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804.二度目の出会いと二つ目の砲台

「な……何を言い出しているのよレウス!?」

「そうだぞ。あくまでもこの人達はトリスティ陛下を連れて帰る為にこうして来たのだぞ?」


 そのついでにシルヴェン王国の砲台を破壊するならまだ分からないでも無いが、わざわざあの恐ろしいソルイール帝国に向かわせるのはまずいんじゃないかと説得しに掛かるアレットとエルザ。

 だが、レウスはシリルと会話をした中で彼が言っていた事について絡めて説明する。


「だって、今このシリルは自分からソルイール帝国に行こうかって言い出したんだぞ。それから戦力的な話を考えても、やはりシリルに一緒に行って貰った方が良いんじゃないかと思ってさ」

「どうしてそう思うの?」

「まず、今回の様にそれぞれの国にある砲台で待ち伏せをされている可能性が高いからだ。決してアレットが弱いとは俺は思っちゃいないが、シリルは前に傭兵をやっていたって何処かで話を聞いた事がある。それにその持っているバスタードの使い手だとしたら、かなりの攻撃力がある筈だからな」


 それから、とミネットの方を見てレウスはもう一つの理由を告げる。


「アレットは砲台の位置や形を知っている人物の一人だからな。やみくもに探すより、アレットに案内をして貰った方がスムーズに話が進むと思う」


 以前、あの坑道へと一緒に向かった事があるのもあってレウスは彼女を道案内に推薦する。

 正直に言えば、あの凶暴な皇帝の治めているソルイール帝国に乗り込むにあたってサイカとアレットのコンビだけでは不安でもある。

 あの連中は何を仕出かすか分からないので、もっとパワーのある人員が欲しかったのだが、結果的にこう分けるしか無かった。

 そこに丁度シリルとミネットが来てくれた上に、もし良かったら自分もソルイールに行くとシリルが言い出したので、せっかくそう言うならとここでメンバー交代を決めたレウス。

 敵の連絡が各地に行くのにそんなに時間は掛からないだろうと考えて、モタモタしていられないレウス達はそのメンバーの振り分けで早速行動を開始した。


「じょーちゃんと会うのはこれで二度目か?」

「ええ、そうですね」

「そうかそうか。しかし何だな、まさか俺とこんな形で行動を一緒にするなんて、何か運命的なものを感じないか?」

「全然」


 ソルイール帝国の砲台があると言われている場所の近くでワイバーンを降りたシリルの言い分を、バッサリと切り捨てるサイカ。

 一緒に行くのは別に構わないのだが、変なセリフをこう言われてしまうと正直に言って「気持ち悪い」の一言しか出て来ない。

 そんなサイカの様子を見て、シリルは狼の頭を空に向けてガッハッハと豪快に笑い飛ばした。


「まぁまぁ、俺は見ての通りの良い年のオヤジだぜ?」

「確か二十五歳とか言ってた様な気がしたんですけど」

「それを言っちゃお終いだぜ。……まぁそれはさておき、じょーちゃんの仲間の話によれば確かソルイール帝国の砲台ってのは、どうやらこっちにあるらしいな」


 二人がワイバーンに乗ってやって来たのは、ソルイール帝国の国内だけの地図で見た時にかなり北の方にある森のそばであった。

 この森から西に向かって進めば大きな湖があるので、何だかエレデラムでゼフィードを回収した湖を思い出してしまうサイカ。

 そして森の中と言う事で、砲台を破壊する時に待ち伏せとかに注意しなければならないのはこれまたエレデラムと同じ条件なのかも知れないが、ここでシリルから思い掛けない話が出る。


「そーいやーよぉ、この森の中って軍事基地があるんじゃなかったか?」

「へっ?」

「何だ、知らないのか? 確かじょーちゃんはこの国の宿屋で働いていたって言うから、てっきり旅行で来ていた外国人の俺よりもそっちの事情とかに詳しいんじゃないかって思ってたんだがな」

「ううん、それも全然知りませんよ。だって私はこっちの方に来た事って無かったですもん」

「ギルドの依頼でもか?」

「ええ。ギルドの依頼があってもこっち側には来ていなかったですよー。大体は西の方か山の中って感じでしたし、こっちにはこっちでギルドの縄張りみたいなものがあったし」


 過去、冒険者として世界中を巡って依頼をこなしていた内の一人であるサイカでさえも、当然世界の隅々までを巡った訳では無いのだ。

 なのでこちら側に来るのは実は初めての彼女に対し、シリルはその軍事基地について説明する。


「この森の中を切り開いて、そこに軍事基地を造っているんだよ。確かソルイール帝国の駐屯地の一つとしているみたいなんだけど、あんたの仲間がこの森の中にその砲台を見つけたって言うんだったら、もしかするとその軍事基地の中に砲台がある可能性が高いな」

「ええっ、そうなるとあのエレデラムで砲台を壊した時よりも更に破壊の難易度が高くなるって事ですか!?」

「その可能性は高いな。じょーちゃんがここに来る前に色々と話してくれた所によれば、どうやらあの龍の貴公子って呼ばれている皇帝バスティアンとか、その配下の騎士団員とかとは因縁があんだろ?」

「え、ええ……まぁ」

「だったらかなり気を引き締めていかなきゃならねえな。とりあえずあそこの看板に沿って進んでみようぜ」


 森の出入り口に建てられた木製の看板には、確かに『この先ソルイール帝国騎士団の駐屯地。部外者の立ち入りを禁ずる』と書いてあった。

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