802.効率的に壊す為の手段
ユフリーが吹っ飛んで行った先にある燃え盛る砲台に、更に攻撃を浴びせるレウス達。
しかも運の良い事に、ずっと前に見掛けた魔晶石型の小型爆弾が入った袋も発見したのだ。
おそらく劣勢になって砲台が破壊されそうになったらこれを使い、この森ごと全て爆破してしまおうとでも考えたかどうかまでは分からないのだが、これがレウス達にとってはかなりの武器になる事は間違いない。
ゼフィードをこの森の中に入れられない今、これで爆破してしまえば良いからだ。
「良し、爆弾は仕掛けたから爆発するぞ。離れろっ!!」
「うわあああああっ!!」
爆弾を仕掛けて一目散に退散するレウス達の後ろで、大きな爆発が巻き起こった。
それはユフリーをも飲み込み、彼女の部下を巻き添えにしながら砲台を木っ端微塵に爆散させて行く。
これでやっとの事で一つ目の砲台を破壊する事に成功したのだが、その一方でクリスピンから悪い知らせもあった。
「すまない、彼女の部下には何人か逃げられてしまった!」
「って事は……もしかしたら他の砲台がある場所に連絡が行くかも知れないわね。ただでさえさっきユフリーが私達がここに来るのを知っていて待ち伏せしてたとかって言ってたし」
「それに私達を待ち伏せしていたのが、例の魔術師ディルクの指示の上だって事も言っていましたわね」
サイカとティーナの話を聞き、そうなると迅速な行動が求められるだろうとラニサヴが考える。
「だったら逃げた奴等を追いかけるのは俺達に任せておけ。どの道このエレデラム公国の中に放置しておいたら、盗賊になって略奪行為とかされそうだから早めに討伐しておかなきゃな。だからそっちは残りの砲台をすぐに破壊しに行ってくれ」
「分かった」
アンフェレイアとトリスティの証言からすると、砲台はまだ世界各地に残っている。
それを一つずつ壊して行ったとしたら、これから先の段階で連絡が回ってその世界各地の砲台から強力なレーザーが発射されてもおかしくない。
そこで各国に向かうメンバーをそれぞれ選抜して、効率良くその各国の砲台を一気に潰して回る事にしたレウス。
「幸いにもあのユフリー達が持っていた魔晶石爆弾がここにこうして袋の中に沢山あるから、これを使ってそれぞれ砲台を爆破して回るんだ」
「砲台の数はこの書き込みを見る限りでは全部で十。その内の一つを今このエレデラムで壊したから、残りは九つだ」
しかし、そのクリスピンの話に待ったを掛けたのがアニータである。
「待って。前にアイクアルのレイベルク山脈の頂上にあった砲台を壊した筈だから、残りの数は八じゃないかしら?」
「あっ、そう言えばお主の言う通りだな」
「でもメンバーを分けるのは良いとして、問題は誰が何処に向かうかよね。ゼフィードだってあの一つしか無いんだし」
「それは……そうだな、各国に連絡を取ってみるのはどうだ? 今まで各国を回って来たんだから、そこの地元の人物達と連絡を取ってサポートして貰うんだよ」
アニータの心配に対するソランジュの提案によって、今までの旅路で築いて来た関係を使ってここも効率良く砲台を探し、そして破壊するプランで進める事にした一行。
今までの旅路を考えてみると、自分達の手で見つけたのはあの裏切り者であるコルネールとアーシアからの情報もあって、既に破壊してある筈のアイクアルのレイベルク山脈の頂上で見つけた砲台。
そして破壊しようとしたものの、研究の為に残しておいて欲しいと言われてストップが掛かってしまったシルヴェン王国の砲台。
この二つに関してもまだカシュラーゼが諦めていない可能性があるので、メンバーの振り分けをして向かった方が良いだろう。
ただし必ずしも協力的では無い国もあり、それがソルイール帝国である。
「ソルイールだけはカシュラーゼと繋がりがあるから、協力するどころか妨害されてしまうだろうな」
「そうだな……だったらどうするかだよ」
「じゃあルルトゼルの村長達に頼んでみるって言うのはどうだ?」
「ええー? あの村って今かなり忙しそうじゃない。カシュラーゼの砲撃で壊滅しかかっていたんだし」
「ああ……それもそうか……」
だとしたらそっちは妨害の手が回る前に、自分達で何とかするしか無さそうだ。
そう考えたレウスは、なるべくその国に縁の深い人物を中心としたメンバーで各国に向かわせた上で、その国で出会った人物達に協力を仰ぐ方法で行こうと話を纏めた。
「良し、それじゃあとりあえずまだ入国出来ないカシュラーゼ以外の各国の顔見知り達に連絡を入れた上で協力を仰ごう。ソルイールは俺達だけで何とかしよう」
「そうだな。砲台はカシュラーゼにもあるみたいだが、貴様の言う通り入れない状態になっているみたいだし」
その結果、ソルイール帝国に向かうのがそこで出会ったサイカとサポートのアレット。
隣のイーディクトにはそこが地元のソランジュとサポートでエルザ。
エスヴァリークの砲台を壊しに行くのはそこで出会ったドリスと武術大会で戦ったセバクター。
隣のヴァーンイレス王国にはやっぱりそこで出会ったアニータと、国王として頑張っているサィードと彼を支えるイレイン。
シルヴェン王国に帰ったトリスティと臣下の騎士団員達でそっちの砲台も壊す。
それからアイクアルの調査に向かうのが地元の人間であるティーナと、現地で合流する予定の騎士団長フェイハン。
このエレデラムの北にあるルリスウェン公国に向かうのは勿論クリスピンと、神である存在のエンヴィルーク。
最後に自分達が旅立ったリーフォセリアに向かうのがレウスとなった。