サイカが思いついた作戦があった。


「あっ……そうだわ。これを使いましょう!」

「これは?」

「相手の気を引く作戦よ」


 そう言うサイカの顔は自信満々であり、シリルにとってはどうしてこんなに自信があるのだろうかと首を傾げてしまう。

 早くしないと見張りに見つかってしまう可能性があるので、その前にさっさと思い付いた作戦を実行するべくサイカは更に森の奥へと進んで行った。


「異常は無いか?」

「はっ、問題ありません!!」

「では引き続き頼むぞ」


 カシュラーゼから派遣されている技術者達の下で建造された大切な砲台を保管し、ソルイールの大事な軍事パートナーとしてここで何時でも発射出来る様にしている基地。

 そのカシュラーゼからやって来た技術者達はなかなかに気難しく、普通の騎士団員では砲台に近寄らせてもくれないのだ。

 それでもこの砲台は砲撃一発で町を一つ軽く消し去ってしまうレベルの威力があると言うので、これでソルイールの防衛力が更に上がるぞーと思っていた矢先、突然基地の近くで大きな爆発が起こったのだ。


「なっ、何だ!?」

「向こうの方からよ!!」


 巻き上がる土煙と黒煙。

 勿論基地に居る人間や獣人達が気が付かない筈も無く、警報が鳴り響きそのまま厳戒態勢が敷かれる。

 ただしその爆発が起こった方向に注意が向くのも、厳戒態勢が敷かれるのと同じ位に当然である。

 その爆発による混乱と同様に乗じて、サイカとシリルは出入り口の見張りを倒して森の中へと引きずり込んだ。


「おいー、これちょっとちいせえぞ?」

「そんな事言ったって仕方ないじゃないですか。とりあえずさっさと変装変装!」


 中に入ってしまえばこっちのものである。

 こう言う組織は外を守るのに関してはガチガチに固めているものの、中から破壊される事については実はあんまり考えていなかったりする。

 傭兵時代、こうした潜入系の依頼を何回か引き受けた経験のあるサイカは、アクロバティックな身のこなしも合わさって潜入から逃走までの流れを一通り把握している。

 その彼女からしてみれば、例えそこがソルイール帝国の軍事基地でもやる事は一緒なのである。


 こうしてソルイール帝国騎士団員に変装した二人は、堂々と正面から潜入する。

 しかし余り長く居すぎると当然命取りになってしまうので、ここは迅速に砲台の位置を確かめなければならない。

 そして見つけたら手早く破壊するのだ、と警報が鳴り響いている中で決意をするサイカ。


「エレデラムやアイクアルで見つけた砲台の大きさからすると、なかなか隠しておけるものじゃないですよ。それに周りに遮蔽物があったら砲撃出来ないでしょうから、きっと見つけやすい所にある筈です!」

「……なぁ、それってあれじゃねえのか?」

「え?」


 厳戒態勢が敷かれる中で、慌てている様子を演出する為に駆け足で基地の奥へと進んで来たサイカが見たものは、シリルの指の先にある黒光りしている大きな砲台であった。

 形、色、大きさ……どれをとってもエレデラム公国で見つけて破壊したあれと同じ砲台だった。


「あらっ、結構簡単に見つかったですね」

「そうだな。まぁ、こっちとしちゃあ好都合だったけどよ。じゃあさっそくさっき森を爆破した時に使った魔晶石を出してくれねえか?」

「分かりました。えーと……じゃあそっち側に五個置いてください。私はこっち側に五個置きますから」


 周りで騎士団員達が混乱している中で、当然砲台の警備もかなり手薄になっていた。

 それに騎士団員の格好をしていればまず怪しまれる事は無い。

 森の中で着替えを済ませ、こうして基地の中に潜入し、最後に爆破をして逃げる……その算段は本当に上手く行き、二人が基地を出る時には基地の中の砲台を中心に大爆発が起こったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ