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794.復讐心

 レウスを筆頭にして家の外に出てみると、そこにはコルネールとアーシアを地面に組み伏せている、ガレディを始めとした村の住人達が居た。


「えっ……どうしてあんた達がここに?」

「村長から話を聞いていたんだよ。この二人がカシュラーゼの回しもんじゃないかと思っているから、何か怪しい動きをしたらすぐに捕まえてくれって。ってか、お前が村長に言ったんだろ?」

「ああ……確かにここにやって来た時にこっそり言っておいたけど、まさかそんな手回しをしてくれているとは思わなかった」

「獣人達の結束力を舐めて貰っちゃ困るぜ。そもそもここは元々人間が入っちゃならねえ所だったんだからよ。だからお前達がまたここにやって来たって聞いた時から、村長の指示云々じゃなくて独自にそれとなく監視してたんだよ」

「お、おう……ありがとよ」


 口では礼を言うものの、まさかまだまだ監視されていたなんて正直に言うとかなり怖い。

 ぶっちゃけた話、今の状況でもまだまだ人間に対しての警戒心は解かれていない上に、そもそもこの村がカシュラーゼからの砲撃を受けているのでその気持ちも分からないでは無い。

 そして、自分達の情報が回るのがやけに速いなと思うのもこの村の団結力があったからなのだろうが、やっぱり何だか怖いなと思ってしまうのは何故だろうとレウスが自問自答する。

 その永久に答えが出そうに無い自問自答を繰り返しているレウスの横で、煙の効果が少しずつ抜けて来たアレットが、コルネールとアーシアをどうするかをガレディと相談し始めた。


「とりあえず、この人達もカシュラーゼの手先だって分かった訳だしこの村の中で拷問に掛けるしか無いと思うわ」

「それは俺も同感だな。前回の事もあるし、お前達はその王様とやらをシルヴェン王国まで送り届けなきゃならねえんだろ?」

「いや……それはそうなんだけどちょっとその前にやらなければならない事がまだあるのよね」


 まだトリスティとの話は終わっていない。

 まさかのここで邪魔が入った訳だったが、とにかくこれで話が再開出来るのでレウス達はこの南の家から北の家へと場所を変えて、トリスティからの話を再び聞き始めた。

 それと同時に村長に頼んで、シルヴェン王国の騎士団に迎えの人員をよこす様に連絡して貰っておく。


「さってと……迎えに来て貰う人員も呼んだ事だし、話の続きをしましょうか。とりあえず、陛下は砲台の事について何かお調べになられていたんですか?」

「ああ、それは私の方で色々と調べていた。砲撃を受けたって聞いてから、私はその砲撃元がカシュラーゼの開発した砲台であると言うのも突き止めた。だが……それを破壊しようにも放浪をしていて身分を明かす訳にいかなかった私は、人員が足りなかった」

「まあ、それは確かにそうですよね」

「でもカシュラーゼの砲台を破壊するにしても、それだけじゃ砲撃を止める事が出来ないかも知れないって分かったんだ」

「えっ、そうなんですか?」


 アレットがもっと聞きたがっているのを見て、トリスティは一つ頷いた後に更に話を続ける。


「そうだ。エレデラムの大砲を調べて分かったのだが、どうやら魔力エネルギーは大砲にそのまま充填するのではなく、カシュラーゼのエネルギー源を使っているらしい」

「もしかして……それってそのエネルギー源とやらを壊さなければ幾らでもそこから発射出来るって事ですよね。砲台さえあれば何発でも発射してあの惨状を作り出せるって事ですか!?」


 何て恐ろしい……と口を右手で覆うティーナ。

 それじゃあ幾ら砲台を破壊しようとも、それを組み立て直して魔力エネルギー充填をすれば良い。

 だが本体を壊しておけば、また組み立てなければならない手間が掛かると言うのもしっかり調べているトリスティ。


「幾らエネルギー源があっても、肝心の撃てる設備が無ければ発射出来ない。壊してしまえばその砲台の材料を集めるのに時間が掛かるし、あれだけの大きなエネルギーを砲台に溜めるのも時間が掛かる」


 なのでやっぱり壊しに行く、と意気込むトリスティ。

 しかし彼の立場を考えると、その破壊活動に一緒について行かせる訳にはいかないレウス達。


「ダメです、危険過ぎます陛下。貴方はシルヴェン王国の現在の国王陛下なんですよ?」

「そうですよ。ただでさえこの村の手前で行き倒れになっていて、それでこうやって休んでいる分さっさと自国に帰ってあげてください」


 王都のシロッコが砲撃を受けて壊滅していると知ってしまった以上、レウス達は彼が自分達の砲台破壊活動について来る事を良しとしない。

 彼には国王として、壊滅しているシロッコを始めとしたシルヴェン王国をリードしなければならないのだから。

 しかし、復讐心に駆られている状態のトリスティにとってはその忠告にも耳を貸せないらしい。


「いいや、私は砲台を全て破壊するまで貴方達に付き合う。それが終わったらちゃんと国に帰る」

「あのですねー、だから自分の立場を貴方は……」

「分かっている。分かっているからこそこうやって言っているんだ。もし私があの国に居る間にまた砲撃を受けて、そして死んでしまったらリードする人物が居なくなってしまうだろう?」

「そりゃそうですけど、もう迎えの人を頼んでしまった訳ですし……」


 呆れた表情になりながら、それでもやっぱり一緒には無理ですと断ろうとしたレウス。

 そんな押し問答を続けていた一行の元に、思い掛けない連絡が来たのはその時だった。

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