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788.恵みの雨と呪いの雨

 唐突にそう言い出したギルベルトに、他の全員の視線が集まる。


「見当がついているのか?」

「ええ、ついていますよ陛下。俺の考えている今回の事件の犯人はやはりカシュラーゼの手先の人物だと思います。そして恐らく、それは陛下と面識がある奴でしょう」

「僕と?」

「そうです。さっき陛下が言っていた、何だか聞き覚えのある通話相手の女。ここから推理すれば大体の犯人が絞り込めます。聞き覚えがあると言う事は、陛下がその声を聞いた事がある……つまり何処かでその声の主と会話をした事があるって結論になりませんか?」

「なるほどね。でも、僕にそんな女の人の知り合いって居たかなあ?」


 城のメイド達がカシュラーゼ側につくとは思えないし、そもそもあの声は日常的に聞き覚えのあるものでは無かったと、ここに来る前の声を必死に思い出しているドゥドゥカス。


「となると側近やメイドの声と言う線は薄くなりますね。後、陛下が聞き覚えのある声の女に心当たりは?」

「カシュラーゼ側につく可能性があり、なおかつ僕と会話をした覚えのある……あっ!!」


 ようやくそこで、ドゥドゥカスはこの条件に当てはまる声の主に辿り着いた。

 そうだ、あの女だ。

 それと同時に彼はゆっくりと、レウスの方にその神妙な表情を見せた。


「……な、何だよ?」

「アークトゥルス……君には酷な話かも知れないが、良く聞いてくれるか?」

「えっ、あ、はい」

「僕に連絡をして来たあの声の主……君の母上の声だよ!」


 レウスがかなりショックを受けるのではないかと思ったものの、これだけは事実なのでどうしても言わない訳にはいかないんだ、と意を決してそう告白したドゥドゥカス。

 しかし、彼のその決意に対してレウスの表情はかなり涼しいものだった。


「あっ、そうですか……」

「ん!?」

「いや、俺はそれを聞いても驚かないよ。だって俺の両親が裏切ってカシュラーゼ側についたってのは、既にエレデラム公国で知っていますし」

「そうなのか!?」


 レウスを驚かせるつもりでは無かったにしろ、この一連の流れで逆にドゥドゥカスが驚く流れになってしまった。

 その後、レウスからエレデラム公国の麻薬関係の話でドゥドゥカスから連絡があり、それで冤罪を掛けられていた話や自分の両親とマウデル騎士学院の学院長エドガーが一緒にカシュラーゼ側に寝返ったのを、この目でしっかりと目撃したのも伝えるレウス。

 その事に関しても、そう言えばギルベルトから聞いた覚えがある様な無い樣な……と自分の記憶を辿るドゥドゥカス。

 しかし、今こうして聞いたのだから事実としては一緒だろうと強引に自分を納得させる。

 その横では、ギルベルトがこの北の漁村に来てからずっと抱いていた疑問をいよいよエンヴィルークにぶつける。


「ところで……ずーっと気になってたんだが、あんたは一体何者なんだ?」

『あっ、俺様の事はまだ言ってなかったっけ?』

「ああ、全然知らない。と言うかここに来てからあんたとは初対面だったからな」


 それに、この男が自分の目の前でオレンジっぽい赤いドラゴンに変身するのをしっかりと見てしまったギルベルトとしては、せっかく陛下も居る場なのでちゃんと自己紹介をして貰わなければ納得出来なかった。

 対するエンヴィルークの方も、自分がこうしてレウスと一緒にドゥドゥカスを助けに行ったのは事実なので、ここで隠し通す事は出来なさそうだと考えて自分の正体をキチンと話す事にした。



 ◇



「くそっ、向こうにとっては恵みの雨でありこっちにとっては呪いの雨になっちまった!!」

「流石に自然現象にはこっちも勝てないわね……」


 せっかくドゥドゥカスを呼び出して、北の海で突き落として殺すまでは上手く行ったと思ったのに。

 その後にリーフォセリアに潜入させているスパイからの報告によれば、何と誰かに助け出されてしまったらしいと言うあり得ない情報が飛び込んで来た。

 せっかくあの嵐の中を、最後のドラゴンを飛ばしてまでやったのにまさか誰かに助け出されてしまうなんて思ってもみなかった。


「これじゃあ、あの男がすぐにリーフォセリアに戻って来てしまうぞ!!」

「まあまあ、落ち着いて。とりあえず国王を城から引き離す事に成功したんだしさ」

「しかし、こうなるとスピーディーに作戦を決行しなければな」


 今回の事件を計画したのはディルク。

 リーフォセリアの国王を誘き出す声を担当したのは、そのリーフォセリアを裏切ったファラリア。

 そしてディルクの弟子のラスラットをリーフォセリアにスパイとして向かわせる様に提案したのは、彼の夫であるゴーシュである。

 最後にリーフォセリアのマウデル騎士学院を裏切り、そこと繋がりが深い王城に総攻撃を仕掛けようとしているのはエドガーだ。

 しかし、そこにはかなり揉めていた過去があったのだ。


「ってかよぉ〜、ゴーシュはどうしてそこまで総攻撃にこだわるんだよ。カルヴィスも大砲使えば一発で廃墟だろ?」


 面倒臭いから全部ぶっ壊しちまえば良いだろう、と考えるエドガー。

 だが、ゴーシュにはゴーシュなりの考えがあるらしい。

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