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796.国王の実力

 家の外に出て、レウスを始めとするパーティーメンバー達と決闘の話を聞きつけて来た村人でティーナとトリスティを取り囲み、即席の正方形のリングを作る。

 これによってリングの外に吹っ飛ばされそうになっても押し戻せるので、ティーナもトリスティもそこは了承する。

 そして肝心のトリスティの武器は、今までに戦った相手とは違って二つの物を同時に使うスタイルだったのだ。


「さて……それでは始めようか。貴女の武器はそのロングソードかな?」

「ええ。貴方はそのバスタードソード……いえ、グレートファルシオンって言った方が良いですわね。それを使うのですね」

「ああ。普段はな」

「普段?」

「そう。ただこれ以上は喋らない。手の内を全て明かしたら面白くないし、実戦で相手と対峙したと思って掛かって来るんだ。それから私も女性が相手だと思って手加減はしない。手合わせだからこそ本気で行く。それは忘れないで欲しい」

「分かりました。それでは私も本気で行かせて貰いますわよ」


 だが、ここでトリスティは妙な事を願い出た。


「それと始める前に、魔術防壁をこの周りを囲い込んでいる人達にまんべんなく掛けてくれ。それもなるべく強力なものをだ」

「え……どうしてだ?」

「万が一の事があっては困るだろう。ここは獣人の村とは言え、その万が一が無いとも言い切れないだろうからな。もし私とティーナの戦いに巻き込まれて怪我を負って、それを私達のせいにされても嫌だしな」

「分かった。それじゃちょっと待ってくれ」


 そうだ。確かに彼の言う通りこの状況ではギャラリー達に被害が出ないとも限らない。

 審判は言い出しっぺのエンヴィルークが務める事になり、魔術防壁も掛け終えたレウス達が準備完了の合図をそのエンヴィルークに送る。


『良し、それじゃ二人とも準備は良いな?』

「ええ、良いですわ」

「私もだ」

『なら行くぞ。それでは……始めっ!!』


 エンヴィルークの合図とともに二人は動き出す。

 とは言ってもティーナもトリスティも最初は様子を見ながら相手の出方を窺う。やはり実力が分からない相手にむやみに突っ込んで行くのは避けたいのであろう。

 元々ティーナの方はイケイケのタイプである妹のドリスと違い、慎重に相手の様子を窺ってから攻めるタイプ。

 それ故に、自分と同じタイプの相手に対してはなかなかやり難いのだ。


(どうやら積極的に攻めるタイプじゃないらしいけど、こっちだって様子を窺わないと怖いわね……)


 痺れを切らして先に動き出した方がペースを握れるのかも知れないし、その動き出した側のペースを崩して自分のペースに持ち込んだ方が勝つのかも知れない。

 それは戦っているこの二人にしか分からないのだが、その動き出したのはトリスティの方だった。

 まずは様子見なのか、バスタードソードの一種とも言うべきグレートファルシオンを緩慢に上段から振り下ろす。

 その攻撃を見切ったティーナは素早く横に回避し、ロングソードを突き出すがトリスティの後ろ回し蹴りで上手く弾かれてしまった。

 そして一旦距離を取り、再び様子見に入るトリスティ。それを見てティーナは自分が試されたのだと分かった。


(今の弾かれた段階で私は体勢を崩していた。そこにあの武器を突き出せば一発で決着がついていた。でも、あの人はそれをしなかった……)


 どうして引いたのか。それは恐らくこちらの実力を見極める為だろう。

 しかし、ここでカッとなって相手に突っ込んで行けばそれはトリスティの思うつぼなので、深呼吸をしたティーナは再びロングソードを構えてトリスティとジリジリ差を詰める。

 そしてまた突っ込んで来たトリスティの方は、今度こそ手加減はしないと言う勢いで先程とは比べ物にならないスピードの攻撃を繰り出し始める。

 大きなグレートファルシオンをかなりのスピードで振るえるその身体能力と、妙に正確なその太刀筋。自分で「私は強いぞ」と言っていただけあってそれなりのテクニックは持ち合わせている様なのだが、だからと言ってティーナも自分から手合わせの相手を申し込んだだけあって負けたくは無かった。


(強い……けど、やっぱり武器が大きな分の隙が見え始めているわ!!)


 だったらその隙を突くべく、ちょっとずつ型が崩れて来たその攻撃を見切ってティーナは足払いを掛ける。

 横薙ぎを回避された上に、その体勢を利用して足を払い飛ばされたトリスティ……だが、彼の顔には一瞬の驚きが浮かんだ後に妙な笑みがこぼれたのだ。

 それと同時にグルリと背中を使って身体を回転させつつ、着込んでいる薄緑色のコートの内側から取り出した「それ」をティーナのロングソードに向けた。


「っ……!?」

「終わりだ」


 パン、パンと乾いた音が二発響き渡る。

 その音がした瞬間には既に自分のロングソードが手から吹っ飛ばされた上に、右膝を撃たれて激痛が走っていた事に、ワンテンポ遅れてティーナは気が付いたのだ。


「ぐう……っ!?」

「さて、まだやるか? 武器を取りに行ってまだ立てるのであれば、私はまだまだやれるのだがな」

『いいや、その怪我と状況じゃもう無理だ。よって勝者ハシルヴェン王国の国王、トリスティ・グレンフォードだ!!』


 エンヴィルークが高らかにそう宣言し、もう一つの武器であるハンドガンをティーナに突き付けたトリスティが砲台破壊に同行する事になったのだった。

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