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798.ちょっと待ってくれ。幾ら俺でもぶっつけ本番じゃ無理だからトレーニングさせてくれ。

 と言う訳でレウス達は村長とガレディを始めとする村人達、それからアンフェレイアにまた別れを告げてエレデラム公国へと戻った。

 そして、そこでエレデラム公国の大公ラグリスとルリスウェン公国の大公ジークから聞かされたのは、金属の塊であるゼフィードに関しての新たな事実だったのだ。


「そ、空が飛べる?」

「そうなんだ。このゼフィードってのを色々と調べてみた結果、魔力を大量に消費するものの空を飛んで移動出来る事が分かったんだ」


 何と、この重い金属の塊が空中に浮遊出来るらしい。

 しかもそれだけに留まらず、空中から思いっ切り降下して蹴り技も繰り出せるらしいので、これを利用すれば砲台の破壊なんて簡単に出来てしまうだろうとの事だった。


「となると、このゼフィードを使って砲台の破壊をしに世界各地を回るしか無いな」

『ああ。しかし一度魔力を充填しても、それで空中を飛べる時間がどれだけなのか分かんねー事には不安だぜ。おい、それは既に解析されたのか?」

「い、いいえ……それはまだです」


 だったら前に話していた、自分が相手になってこのゼフィードとやらの実力を試す時がついに来たらしい。

 レウスとしても、一度もトレーニングをせずにこの中に乗り込んで動かすのはかなり不安なので、そのエンヴィルークが提案する手合わせには同意である。

 早速それが決まり、ゼフィードは広くて邪魔が入りそうに無いエレデラム公国の中の平原へとワイバーン達とエンヴィルークの飛行によって輸送され始めた。


「まさか神のドラゴンと、こんな形でこんな風に手合わせをする事になるなんてね……」

『俺だって自分から提案したんだけど、今になってビックリだぜ。でもやるんだったらそれこそ、ルルトゼルでやったみたいなティーナとそこのシルヴェン王国の国王みたいに本気でやる、なんて事は無いから安心してくれや』

「えっ、そうなのか?」


 まさか手加減をする、と言うニュアンスのセリフを言われると思っていなかったレウスは、操縦席のスピーカー越しに聞こえるエンヴィルークに対して首を傾げる。

 すると、目の前の画面の中に映っている赤いドラゴンからまた声が聞こえて来た。


『そりゃそーだろ。俺様が本気を出したらそれだってぶっ壊せるに決まってるだろーが。だって俺は神なんだぞ?』

「凄い説得力があるな」

『だろ? それにお前はそれに乗るのも動かすのもまだ全然慣れていねえんだし、心の中では練習させてくれって思ってんだろ?』

「ああ、凄く思ってる」

『だからこうしてここまで連れて来たんだろ。そのクソ重てえゼフィードってのを俺様とお前等のワイバーンが運んでよぉ』


 確かにレウスの心の中では「ちょっと待ってくれ。幾ら俺でもぶっつけ本番じゃ無理だからトレーニングさせてくれ」との本音がグルグルと回っていた。

 その本音をぶつける事が出来た今、まずは手合わせの前に操作感覚に慣れる事から始めなければいけない。

 とりあえずまずはスムーズにパンチやキックが出せる様になる事と、飛ぶ為のトレーニングをしなければ満足に動かせないだろう。

 不完全な状態で頼るのは自分の足を引っ張るだけだし、エンヴィルークとの手合わせもすぐにやられてしまうのは目に見えているからだ。

 そしてそのトレーニングが始まった傍らでは、三国のトップ達が会談をしていた。


「まさか、この様な形でお会い出来るとは思いませんでした」

「俺達だってそうですよ。俺とこのラグリス大公とはそれぞれ科学と工学繋がりで色々と情報交換をする仲なんだが、シルヴェン王国って実はあんまり知らない国なんですよね」

「おい、それは失礼だぞ」


 脇腹を肘で小突き、ラグリスがジークを注意する。

 それを見たトリスティが、銀に近い灰色の髪の毛を揺らしながらゆっくりと首を横に振った。


「ふふ……まぁ、確かに私のシルヴェン王国は小さい国だ。しかし私だって一国の国王なのでね。シルヴェンの民を守るんだったら何だってするつもりだ。それにまさか、あのレウスと言う青年が……かの有名な五百年前の勇者アークトゥルスの生まれ変わりだとは思いませんでしたよ」

「それは私達だって同じですよ。現にこうして砲台を壊しに行くって話を聞かされたのだから、湖の中から見つけ出したばかりのあのゼフィードとやらを持って行って貰うのだし」

「確かにそれはそうだ。それにそちらは確か王都が砲撃を受けたと聞いているし……そうなると砲台を壊して回りたいと言う気持ちは分かる」


 だから今回、あのレウス達と一緒に向かう事にしたんだろう? とゼフィードを必死にコントロールしようとしているレウスの方に目を向けるラグリス。

 そんな彼が見たものは、徐々にではあるがこの短時間でコントロールのコツを掴み始めていたレウスだった。

 意外な才能なのか、それとも五百年前からこの時代に転生した上で全てを受け入れると決断した上での状況適応能力なのか、はたまたただの偶然か。

 いずれにしても、エンヴィルークや自分のパーティーメンバー達が見守っている中でパンチを繰り出してみたりキックをしてみたり、少し浮遊してみたりと色々と試行錯誤を繰り返すレウス。

 あれを使いこなす事が出来るのであれば、間違い無く神であるエンヴィルークと良い勝負が出来るんじゃないか……と三人の君主達は思っていた。

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