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803.メンバーちょっと変えるわ

 しかし、そのせっかく振り分けたメンバー構成がすぐに変更されてしまう事になるとは、レウス達は思ってもみなかったのだ。

 それは森から脱出して、その建造されていた砲台を破壊したと言う報告を各国のトップ達にしようとした矢先の話である。


「あらっ、あれって誰かしら?」

「え?」


 森から戻って来た一行の先頭を歩いていたアニータが最初に気が付いた、この森の出入り口を離れる時には居なかった人物二人。

 それは狼獣人の男と、緑の髪の毛を持っている細身の女である。

 そしてその二人は、あろう事かシルヴェン王国の国王であるトリスティを強引に何処かに連れ去ろうとしているではないか!

 その様子を見たレウス達は、大声を上げてその男女を制止しに掛かる。


「おいっ、トリスティ陛下に何をしているんだ!!」

「そうよ、あなた達は誰なの!?」

「……あれっ、お前等!?」

「ん!?」


 クリスピンとドリスの大声に反応して振り向いたその二人だったが、その二人は何とレウス達と顔見知りだった人物だったのだ!


『話の途中で悪いんだが、私からちょっと大事な話がある』

『あっ村長、何ですか?』

『その……そちらのシルヴェン王国のトリスティ陛下の迎えの話なんだが、騎士団の人手がどうしても足りないって話になって、代わりに急遽食堂のコック長とその部下の女の人が来られるらしいんだ』

『ええっ、そうなんですか!?』

『ああ。だからそれまでは君達がここに一緒に居るしか無さそうなんだ。勿論、放浪していた陛下がこちらにいらっしゃると言う事なので大急ぎで来られるって話だったから、もうちょっと待っててくれよ』


 このボルドの報告を思い出したアレットが「あーっ!」と大声を上げてその人物を指差す。


「あっ、あなた達って確かシルヴェン王国の食堂で働いていたコックと給仕の人ぉ!?」

「おいアレット、指を差したら失礼だろうが」

「あっ、ごめん」


 エルザにたしなめられて左手を下ろすアレットだが、彼女の驚きは収まらない。

 そして今まさにトリスティを連れて行こうとしているその二人は、以前ルルトゼルの村長であるボルドから連絡を受けてはるばるここまでやって来たのだから、邪魔をされる覚えは無かった。


「おいおいちょっと待ってくれよ。俺達はルルトゼルの村から連絡が来たからここにこうして居るんだけどよ」

「そうよ。まさか陛下が行き倒れになっているなんて思ってもみなかったから最初はかなりビックリしたけど、とりあえず連れて帰るって約束をしちゃったんだからもう帰らないと」


 シルヴェン王国の王城の食堂で働いているコックのシリルと、給仕として勤務しているミネットがこうしてやって来た以上、国王であるトリスティとしても帰らなければならないのが現実である。

 しかしそれを見ていたレウスが急遽、砲台を破壊しに行くメンバーに変更を加える事を決意した。

 そしてそれと同時に、トリスティの口から頼んで欲しい事があるのも伝える。


「だったら、帰るついでに砲台を破壊する許可をトリスティ陛下から頂けませんか?」

「え?」

「シルヴェン王国の砲台なんですけど、魔術研究院だか何だかって所の人達が技術研究の為に残しておいてくれって言われてるんですよ」


 だからその砲台を破壊出来ないままここまで来てしまったのが今まで気掛かりだったので、ここで改めて砲台破壊の許可を下ろしてくれれば自分達も気兼ね無しに破壊しに向かえる。

 そう考えているレウス達に対して、トリスティはキョトンとした表情を見せた後に呆気無く話を通してくれる事を約束してくれた。


「あ、ああ……それなら別に構わないけど、そんな事を言われたのか?」

「ええ。ですから幾ら研究員達でも王国のトップである陛下の命令があれば、それには逆らえないだろうと思いまして」

「分かった。それならすぐに私も戻ろう。そして私が直々にその砲台を叩き潰す」


 冷静な口調なのは今までと変わらないのだが、その目にはギラギラとした熱い気持ちが溢れているトリスティ。

 それを見た上で、先程決めたメンバーの振り分けを一部変更する事にした。


「じゃあ騎士団の人達が砲台を破壊しに行くんじゃなくて、もう事後報告って形で先に破壊しに行って貰えませんか?」

「ど、どう言う話?」

「だから、俺がさっき振り分けたメンバー達に変更を加えるんだよ。それで何とかなるだろって話だよ」

「それ、俺達が陛下を連れて帰るついでの話か?」

「そうだよ」


 この流れでレウスはシリルとミネットにも砲台破壊の計画を説明したのだが、それを聞いたその二人が思い掛けない事を言い出した。


「えっ、ソルイールの方にもあんのかよ?」

「知っているのか?」

「いや、砲台があるのは初めて聞いたけど……ソルイールだったら俺は旅行で良く行くんだよ。このミネットも一緒だよ」

「そ……そうなの?」

「ああ、そうだよ。流石に村は通れないから、ワイバーンで大回りしているけど。だったら俺達がそっちに行って砲台を壊そうか?」

「うーん……」


 旅行の経験があるんだったらそれも良いかなと思ったのだが、それよりも砲台の事を知っているメンバーの誰かにシルヴェン王国に同行して貰った方が良いかもしれないと考えるレウス。

 許可が降りるかどうかを別にして、ここでメンバー構成を少し変更する。


「だったら砲台の事を知っているアレットがシルヴェン王国について行って、コックのあんたが代わりにソルイール帝国に向かってくれないか?」

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